【日記】萩尾望都SF原画展と「萩尾望都先生×星野之宣先生」対談イベントに行って来ました



アーツ千代田3311で東京再巡礼の萩尾望都SF原画展が開催。それに伴う萩尾望都先生と星野之宣先生のトークイベント、幸運なことに300名の抽選に当選しました。応募初日から応募が定員を上回る倍率だったとのことで、当選はとてもラッキーでした。


アーツ千代田の外庭には薔薇の花が7月の現在も咲いており、ポーの一族ファンのテンションが上がります。
全国を巡礼しているSF原画展ですが、私は2016年に吉祥寺での開催時ぶりでした。今回の会場であるアーツ千代田は内装が数年前よりも綺麗に。ちょっと順路が分かりにくく見落としそうになりましたが、広々としており、会場内が明るかったのも嬉しいポイントで、月刊フラワーズのイベントもある土日でしたが見やすかったです。(前回の吉祥寺が暗かった気がするのは絵の劣化を気にしていた可能性もありますね。)併設のカフェも空いてたら入りたいオシャレな雰囲気でした。

入場すると左手に贈り物のお花が置かれていて、くらもちふさこ先生からのお花もありました。

今回の展示で気づいたのは、文庫本版「11人いる!」の表紙のカラーは元々の原画はもう少しパステル調の色合いであったということ。色調を変えてこの色にしていたんですねー!元の色合いも爽やかで好きです。

11人いる! (1) (小学館文庫 はA 1)
https://amzn.asia/d/fSp8qwF

他にもアナログながら、大胆にグラデーションがかった色味のシートを上から貼って、絵全体の色を乗算していたり…。
すごい工夫です。今のデジタルを覚えた先生なら、きっとデジタル処理される事でしょう。デジタルを知ってしまった者にはこんな殆ど書き終わった所に色を全体的に貼り戻れなくなる作業は怖くて出来ません…。先生の生の絵、本当にアナログもカラーも生き生きされていて、繊細ながらもエネルギッシュです。

会場終盤の撮影中コーナー。

グッズに御札があって、中々他で見たこと無かったので笑ってしまいました。

購入したグッズ

そしてトークショーの行われる神田明神ホールに向かいます。


裏参道がこんな感じになっててワクワクしました。神田明神に行くのも初めてででした。建物や建造物も綺麗〜〜。萩尾先生に連れて来て頂いた感あります。この会場を選ばれた方のセンス素晴らしい。

その敷地内のおみやげ売り場の二階がホールになっています。

萩尾先生は髪を茶色く染めらててて、少し髪の毛が短くなっていました。ピンクのスカーフを首元に巻いて、腕に白い刺繍のようなのが入ったジージャンを羽織っていました。

お恥ずかしながら、私は星野先生の作品を読んだことがありませんでした。とてもリアルな絵を描かれる有名な漫画家さんなのですね。北海道にお住いながら、今日のイベントのために東京に来てくださったそうです。前日に展示をご覧になったとの事でした。

司会者の方は秋田などのトークイベントにも行かれている、お二人をとてもよくご存知な方だったようで、前もっての聞き取り、レジュメの作成がお二人が「こんなものまで」といった反応をされるほどでお見事でした。

星野先生が萩尾作品に出会ったきっかけは、デビュー前にSF誌でのポーの一族の紹介からポーを読んだ事がきっかけだったそう。そして絶大な影響を受けていたことに近年気づかれたそうで、お礼を言われていました。
その影響とは、すごく小さなコマの波の描き方であったり、ヒトラーには黒背景に縦長のコマが似合う、といったものや、馬車、でした。
(おそらく細かなレポは、その手のオタクの方が書いてくださると思うのでここでは私の受けた印象のみにさせて頂きます)
(先生方のお言葉は私の記憶の範囲内になります。参考までにご覧なってください)

お互いリスペクトを感じるトークで、萩尾先生は過去女子美術大学などで行われた公開講座とはまたちょっと違った、オタク感すら感じられ、星野先生への興味も深々といった感じでした。
星野先生の作品に対して(「ヤマタイカ」だったかな?)、「東大寺の大仏を燃やして溶かしちゃって…良く思いつきましたね〜。トリップとかありませんでしたか?東大寺見て思ったんですか?」という質問がありました。トリップとかもなかったそうですが、「諸星大二郎だったら溶けて動かすかな、と思って、やっちゃえ、と」と仰ってました。(その後も諸星先生のお名前は何度も上がってました)

