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一週間でエントリーシートを完成させてください!

 少し前なら「推薦入試」、今なら「総合型選抜」ですが、こちらに必要なのは「志望理由書」。
 書式は大学によって異なります。今まで一番参ったのは、「B4一枚・書式自由」というもの。ちなみにこの大学、教員が書く「推薦書」も「B4一枚・書式自由」でした。

 さて、エントリーシート・志望理由書の作成につきあっていると、同僚から必ずいただく苦情があります。それは、「志望理由書にそんなに時間をかけないでほしい(他の勉強に支障が出る)」というもの。
 過去にもっともしんどかったのは、「どうせそんなもの、大人が代筆しているもので、大学もそのことがわかっているから合否への影響はないでしょ。そんなものに時間をかけるのは無駄だから、さっさと終わらせてください」というものでした。

 もちろん、生徒さんが、「明確な志望動機・志望理由を持っている」「大学での学習計画が出来ている」「大学での専攻分野について知識や実践経験がある」ならば、1週間でまとめることは可能です。
 しかし、多くの場合、そうではないわけで…。
 というわけで、こちらとしては、手を変え品を変え、さまざまな方法や言葉を駆使して、本人の中でまだ眠っている志望理由・学ぶ意味を言語化することになります。
 
 田舎の高校に勤務していた時、「本人は都会的な服装をしたつもり」でも、そのことが本人の良さを消してしまっているケースがありました。東京の高校生が全員髪を染めているわけでも、ピアスをしているわけでもないのですよ。
 で、この現象が、「志望理由書」にも表れることがあります。「志望理由書ってこういうものですよね」という謎の思い込みがあり、そのとおりに書いてくるのです。そのことが本人の良さ、オリジナリティ、創造性を消してしまうのですね。で、生徒さんにそのことに気づいてもらい、「無価値と思い込んでいたことに、実は個性や価値がある」という思考を導くまでに、すでに一週間経過しています。

 田舎の高校にいたときは、生徒さんの足元に「志望動機・学びの価値・専攻分野の学習計画」がありました。都会の高校では、「海外・貧困などの大きな社会問題」をテーマとする生徒さんが多かったです。
 後者のような社会問題をテーマとする場合、「正義感を振り回す、悪を断罪する」に終始するケースも少なくないです。要するに「現場での実践」がないのですね。となると、「実践からの学び」や「解決策とその検証」などが必要になります。となると、授業のない「夏休み」にその時間をとるしかありません。
 そういう段取りも整えていると、「そんなことに時間をかけないで欲しい」「一週間で終わらせて、受験科目の準備に専念させてほしい」という苦情がきます。

 私は「残念な教員」でしたから、一週間で志望理由書を書かせることはできませんでした。
 ただ、総合学習・探究学習の中で、「自分が求めていること」「学びの価値」などと出会えるようなプログラムを立ててからは、少し楽になりました。その代わり、「総合学習・探究学習ってめんどくさい」という新たな苦情が発生したということは、あえて言うまい、語るまいでございます。

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