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VRが終末期がん患者の最期の希望を叶える

一日でもいいから自宅に帰りたい。ふるさとをもう一度訪れたい。といった、終末期のがん患者の願いをかなえるのに、兵庫県芦屋市の市立芦屋病院緩和ケア病棟で、仮想現実(VR)の装置が活用されています。
患者は病室にいながら外出を疑似体験でき、気分の落ち込みが改善するなどの効果が表れているといいます。

中皮腫を患い、緩和ケア病棟で過ごす同県尼崎市の男性(66)は5月末~6月初旬、ベッド上でVRヘッドセットを装着した。「自宅を見たい」という男性の願いを受け、妻(59)と三女(26)が、360度カメラで撮影したリビングや寝室、ヤマモモやモクレンが育つ庭、愛車などの映像が流れた。妻と三女は「本人目線で、歩いているように撮影した。パパがいつも座っていたソファに座り、好きなゴルフ番組にチャンネルを合わせた。13年間乗った車の運転席では、運転気分を味わえるよう工夫した」と話す。男性は「まさか見られると思ってなかった」と感想を漏らし、特に愛車の場面の再生を繰り返した。
ふるさとや結婚式をした思い出の地、旅行先など患者の望みに応じ、関西や九州など各地で映像を撮影。衛星写真による「グーグルアース」も活用した。飛騨高山でバスの運転手をしていた男性は「運行ルートをたどりたい」と要望した。自宅の仏壇の前に座りたいという人もいた。

そんな手があったか!私完全に遅れてる。。と、この記事を読んで思いました。

そう思ったら、アメリカでは、医療VRは一つの大きな商圏となっていて、ホスピスでのVRの導入も、かなり進んでいるんですね。

ホスピスケアでのVRの使い方は、「生きているうちにやっておきたいことリスト」の希望を満たしたり、精神的な会話を交わしたりすることだけではない。2019年2月、AT&Tと、米国でホスピス事業を手がけるVITAS Healthcareは、不安への対処や疼痛管理にVRを使う方法の研究を始めた。オピオイドの服用を減らし、患者の意識をはっきり保つことが目的だ。AT&Tでヘルスケア産業ソリューション担当ゼネラルマネージャーを務めるRod Cruz氏は、「アヘン系などの鎮静剤を使って苦痛を和らげようとするより」、VRを使った疼痛管理の方が望ましいのではないか、と語っている。

がん末期には、がんによる痛みや、身の置き所のない苦痛を伴います。だんだんと身の回りのことができなくなってきます。痛みや苦痛を最小限に抑え、身体的、精神的苦痛を和らげ、死を迎えるその時までその人らしく最期まで生活することをチームで支えるために、病院の緩和ケア、ホスピスがあります。

私はホスピスで働いた経験はありませんんが、一般病棟でのがん末期患者様から、「最期にもう一度自宅に帰りたかった。」「愛犬にもう一度でいいから会いたかった」「都会に出て頑張ってきた人生だったけど、もう一度故郷の景色が見たかった」などの言葉を仰られるのを聞いてきました。ご友人など会いたい方には病院に面会に来ていただけますが、行きたかった場所には、全身の状態から、病院を出ることができず、叶わない方が少なくありません。あの時外出させてあげられていたら。と顔が思い浮かぶ患者様もいます。

ご家族の方が、お写真を持って来られたり。ということはありますが、VRというのは、患者様自身があたかもそこへ行った、体験したような気持ちになれるのでしょう。辛い状況の患者様を眼の前にして、ご家族の方は、「何もしてあげることができません」と仰られることがあります。VRの映像を撮影した。 VRで患者様とこんな時間を共有できた。というのは、残されるご家族にとっても、こんなことをしてあげられた。という、想いに繋がるのではないかなと思います。

しかも、上記CNETの記事によると、 VRを使って、オピオイド (麻薬性鎮静薬のことです)の服用を減らすと!!!!痛みや苦痛を抑えるために、麻薬を適切量使っていくことは、緩和ケアではとても重要なことです。一方で、ボーッとしたり、寝ているような時間が増え、ご家族と会話をすることがなかなかできなくなってしまうこともあるため、寝ている時間が増えるような麻薬の使用を開始する前には、ご家族に、「明日の何時何分から使用開始する予定です。その前にご面会にいらしてぜひご本人とゆっくりお話してください。」と医師より説明をすることもあります。

VRを使うと、子供が注射をするときの痛みや不安の軽減につながっている。という研究結果もあるくらいですので、麻薬の服用を減らせることも実現可能かもしれません!!そうなったら、本当にすごいです。

VRというと、ゲームやエンタテイメントのイメージが強いですが、医療では、手術のシュミレーションや、手術ロボットとの併用に使われたり、リハビリや医師育成教育などの分野で、すでに活躍しています。

終末期患者様の夢を叶え、苦痛を取り除くなんて。ほんの10年前の医療現場には考えられなかった、ドラえもんのポケットからひみつ道具を出してもらった気分です。

#CNET

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