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U18VRChatterの主張

『VRChat』そのものに没入して2年と少しが経った。現在齢17。定時制普通科の高校生として生活している。VRChatには主に夜にログインすることが多い。さて、それから遡ること2年。当時中学3年生。この歳になるとあまり言われなくなったが始めたての頃は年齢を聞かれ話すと度々その話になった。

それは、VRChatの未成年に対する意見についてである。

言葉としていくつか挙げると
「え、子供がVRCやって大丈夫なの?(笑)」
「えー、なんかその歳でやるのは心配だなー」
と、いったところだ。当時、その言葉の意味がよくわからなかったし、その言葉を言う必要性はあるのかと無性に苛立ちを感じていた。今思えば、慥かにVRChatでは成人したユーザーが多い(ここでは大人とする)。大人が多い故に未成年者のプレイヤーに及ぶ影響を危惧するというのは理解に難くない。私も、自分より年下にVRChat内で出会うと時々そんなことを考える。事実、『ソーシャルVRライフスタイル調査2023』のデータからも読み取れる様にVRChatに同年代のプレイヤーは少ないと感じる。分布図を見た際にあまりに値が小さいのが顕著だったので、常日頃思っている我ながら改めて驚いた。
さて、先述した通り私もVRCを始めてから童ながらも年は重ねてきた。人並みに年相応の、そして大人以上に未成年によるVRChatの知見は持ち合わせている。よって、今回は

これからVRChat及びソーシャルVRをプレイし生活する未成年へ想定される影響と当事者の体験談、そしてそこから今後どういった方針が業界で求められるか。

について『ソーシャルVRライフスタイル調査2023』のデータを交えながら未成年最後の卒業論文としてまとめていきたい。尚、プロットから書くのが苦手なもので文章構成については全く論文には適していないことについてはご容赦いただきたい。
では、本題に入っていく。

影響と問題点について

想定される影響は様々だ。ここではカルチャー面とハードウェアの面で別けて考える。

まずカルチャーの面。主に不健全な行為や概念への関心、興味を持つことに関して思うところがあるのだろう。例として…
1.性的、暴力的な見た目のアバター
2.性的行為を目的としたり、ホラーやグロ表現を含むワールド
3.バーチャルセックス(所謂Just)
4.差別的、公の場に用いるのは不適切な単語を含んだ言葉の横行(バーチャル"ホモ"等)
5.その他、年齢に対して閲覧や体験するには相応しくないユーザー、コンテンツ
といったところだろうか。

まず1と2についてだが先日、ユーザーがアップロードするコンテンツに自主的に制限を設定し、該当する制限を第三者が有効にしている場合にはフィルタリングがかかる『Contents Gating』が実装されたことでプラットフォームを提供する側から若いユーザーの安全を守ろうとする動きがあった。しかし、先述した通り制限はあくまで自主的にされるものであり、個人の感性や意思によって本来設定されるべきものがされない可能性がある。故にこの機能の本質は、ユーザーが見たくないものを見ないようにする為の機能という印象を受ける。まだ未成年を守るための機能として完璧とは言えない。

3についてだが、そもそもVRChatをはじめとしたソーシャルVRを始める時にVR空間で擬似的なセックスをすることを想定したことがあるだろうか。バーチャルセックスという単語自体もセックスとはつくが結局は自慰行為である。これは言葉と行為が結びついていないため深くバーチャルセックスについて知見がない限りは、どのようにするのかという疑問も生まれかねない。Justと呼ばれる隠語のようなものについても同様に、単語から性的な意味が連想されることはまずないだろう。これらの理由から未成年が主体的に考えられるとするのは現実的ではない。そしてその概念を教えるまたは誘う様な人がいると想定されるため、当人を取り巻く環境に左右されると考えている。
したがってこの問題は未成年を主として考えるのは門違いであり、どちらかというと教える、誘う側の人間にスポットライトがあたるべきではないかと思う。冒頭で触れた私自身が過去に言われたことについて紐付けるなら、当人たちへの注意喚起を行う方が適切であると考える。もちろん不適切な言い方はどういった目的であっても不快感を与えることがあることは忘れないでほしい。