星野先生、北海道の自宅に書庫があり、たくさんの資料をご覧になっているそう。書庫の画像を見て、萩尾先生「まあ、背表紙が見える」と(笑)。
星野先生も、萩尾先生も、アイデアが降ってくるということはない。まずは資料を読んで、組み合わせること、広い範囲のものを読んで熟成させるのを待つのだと仰ってました。「歳をとると忘れてくるから、ここにいるみなさんは早めに読んだほうがいいですよ。やだ、こんな悲しい話しちゃいけない」

萩尾先生:「SFは、科学の発展が進みいろんなことがわかってきたお陰で逆に描きづらくなってる、膨大な科学的知識が必要。」
(確かに近年でもアニメ化したSF作品に対し専門家の方がネット上でがこれは違う、など言われたことがあったと思います。)
萩尾先生:「ファンタジーの方がすっ飛べるから楽です」
星野先生:星新一のSFみたいなのほほん系のSFとか(これから出るといいんじゃないか)日本はこれから貧困国になって行くのでは。そしたらアトムに出てきた犬の形したパトカーを作ってほしい。
(楽しそうですね。)

Q。コロナウイルス SF世界が現実に。今後の創作に影響は?
萩尾先生:ウイルスも生き物なんですよね。定期的に大流行が起こっているようなので、(ウイルスの流行が起こるのは仕方がない)。みんな経済も停滞して、どうするのかな?創作に対しては、今すぐ影響を受けるということはないと思います。
星野先生:漫画(の仕事)の方は影響受けないですからね。元々リモート。
司会者さん:最初から在宅勤務やってますみたいな。

萩尾先生のデジタルを取り入れた作画について驚いた事がありました。それは、
デジタルでペン入れ→それを印刷→背景をそこに手書き&トーン貼り
をしているという点です。

Q。デジタルでの創作
萩尾先生:腕が疲れない。体力的にありがたいです。間違えたらレイヤーを消せば消えるんですよ。画用紙は取り返しがつかないですからね。腕とかちょっと長くなったなーと思っても切り貼りができるんです。技術上の効率がとても良い。
(画像を見ながら)薔薇の花をいくつか描くと組み合わせができます。細かいのも拡大すれば見えます。
星野先生:(萩尾先生の原画展をご覧になったことに関して)色の切り口がとてもシャープですよね。小さい絵をこれだけ拡大しても綺麗。
萩尾先生:拡大する方の技術もあるんじゃ。
星野先生:デジタルは大きくしちゃうと絵がダメになる。最初から大きく描いているものはいいけど。
萩尾先生:私の現在の作画は主線はパソコンの中の世界です。一回プリントしてからトーンを張っています。部分的な背景を手作業しているもので…。
星野先生:(びっくり)

それでデジタルでペン入れ→それを印刷→背景をそこに手書き&トーン貼り
という作業になっているとのこと。
(((誰か先生にデジタル教えてあげてーーー!!))
デジアシさんもおられるようですが…。
一度プリントすると、線が細すぎると印刷に出ない為、現在線を太くせざるを得ないとの事でした。(一度プリントしたら線の綺麗さが落ちてしまうのでは?)また、アナログの時とは違い、線の太さを上手く筆圧で変えられないというような事もおっしゃってました。

萩尾先生:10で設定すると、線の太さが全部10になっちゃう」

先生の言う10の範囲の幅が分かりませんが、確かに「ポーの一族 秘密の花園」では線が太いかな?と思うコマもありました。

上の表紙はフルデジタルで、下の表紙はフルアナログと思われます。リンク先のページから、内容の試し読みもできます。


でも、デジタルのほうがいくら描いても手が疲れないもは素晴らしい利点です。数年前の漫勉で、腱鞘炎対策のテーピング(だったかな?)されていたので、手に負担が掛からないのはファンとしては安心です。
しかしペンの筆圧設定が上手くいけば、というのと背景の問題が解消されれば、もう少しアナログに近い作画になるのでは?と思いました。
どうにか…デジタル漫画の作画のプロの方々…萩尾先生にお力添え下さい…。星野先生もこのことに関しては驚かれていたので、何か案を萩尾先生に教えてくださることを祈っています。

また他にも、大英博物館について萩尾先生は、浮世絵の保存状態が非常に良く、日本では見ないような色褪せなさだったこと、多くの方が絵の修繕や保存のために働かれていることに感心しておられました。

萩尾先生:「帰ったらネームしないと」
お忙しい中感謝です。
そして「なんとかアランを復活させようと思います。」と言っておられました!
21世紀になってアランの復活が目撃できそうとは…!!
先生方のお元気と、我々読者に作品をお恵みいただけることを祈ってます。

上は編集者の方のツイートです。




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