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タイと日本でのジュエリー製作

展示会前に、製作に関しても書いておきたいと思います。

MOEMI SUGIMURA の商品は、日本とバンコクの二箇所で製作してます。ワイヤーつなぎのネックレスやピアスなどはこれまで通り全てデザイナー本人がひとつひとつ丁寧にお作りしています。

そして彫金のアイテムに関しては日本とタイの職人さんに作ってもらっています。それぞれの特徴と良さがあって、デザインと石に合わせて使い分けています。こちらではその作り手さんたちの話をしましょう。

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タイで作るメリットって?
タイでの生産って安そう、とか品質が悪そうとか思う方がいらっしゃるかもしれませんが、それは正解でもあるし間違ってもいます。ご存知ない方も多いのですが、なんといってもタイは世界一のジュエリー製造大国なんです。実は日本や欧米の大手ブランドの商品が沢山タイで作られているんですよ。

デパートの一階に並んでいるジュエリーの60%はタイ生産なんて言われたりもしているほど。昔はタイ人の職人が甲府に指導に行っていたこともあるそうですから、高い技術をもった職人さんも沢山います。そもそも職人の数が多いですから、技術や加工費もピンキリなのです。

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単なるコスト対策 ?
多くの企業がコストを抑えるためにタイで量産をし、その情報はあまり公にしません。でも私の場合はちょっと違っていて、タイに住んでいたのでタイで作ることが自然な流れだったんですね。”単なるコスト対策” と思われてしまうのはあまりにも寂しい。作り手の現場も知った上でお迎えしていただきたいな、というのが私の考えです。

大切にしてほしいから
例えば私もファストファッションの服は時々着ます。でも正直それを大事にしたいとは思ったことがありません。一方でデザイナーズブランドの服はデザイン性だけでなく作り手の表現した世界観や造りにもこだわりがあって、それも含めて買うから大切に着たいと思えるんです。それなりの値段を出す価値があると思うから買う。安ければいい訳ではありません。なのでこうして製作に関しても情報をシェアしたいと思います。

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トライアンドエラー
確かにタイの酷い労働条件の話を耳にしたこともあります。知り合いの金細工職人は13歳から丁稚奉公で田舎からバンコクにきて働いていたそうです。彼のいた工場は違法だったため昼間に稼働することはできず、夜中から明け方まで日の光のない地下で電気の明かりだけで作らされたそう。私よりも若いですが目も悪くなって、もうその仕事は引退しています。今はそういうところは減っていますが、高価に売られている純金細工がそうやって作られていると知ったらなんだか買う気にはなれません。

フェアトレードやエシカルが流行っている今ですが、一点もののジュエリーとなれば尚更作られた環境や作り手が見えた方が、私は安心して買えるし大事にしたいと思えるのです。もちろん最初は失敗もしました。格安で作ってみたらひどい出来で、何十個も石を無駄にしたことがありました。そういった色々な経緯があって今は信頼できる二箇所の工場で依頼しています。

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FRENCH ORNER
一箇所はフランス人経営。ここのオーナーは本人のセンスがとてもよくて、私も彼のデザインが大好きです。毎回行くと自分の新作を見せてくれるんですが、いつでも遊び心に溢れている。こないだは大きなウツボカズラを宝石でびっしり埋め尽くした実物大のオブジェを作っていて、「今からこれに食べられちゃう虫を作るんだ!」と意気揚々と語っていました。ちなみに虫は18金とダイヤです。ただの遊び、本気の遊び、クォリティーの高い遊び。

やはり監修する人、作る人のセンスは商品にも影響するもの。この工場は欧米のオーダーが多く日本人のオーダーは受けていません、断るそうです。なんでかって?一つは ”日本人経営の工場に回す” ということだそうですが、もう一つ正直に言ってくれたのは、日本人の注文は細かすぎる!!と..... すごく理解できます 笑。

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お国が違えばスタンスも違う
この ”ものづくり” に対する姿勢は国によって特徴があって、”細かすぎる"のは日本の誇れる部分であり、時として面倒くさがられるところであります。パリの有名メゾンで働いている友人との会話で印象的だったのは、日本ものづくりは品質に関しての ”スタンダード” がそもそも高いということ。パリの服作りの現場にいると時々その造りの甘さを日本と比べてしまう、でも日本は面白さがたりないって。(もちろんブランドによりますよ) 

でもフランス人がいい加減というのは悪い方の言い方で、フランス人が持つ独特の芸術性デザイン性をなかなか日本人は真似できません。まあ特徴があってこそですから真似する必要もないのですけどね。こういうのはきっと日本だけでものづくりしていたら肌で感じることのできない感覚なんですよね。

「僕は日本人が来たら友達の工場を紹介しちゃうんだよ」と最初に言われましたが、「私は日本人の工場では作りたくない、日本っぽく仕上がってしまうから」と言って、ここで作って欲しいとお願いしたことを今でもよく覚えています。彼は私が変わった石を使うのにもとても理解があります。

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タイ人経営の工場
もう一箇所はタイ人経営の工場。人気のガーデンクォーツリングはここです。きっちりな日本人に比べてゆるいところがあるのがタイ。良い意味で融通がききやすいんです。例えばこのガーデンクォーツは石のサイズがバラバラで量産向きではないんですが、これを原型からひとつひとつの石に合わせてワックス調整してからキャストしてくれるんです。それが出来るデザインになっているというものありますが、これを日本でやろうと思ったら大変なことで 笑。だからきめ細やかなことをしても今のような価格で販売できているんです。

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今期人気が出そうな予感のこちらのリングも同じ工場ですよ!特徴あるカットのタンザナイトでデザインに悩んでいたんですが、見事に素敵なリングに仕上げてくれました!ここは原型師さんのセンスが良いんです。このリングは展示会先行ではありますが、数量限定ですので気になる方はお早めにお問い合わせください。

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日本人の職人気質
 そして今、なくてはならないのが日本の職人さん。バンコクから戻ったばかりの頃は自分の日本人的な感覚が薄れてすぎて、日本の職人さんとは仕事ができない!とまで思いましたが、やっぱり世界の誇れる日本人のものづくりはいつも完璧な仕上がりで返ってきます。私の扱う石はどれも一点しかないので作り直しがきかない。そういった大事な石達を安心して預けられる高い技術をもった職人さんです。

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こんな感じで信頼できる作り手に支えられているMOEMI SUGIMURA。
やっと生産背景が安定してきました。私の選んできた石を形にしてくれる大切なパートナー達です。展示会では安心してオーダーしていただけるように石の仕入れエピソードや生産についても直接お話ができる数少ない機会ですので、是非セミオーダーもご利用ください!

《 追記 : 2023年1月 》
海外での天然石仕入れに興味のある方からのご質問、天然石を使ったジュエリーブランドのコンサルティングのご依頼が増えてきました。そういった新しいチャレンジをしてみたいと考えている方々へ何かの参考になればと、日頃から発信している stand.fm の音声配信にて、海外仕入れ事情を少しお話ししています。よろしければお聞きください!

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