4に関しては、無知であるなら教えるべきだと考えている。というのも、例えとしてここ最近よく聞く"バーチャルホモ"という言葉に含まれる"ホモ"という言葉だが、これは差別的な意味として捉えられることがある。そのため、その言葉を聞いて不快に思う人がいるのは日を見るより明らかではないだろうか。それを知らずに普及させ常用させる様なことになってしまうとソーシャルVRのみならず物理現実でもトラブルを生みかねない。そして、なにより私が怪訝としているのは『ソーシャルVRライフスタイル調査2023』によると、日本ではソーシャルVRをプレイする81%が成人と回答している。そのためこれらの言葉の普及には大人が大いに関与していると考えられるのだが、適切な知識と用法を知らないというのは如何なものか。有名な動画(歌)のフレーズでもあるためその場、界隈のテンションや雰囲気で発してしまうのもある意味でのTPOのわきまえ方として理解できなくはないが、ある程度発する言葉や単語の意味は認知するべきであると私は思う。

ハードウェアの面。これらは身体への影響と考える。
未成年という括りでは少々大きすぎるため13歳未満とするが…
・目や脳が未発達故、発達に支障をきたす可能性がある。また、負担がかかる
・HMDの比較的過度な重さや大きさ等(Quest1,2等は欧米の成人向けに設計されているそう)
これくらいだろう。だが、私は対象年齢さえクリアしていればHMDを利用することの健康上の影響なんてたかが知れていると思っている。例えとして、発光している液晶をスマホよりも近い位置に固定してそのまま寝るという行為(V睡)をすれば、ブルーライト自体の影響についてはまだ不確かな部分が多いとは思うが大人子供関係なく支障は出るだろう。
総じて言えることは、ハードウェアの面から未成年(特に13歳以上)がソーシャルVRを利用することに対して懐疑的、否定的な意見を持つことは特殊な事情がない限りは相応しくないと私は考える。
以下余談。これはVRのみならず何にでも言えることではあるが、健康上の被害が出るほどプレイするのは推奨されない。デジタル化が進んできている現代では尚更目の健康は考えるべきである。
『ソーシャルVRライフスタイル調査2023』によると1回に3時間以上6時間未満プレイすると解答した割合は5割である。この時間以外にも仕事や学校、私生活でもブルーライトを見ている事を加味して考えて欲しい。
読者の皆様は1日にどれくらいの時間ブルーライトを見ているだろうか。
なにもVRを起きている時だけでなく寝ている時もつける事で何か社会的に賞賛されるわけでもない。自身の健康と引き換えにフレンドと何らかの方法で交流が得られる事が客観的な視点から費用対効果が高いわけでもない。私もリスクとリターンを度外視することはよくあるが、それにしても自分の体力を切り詰めてまですることであるのかは、いささか疑問ではある。

では、こういった問題点基影響の中で私が当事者としてどう感じていたかを以下にまとめる。

当事者として感じたこと

まず、かなり親密な距離になる大人が増えた。
思春期を過ごす年頃の子供とほぼ毎日一緒に遊ぶ様な仲の大人というのはかなり関係性として珍しいだろう。
物理現実で話す度に思うが、VRChatではコミュニケーションやフレンドシップがより密になる様に感じる。事実『ソーシャルVRライフスタイル調査2023』によると、「ソーシャルVRでコミュニケーションをする時、相手との距離感は物理現実と比べてどうですか?」という質問に対して67%が近くなり、その内の36%が物理現実よりもかなり近くなると解答している。私もVRChat内での物理的な距離感はかなり近く、会話のトピックも気の置けない友人でないとしない様な会話をすることが物理現実よりも多い。

だがそんな人ばかりではなく、すごく上から目線に物事を言われることがある。
はっきり言ってものすごく不快だ。
「未成年がVRChatやるなよ」「ガキがやるのは心配」と投げかけられた事があるが、何を根拠にしているのか不明であり、全く納得がいかない。
しかし、確実な証拠はないといえどかつて未成年者のプレイヤーが犯罪行為に及んだ疑惑があるのも事実だ。精神的に未発達、学徒としての本分等を考えるとそう仰られるのも理解ができる。しかしそれにしても飛躍しすぎた論理であり、とても正当性があるとは言えない。

