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不思議な紅茶時間~#外伝ver1~ 


はじめて空を美しいと思えたのは中学校の卒業日。
それまでは、ただ普通にあるもの当然のごとくあるもの、だからあの日は人生で特別な日になりました…良い意味で。
今でも付き合いのある友人が、下校時にいつも空を見上げ空について延々と語っていました。
「あのあたりの淡いピンクの雲がグラデーションしていて、夕焼け空もキレイだよね」
とか。当時のわたしには彼女の言葉が…正直理解できませんでした。
それどころか、心の中で、
『空なんていつも同じじゃん』
と、友人には申し訳ないけど、皮肉めいたことを思ってしまいました。
何故、そんな投げやりな考えに行き着いてしまったというと、あの頃は心に余裕が無かった。学校という集団生活の中で息苦しく、受験だ、将来の進路を考え始めるときが来た…など、目の前の壁を乗り越えていくだけで精一杯でした。
感性豊かな友人は相変わらず、空について語ったり、自然の恩恵を褒めたり…眩しい存在でした。
ですが、ある時、

空が怖い

と、思ってしまいました。
なにか、とてつもなく大きく広がる空に押し潰されてしまうのでは…と。だから、極力上を見ないように、下を向いて歩く癖ができていました。
空は怖い
空は嫌い
空はなくていい
今思えば、病んでいたのかもしれません。

でも、卒業式当日、文頭でも書きましたが、恐る恐る見上げた空に、思わず美しいと思ったのです。それは、学校という場所に縛りつけられ、その苦しみからの解放に心に余裕が出来たのだと思いました。
泣きたいくらい美しい空でした。母親が赤ん坊を優しく包んでくれるような、安心感のある大きくて広くて…。
その時、ようやく空って美しいな、と純粋に感じることが出来ました。
自然をただ当たり前のように存在しているのではなく、奇跡と呼んでいいほどの出来事なんだな…と、今は思います。

2023.11
ふありの書斎


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