【読書】マイノリティーリポートを読んで

今回、フィリップ・K・ディック著作の「マイノリティーリポート」を読んでみた。その感想をつらつらとコンパクトに書き記しておきたい。


1.概要

テクノロジーも大きく発展し、犯罪を予測し潜在的犯罪者を確保することで犯罪を、とりわけ殺人につながる事件を予防できる革新的なシステムを持つ世界に刑事として取り締まるアンダートン長官。しかし、予測結果の中でアンダートン本人が殺人を犯すだろうと判定されてしまった。善良な人間であるはずの彼が追い込まれ、それに抗い真実を突き止めるSFサスペンス小説。.

2.感想

今作はアニメ「Psycho-Pass」のモチーフにもなっている、フィリップ・K・ディック著作の小説。またスティーブンスピルバーグ監督により映画化もされている一つ。

犯罪を事前に予測し、犯罪者となりうるもの、潜在的犯罪者を確保していく画期的システムではあるが、矛盾も強く感じる。犯罪を犯す前の犯罪者は犯罪者なのか?しかしこの世界では予測に間違いがないことを前提に描かれているので、この問いは愚問なのだろうな、とも感じた。

主人公アンダートンは組織の政治的問題に巻き込まれたのだと思い、とにかく最初は逃げまくり、そして殺す予定となるカプランに会いに行く。彼は元英雄的軍人で引退して数十年たってもなおカリスマ性は健在という様子。

知りもしない相手をどうして殺そうというのか?実際に会ってみてカプランの思惑を聞いて殺すわけがないと結論付けるも、逃亡の最中妻と再会する。
「もし、予測が間違いでも体制の利益を優先すべきだ」と主張する彼女と対立するも結局はカプランによるクーデターを防ぐには道は一つしかなく、予測通りカプランを殺すことになってしまう。

結果的には一人の命と、システムが崩壊した結果の犠牲(お手盛りの権力を握られること)を天秤にかけて前者をとったわけだが、最後に明かされる予測結果が面白かった。

立場上予測される情報に目を通せるアンダートンは、ある日自分が見ず知らずの人間に手をかけると結果が出る。しかし何かの陰謀だと真実を明らかにするため自分が手にかけるだろう本人と対面し思惑を知る。この時点で予想を当ててしまうことになる。そして次に、自分が犯すであろう犯罪を既に認知してしまっているので、カプランを前に思惑を知っても手にかけることはなかった。ここで本来の予測から道がずれることになる。修正された予測では自分の達はを優先させることを手段に選んだが、結局は本当の目論見を理解したアンダートンはカプランに手をかける選択をする、という修正された予測を無効にするものだった。

本来この予測結果が誰にも目にれない物であれば、予測が修正されることはないが、予測結果が見えてしまったことで未来を変えることができたが、アンダートンの場合は立場上権力に翻弄され、本来の予測通りにならざるを得なかった。
あくまで予測内容が絶対間違いがないという前提で、未来予知して潜在的犯罪者を成敗していくのだから、それはそれはシステムとして享受できる利益はいかほどばかりか。

しかし、目まぐるしいほどに事件に巻き込まれるアンダートンの物語は非常に面白かった。ずっと脳裏にトム・クルーズのイメージと森川さんの声が浮かんでいて映画も見てみたいと感じた。

3.まとめ

潜在的犯罪者は犯罪者なのか?犯罪を犯した時点で犯罪者。予測の範囲が潜在的。しかし、潜在的な状態で捕まえ豚箱行きと決めてしまうのあまりに横暴な世界。人権があるからこそ非現実的であると安心できるけど、お金でどうとでもなる世界で格差が広がり、薄汚れた権力達が統治する世界になってしまえば簡単に憲法を覆し、そして国民を守るはずの法律もボロボロになり、そんな横暴がまかり通ってしまうのかもしれないと考えると他人ごとではないなとも感じる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?