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ハリウッドがコミコンをスルーしている

ある意味で現代ハリウッドの象徴的な行動パターンをあらわしているので、ほぼ3ヶ月にわたる更新ブランクへの言及は華麗にスルーしつつ、簡潔に以下を。(ブランクについては別途、触れます。別途。)

ワーナー、ユニバーサル、ライオンズゲート。ギーク文化の祭典として名高いサンディエゴ・コミコン(SDCC)に、今年は「出展しない」ことを発表したスタジオたちがいます。

上記リンクは、その「不参加」ラインナップに、大手ソニーもまた加わった、という話。この7月開催のイベントについての情報を、Deadline誌はLA時間で先月27日に報じています。Variety誌も同様。

理由は単純で、同社のマーケティング・チームが公開直前の大作を打ち出すのに手一杯だから、とのこと。ソニー作品の直近のラインナップはというと:

 『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム
・北米にて7月2日(火)公開/日本では6月28日(金)公開


ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
北米にて7月26日(金)公開/日本では8月30日(金)公開

上記2作とも「おあつらえ向き」と言えるほど、SDCCとは親和性の高い作品のはずなんですよね。マーベル作品である『スパイダーマン』はSDCCがホームグラウンド。『ワンス〜』は、SDCC常連のクウェンティン・タランティーノ監督の注目作。

でも、7月18日(木)から21日(日)開催のSDCCと公開日が近いため、発表の場としてはタイミングが合わなかった。

とはいえ記事にもある通り、ソニーの先々12ヶ月間のラインナップには、ポップ・カルチャー基軸な作品も多いのが気になるわけです。来年までの下記のタイトルの数々を、コミコンでの押しもなく売り出していくというのも勇気のいる決断。

『Zombieland 2: Double Tap(原題)』(10月18日公開)

『Charlie’s Angels(原題)』(11月15日公開)
*同名フランチャイズのリブート作品。先日、予告編も発表されました。

『The Grudge(原題)』(2020年1月3日公開)
*ロイ・リー製作の日本原作ホラー・フランチャイズ『呪怨』のリブート作品。

『Bloodshot(原題)』(2020年2月21日公開)
*ヴィン・ディーゼル主演のコミック原作映画。

『Fantasy Island(原題)』(2020年2月28日公開)
*いまをときめくブラムハウス製作のTVドラマ・リブート作品。

『Marvel’s Morbius(原題)』(2020年7月31日公開)
*『スパイダー・マン』に次ぐソニー発・ヴァンパイアもののマーベル作品。

ポイントは2つ。

まず、メインストリームのスタジオたちにとって、コミコンを含むコンベンションの戦略的価値には流動性があるということ。

考えてみれば、コミコンの隆盛と『アイアンマン』からはじまったマーベル・シネマティック・ユニバースの10年間の盛り上がりには明白な相関関係があったわけです。コミック原作の映画を、ホームベースで盛り上げるコンベンションは「ホット」なスポット。「出来のいい」アメコミ映画を渇望するコアファンたちを味方につけようとしていた各社にとって、コミコンは「どストレート」だった。

でも、「コミコン向け作品」は必ずしもコミコンでのパネル開催に必然性を与えるわけではない。要は、費用対効果の高さが純粋に問われているわけですね。

そして当然、その費用対効果の高さを推し量ったとき、各社マーケティング部門が小回りを利かせる。その結果が今回のスルー劇となっていることもポイントです。当然と言ってしまえば当然なのですが、商売っ気が増したコミコンをあえて飛ばす決断をすることは、大企業にとって案外難しいことです。

つまり、意味があればやる。なければやらない。

大所帯になってもスパッと決断できる勇気と自信こそが、ここで示されている。大手スタジオたちの動きを見たとき、そう考えるのが正解、ということです。

(文責:小原 康平)

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