見出し画像

OM式型取り複製覚え書き その1型取り複製のおおまかな流れ

始めに
 2002年冬に初めてワンフェスにディラー参加して、それ以来20年以上たちました。
#型取り複製覚え書き というタグを、ツイッターに投稿して、自分なりの複製ノウハウをつぶやくようになって10年近くにもなりました。この機会に、自分の型取り複製のテクニックと考え方など、体系的に書いてみたいと思います。
 これから書く複製のノウハウは、あくまで私個人の経験による知見です。私以上にすごい知見を持つ方はゴロゴロ居るかと思いますが、こうしてまとめることで、型取り初心者のお役に立てたらと思ってます。
 なおここではいわゆる常圧注型メインのお話になるかと思います。加圧注型・遠心注型・真空注型といったワンランク上の技法もありますが、あまり触れない方針です。まずは基本である常圧注型をマスターするのが大事です。


常圧注型の粘土埋め一例

型取り複製のおおまかな流れ
 型取り複製の工程は以下の通りです。なおワンフェスなどでのガレージキット販売前提のお話になります。

1.シリコンとキャストの必要量見積もり

パーツ配置検討の図


 原型完成したら、カッティングマットや定規などと一緒にパーツ並べて、型の配置を検討、必要なシリコン量を見積もります。場合によっては写真撮って、印刷して湯口を書き込みます。
 なおパーツの大小や抜きにくいパーツなどで、型を分ける事をお勧めします。なお、シリコン型の必要量は、型の面積×(パーツの厚み+2)×1.2です。
 キャストの必要量は、原型の重さが目安になります。原型の重さ×(販売数+サンプル・塗装見本+抜き損じ)シリコンやキャストもある程度、失敗などを見込んで多めに発注することをお勧めします。

2.粘土埋め

粘土埋め完了の図


 配置案に従って、パーツを粘土埋めして枠をはめます。
 いかに丁寧に粘土埋めするかが、型の善し悪しを左右します。ダボをきちんと設けておくのも大事です。

3.シリコン流し(1回目)

シリコン流し始めの図

 粘土埋め終わったら、まずは一回目のシリコン流し。シリコンを必要量計って、硬化剤投入、よく混ぜてからシリコン流します。硬化剤は、夏場は規定の半分程度で大丈夫。 大事なのは一気に流さないこと。一気に流すと原型周りに気泡ができてしまい、複製品に余計な丸いモールドが追加されてしまいます。 最初は糸状にシリコン垂らして、原型周りのシリコンにエアブラシ吹いて、気泡を取り除きます。少しずつ投入量を増やして、パーツがある程度シリコンに埋まったら、一気に注いでも大丈夫。パーツの高さプラス1cm程度までシリコン流します。 場合によっては、2回に分けてシリコン混ぜるのも一つの手。 一つの型にシリコン流して固まる間に、次の型の粘土埋め済ませると時間短縮に繋がるのでお勧めです。

4.粘土剥がしと離型剤塗り

粘土剥がして離型剤塗り終わったところ


 シリコン硬化後、ひっくり返して粘土を剥がします。小さいパーツが粘土に持って行かれないように注意。なお、枠は外さないこと。
 残った粘土を綺麗に掃除して、はみ出ているシリコンをカットしてから、シリコン用の離型剤塗ります。離型剤の塗り忘れに注意(超重要)!

5.シリコン流し(2回目)

二回目のシリコン流し中


 離型剤乾いたら、二回目のシリコン流します。流し方は1回目と同じです。 

6.湯口カット

湯靴を彫っているところ


 二回目のシリコンが固まったら、型を割ってパーツを取り出してから、湯口をデザインナイフなどで掘っていきます。湯口の掘り忘れに注意。

7.テストショット

キャストを注ぎ終わったところ

 シリコン型にキャスト用離型剤塗って、輪ゴムなどで締めてから、キャストのA液B液計量して混ぜて、素早く型に流します。 
 キャストの量は一回目は原型の重さを目安にします。過不足あれば、二回目以降修正していきます。必要量が確定したら、メモ取って記録するのを忘れずに。 
 A液B液は容積ではなく、電子秤で重量比1:1を計ること。容積比だと比重が異なるので1:1にならず、硬化不良のもとです。 
 硬化後、型を開けてパーツをチェックします。気泡入っている部分には、湯口を追加。流れが悪いパーツは、湯口やメインのランナーを太くして対処。二回目・三回目と問題なくなるまでテストショットを繰り返します。
 何度やっても上手く流れないパーツは、それだけ型を作り直すのが手っ取り早いです。

8.量産

量産中


 問題なくなったら、量産に移行します。後はひたすら離型剤吹いて型を輪ゴムで閉めて、レジン計って混ぜて注型、硬化後パーツを取り出す、このサイクルの繰り返しです。 量産中も気泡が目立つのであれば、適宜湯口を追加します。 あと量産でやらかすのが、A液×A液もしくはB液×B液といった誤キャスト。特にB液は一発で型が逝くので要注意です。白キャストだと誤キャストしやすいので、慣れないのであれば、アイボリー使うのも手です。

 一連の型取り複製工程、一つのキットを10個程度量産するのに、どれだけ時間がかかるかは、パーツ構成や型の数など一概には言えませんが、十日から二週間程度という実感です。さらにイベント販売の場合は、完成品製作に少なくともプラス一週間程度かかるはずです。つまりイベント三週間ぐらいが、原型完成させて複製始めるデッドラインになります。
 特に初めてのイベント参加の場合は、常に時間に余裕を持っておくのが大事です。慣れない作業で徹夜も危険、致命的なミスを侵す可能性があります。
 ちなみに型取り複製の致命的なミスは、
1.シリコンの硬化剤入れ忘れ
2.2回目シリコン流す時の離型剤塗り忘れ
3.B液B液の誤キャスト
この三つです。
 集中力落ちた状態でやらかしやすいミスですので気をつけましょう。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?