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june 30

気道閉塞圧(P0.1)とは、気道を0.1秒間閉塞し、その間に低下 する気道内圧を測定したものである。気道閉塞した状態では、 気道内圧と胸腔内圧の変化量が一致することを利用している。 近年はPuritan Bennett™をはじめ様々な人工呼吸器に、P0.1 を測定する機能が備わっている(図3)。赤矢印のボタンを押し た後,「スタート」ボタンを押せばP0.1の測定が始まる。この 図では、P0.1が-1.5 cmH2Oであることが分かる。 P0.1が小さすぎる場合は、患者の吸気努力が弱いことを意味し、 P0.1が大きすぎる場合は、患者の吸気努力が強すぎることを 意味する。Teliasらは、様々な人工呼吸器を使用して、P0.1と 呼吸ドライブ・吸気努力との相関を検証した17)。呼吸ドライブ の指標には、横隔膜電位(electrical activity of the diaphragm: EAdi)・患者の吸気筋圧(Pmus)、吸気努力には Pressure-time product(PTP:食道内圧の陰圧へのふれを 時間積分した面積)を使用した。その結果,P0.1とEAdi、Pmus、 PTPは、いずれも強い相関を示すことが分かった。さらに、 P0.1のカットオフ値上限(絶対値表示)を3.5 ~ 4.0 cmH2O、 下限を1.1 cmH2Oとした際、過剰な吸気努力および弱すぎる 吸気努力を高精度に検出できた。ただし、Puritan Bennett™ のようにP0.1を測定する際、実際に気道閉塞させる機種では このカットオフ値が成り立つが、機種によっては実際には気道閉 塞させないものがあるため注意を要する。これらの機種では、 吸気トリガー相の気道内圧低下からP0.1を推測して表示してい るため、吸気努力を過小評価しやすい。このため、P0.1のカット オフ値上限を2.0 cmH2Oにするなどの配慮が必要である17)。


ECMO離脱におけるP0.1の活用法 イギリスは,ECMOの集約化が整備されている国の1つである。 国土全体を5つに分割し、各地域に1施設ずつECMOセンター が配備されている。ECMOセンター以外でECMOを実施し ても診療報酬請求できないため、国家としておのずと集約化 が進む仕組みになっている。ボリス・ジョンソン英首相が新型 コロナウイルス感染症で入院したことでも知られるセント・ トーマス病院は、ロンドン大学キングス・カレッジの附属病院 であり、5つのECMOセンターの1つでもある。1施設で年 間200-300症例のECMOをこなす巨大ECMOセンターで ある。 この病院では,医師ではなくECMOスペシャリストと呼ばれる 看護師がECMO離脱テストを実施している。このため、図4 のような明確なプロトコルを作成して運用している18)。日本 ではECMOを離脱する際、ある程度ECMO flowを落とした 段階でSweepガスを0 L/分とし、呼吸(酸素化・呼吸仕事量)・ 循環(頻脈)・意識(不安・興奮)などに異常がないことを確認 して離脱していることが多い。しかし、このECMO Deoxy Challenge TestだけでECMO離脱の可否を判断するのは、 不十分である可能性も指摘されている19)。 セント・トーマス病院では、ECMO Deoxy Challenge Testの 前段階として酸素化能・換気能・呼吸仕事量を日々評価した 上で、ECMO離脱テストを開始している。この呼吸仕事量の 評価に使用されているのが、P0.1である。具体的には、P0.1 <5 cmH2Oであることを確認した上でECMO離脱テストを 開始し、途中でP0.1 >10 cmH2Oとなる状況が発生すれば、 ECMO離脱テストを中止としている。このように、重症呼吸 不全における呼吸仕事量の評価は、ますます重要性を増して きていると言える



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