シベリウス2番@バービカン

「ロンドン留学中にしたいことリスト」の中にひとつあったのが、生オケでシベリウスを聴く、でした。演目としてあるんですよね、イギリスではこのシーズンに、シベリウスは必ず。というわけで、ロンドン交響楽団のシベリウス2番を、ロンドンフィルのお膝元バービカンセンターで楽しんできました。

やはりクラシック音楽は、ライブの醍醐味が段違いですね。今回のシベ2に関していえば、たとえばコントラバスからチェロに引き継がれるピアニッシモの細かいピチカートとか、「ビジュアルだから楽しめる箇所」がとても多い曲ではないでしょうか。

初・生ロンドンフィルの特徴を、私なりに、あくまでも音楽の一愛好家として感じたことをいえば、まず、音楽がお上品、洗練されているなあ、ということ。今日の演目は、前衛的な(個人的にはあまり印象に残らなかった)曲と、ベートーベンのピアノ協奏曲5番が先にあったのですが、言葉を選ばずにいえば、えらそうでインテリぶったベートーベン、あるいはロックのように攻撃的なベートーベンでなく、まるでコッツウォルズの素敵な村の午後に、のんびりとした気分で聴くベートーベンだなあと思いました。

あと、この楽団の音!褒めているんですよ、最初に断っておきますが。
まるでレコードを聴いているようなレトロな音といいますか、モノクロ(なわけないのですが)な気分になる音、ホッとする音で、とても心地がよいのでした。

休憩を挟んで、いよいよ待望のシベ2です。
もちろん第1楽章も第2楽章も、いや、この曲は冒頭から最後の一音まで素晴らしいのですが、しかし実のところ、この曲に私が求める最大のポイントは、下世話にいえば、第3楽章で味わえるカタルシスに尽きます。上手く乗れば落涙するほどのカタルシスなので、精神的のみならず身体的にも浄化ができますね。

なので、この曲にエラそうな指揮は全く似合いません。権威主義的な欠片が音楽に現れた途端、この曲は魅力を失ってしまうでしょう。

今回のロンドンフィルのシベ2、最高でした!イギリスで、ロンドンフィルで、シベリウスを聴けて本当に良かった。

この曲を聴きながら自分の状況を振り返ってみると、交響曲を書く、あるいは指揮をする、でもそうかもですが、この作業は博論を書くことに似ているな、と思いました。ここの箇所ではどの楽器をどの程度鳴らすのか、どこでどのような旋律を描くのか。

論文は科学であるべきなのに何をいう、論文は文学ではないぞと叱られそうな気もしますが、科学は、どの分野でも、広い意味でアート、「技」だと私は思っています。あるいは逆でもいけます。音楽は、広い意味で元来科学ですから。とにかく、このコンサートのおかげで博論へのモチベーションもさらに上がったので、それはよしとしましょう。

最後に観客の皆さんの様子も触れておきます。やはりノリが良いというか、楽しいことに対する反応が素直ににぎやかというか。拍手やブラボーだけではありませんよ、口笛指笛?もすごいです。そして今回も(前回のメサイア鑑賞時同様)、お隣のおじさんが気さくな方で、やたらと話しかけてくださったので退屈することはありませんでした。最後など、Did you enjoy it?「楽しめた?」とまで聞かれて。知らない人なのに。返しとしてはもちろん!でしたが、加えて「でもアンコールはないのね」とも。それは残念だったけど、しかしシベ2だけでも大満足なのでした。


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