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#19 ライターという職業の限りない魅力

しがないエロライターだった俺が、ベストセラーのゴーストライターに成り上がるも、やがて朽ち果てるまでの軌跡を振り返るとともに、それを戒めとしてライターとして大成するための極意について書く。

どこの世界にも天才はいる。
予告ホームランを打てる野球選手がいるように、狙ってベストセラーを出せる著者や編集者も、きっとどこかにいるんだろう。
天才ではない場合は、いろんな幸運が重なり合ってベストセラーは生まれるものだと思う。
もし「いい本を書けば必ず売れる」のであれば、こんなに楽なことはない。
これまでどれほどの数の良書が、ほとんど人の目に触れることもなく、続々と発売される新刊の山に埋もれていったことか。

出版に携る人にとっては常識だが、今、一日に何冊の新刊が発売されていると思いますか。
答えは、約200冊。
1日で200冊だからね。
1か月で6000冊。
1年では、なんと7万冊以上もの新刊が発売されている。

読めないって。
無理だって。
出し過ぎだって。

何万部売れたらベストセラーと呼んでいいのか。
本のジャンルによって定義は変わってくるにしても、とりあえず年間7万冊が作り出す大ピラミッドの、かなり先っぽの目立つところに、それも長い期間居座り続けないことには、普段はあまり本を読まないような一般の人に発見されることなんてまず無理。
要するに、ベストセラーのスタートラインにすら立つこともできずに仮死状態を余儀なくされる本で溢れている、というのが出版業界の現状だ。

売れなかった本には気の毒だが、別にこれは理不尽な話でもなければ残酷物語でもない。
ビジネスとはそういうものだ。
出版業界に限った話ではない。
コンビニのおにぎり、カップラーメン、スナック菓子……新商品が年間どれだけ出てるのかなんて俺は知らないが、似たような状況であるだろうことは想像に難くない。
そして俺は知っている。
結果的に売れ残って赤字を出した本も、その多くは前回書いたように、本を愛してやまない優秀な編集者たちの魂がこもっているということを。

正直、1日200冊は多すぎると思うし、どうにかならないのかとも思うが、今さら年間7万冊の大ピラミッドにおののいてるようではライター失格だ。
まあ、これまで読んでくださった方ならご存知のように、ライターになったのもたまたまなら、ほとんど幸運だけでベストセラーを出せた俺が偉そうに言う話ではないだろう。
けれど、そんな俺だからこそ言葉に説得力を持つと思う。

ライターって、すごくおもしろい仕事なんだよね。

何がおもしろいって、ライターになってなかったら絶対に会えない人たちに会えること。
社長、大学教授、作家、政治家、アイドル、お笑い芸人、演出家、◯◯マニア、スポーツ選手、風俗嬢、AV女優……。
ただ会えるだけじゃなくて、いろんな話が聞けるし、なんでも質問できる。
俺の場合、エロ以外だと自己啓発系の本に携わることが多い。
となると必然的に“成功者”が取材対象になる。
つまり、「成功の秘訣」を本人から直接聞けるということだ。
インタビュー中は「なるほど!」の嵐。
また「成功の秘訣」って言っても人それぞれだ。
いろんな人から話を聞くたびに、自分にも応用できそうなノウハウがどんどん増えていくのも、ライターという仕事の魅力だと思う。

「本の値段は安すぎる」ということを言う人がいる。
趣味が読書の俺としては、自分の人生に影響を与えてくれるような一冊に出会ったときなど、まさにおっしゃる通りと思う。
だが、ライターの俺としては、本を売る側が口にしてはいけない言葉だと思っている。
今、単行本一冊の値段は1500円前後だが、それが高いか安いかは、あくまでも読者が判断することだ。

そんな教科書的な話を前ふりに使って俺がしたいのは、「ライターの仕事は美味しすぎる」という、ぶっちゃけ話
雑誌記者時代は、旬のアイドルや女優さんたちに、結構な頻度でインタビューしていた。
あえて下世話な言い方をすれば、一般人なら、どれだけお金を積んでも会ってもらえない美しい女性芸能人に、デート中のカップルのごとき至近距離で見つめてもらいながらお話ができるという、まさに「夢の時間」を過ごせるのだ。
これまた下品な話になるが、1回の講演料が50万円をくだらない著名人に、無料で個人的なアドバイスをもらったことも一度や二度ではない。
また、テレビで見る印象そのままの人もいれば、まるで違う人(多くは悪い意味で)もいて、ありきたりな言い方になるが、人として学ぶことも多かった。

いろいろな人から話を聞くことで多くの知識を身につけることができるし、ときには最先端な情報を誰よりも早く知ることもできる。
とても刺激的で、自分にプラスなことが多すぎて、こっちがお金を払いたいくらいなのに、当たり前だけどお金がもらえる。
それがライターという仕事だ。

そして俺は一度しか経験していないが(期間は約2年)、自分が書いた本がベストセラーになれば、夢の印税生活が現実になる。
お金も増えたが、著者を介して俺の周りにも一気に人が集まってきた。
大袈裟ではなく、知り合いが10倍くらい増えた。
生活が楽になったことよりも、今にして思えば、自分の周りに人が集まってきたことが単純にうれしかったし楽しかった。
今の俺を動かしているのは、あの頃のように、楽しい時間をまた味わいたいと思う気持ちだ。

流れに身を任せてと言えば嘘になる。
なんの志もなく、ただの成り行きで俺はライターになった。
フリー転身後、運だけでベストセラー本を出し、分不相応な金にまみれて俺は堕落した
いや、そもそも俺は、家族を持っても大人になりきれていないダメな人間だった。
金は底を尽き、気がつけば人は去っていた。
こんなにも遠回りをしなければ気づけなかった自分が情けない。
だが、こうしてライターという仕事の魅力を伝えられるのは、今は心からライターの仕事が楽しいと思えるからだ。
自慢じゃないが金はない。
人もまだ戻っていない。
でも書くのが楽しい。
誰かに読んでもらえていると思うだけでわくわくする。

ベストセラーはゴールではない。
次のステージに進むための補給所だ。

今の俺にはそれがわかる。
さあ、あとは書くだけだ。


【プロフィール】
50代のライター。
出版業界でエロ仕事を任されたことが転機となり、ヤリチンロードを爆走。
浮気がバレて30代前半でバツイチになるも、返す刀で当時の愛人の一人と結婚。
子宝にも恵まれ、ささやかな幸せを漫喫しつつ、ヤリチン癖は健在。
現在、20代のOLと絶賛不倫中。

ツイッター https://twitter.com/mogajichan

【著書】
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