そして、全国に同年代の友達ができた。
ソーシャルVRをプレイしていなかったら絶対に出会わなかった様な友人ができた。
序盤で述べた様に私は定時制高校の普通科の生徒なのだが、工業や情報系、通信制高校や高専に通っていたり等、自分自身が知らない知識や景色を知っている友人ができた。
コンピュータサイエンスを得意としたり、3Dモデリングができたり、自身がトリリンガルであったり、余暇を見た事ない景色を求めて県外に赴くことに充てたりと、こういった事を会話の中で知るとすごく面白い。なによりその人自身の境遇も加味されて、人間性にとても惹かれる。

以上が影響と当事者としての感想である。では、これらから界隈ではどういった動きが必要になるのか考察していく。

ソーシャルVRの教育的に有用な利用方法、そして今後未成年者を取り巻く環境をどう構築していくべきか

まずは排他的な扱いをしないことが何より大事である。
慥かに一般常識や社会的なルールへの理解が乏しい者をソーシャルVRのみならずコミュニテイへ迎入れる事は億劫になるであろう。私自身も運営、所属しているコミュニティに明記こそしていないもののVRChatの対象年齢以下である13歳以下の招待はしない方針で運営している。
しかし、現時点でソーシャルVR、特に私が最も利用するVRChatで利用年齢を公的に制限できるのは対象年齢くらいである。つまり、未成年者(特に13歳以上)を無差別に排除する理由にはならない。何事においても未成年者という括りで捉えずに個人として評価するべきである。これはある意味では年齢において対等な立場と評価を得られると私は考えている。時々Public InstanceやXで目にするが子供だから、未成年だからといって毛嫌いするのは理由としてあまりに残念でならない。

そして、適切なコミュニティや空間、ある程度の秩序の構築も重要である。
既存のものであれば『高校生集会』や『ぶいきゃん』が該当する。
数少ない同年代のプレイヤーと交流ができるのは普段知り得なかった人間との交流となり新たな発見にもなるだろう。また、『ぶいきゃん』ではVRメタバースを活用した不登校学生向けプログラムを実施しており、その中で居場所支援を行なったり防犯教室がされたりしている。
そして、先日メタバースを活用しアバターの姿で高校生活を送れる通信制高校が発表された。こちらはまだ正式リリースがされていない『プラネタ』と呼ばれる新たなソーシャルVRプラットフォームであり、ユーザーによりどういった文化が形成されるのかは不明だが高等教育に活用できるようなプラットフォームであるなら比較的健全な場所として期待ができる。そして、学生という限られた貴重な時間の内の高校生活をソーシャルVRで過ごすのであれば、例えば「アバターの容姿を踏まえてリアルで接することについて」や「これからメタバースを活用してどの様なことができるか」など、その特色と空間を考慮した指導がされるべきだと考えている。
また、そういった環境にない様な人にも配慮が必要だろう。個人からできることとしては、解説ワールドを公開したり集会やイベントを開いたりといったところだろうか。

また、ソーシャルVRを利用する人たちの意識の向上も必要になってくる。
なにも、性的行為に及ぶこと自体を控えるような考えを持って欲しいわけではない。ただ、friendやfriends+といった比較的秘匿性の低い場所や、雑談や相談中、その他相応しくないシチュエーション、そして様々な立場、考えの人がいる中で風紀紊乱行為に及ぶようなことに関しては、その行いを客観的に考えてほしい。
仮に年端もいかない若人がいたとして見せられる様な事だろうか。自身の子供に見せられる事だろうか。
また、Ask meやDo not disturb等入場に制限をかけられる状態にする事を忘れたといった状況に関しては仕方がない。その場でも事後でも最低限言葉を交わせば、特段咎めるようなことではないのではないか。

最後に

今日、VRそのものの値段が下がってきていたり、様々な企業がソーシャルVRを活用したりメタバースと称したプラットフォームを展開したり、学生向けの事業が展開しているため未成年者がソーシャルVRを利用しやすい環境になりつつある。

ここまで主語を大きくして話してきたが、あくまで"(未成年者である)私が考えること、体験したことということ"を忘れないでいただきたい。
故にこれをご覧になられた皆様が様々な意見を持たれることは容易に想像できる。否定的な意見もあるだろう。
しかし、

現時点でソーシャルVRは未成年者にとって
安全で健全な空間ではない

ことは断言できる。そして同時に、

ソーシャルVRの更なる発展と持続、さらにはそこでの生活のためにも
様々な立場の人々が考えるべき問題でもある

と、私は今回のまとめとして主張する。

ここまで閲覧いただきありがとうございました。

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