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幸せの牛ハラミランチ

「なんかうまいものでも食べよう。」
ここ数日がかりでやっていた外回りの仕事がひと段落つき、係長は安堵した顔でそう言った。
いいですね、と返して、係長がタバコを吸いに行った隙にわたしはお店探しを始めた。

時刻は11時半少し前。
これから駅の方に向かえば、11時半オープンの人気のお店に並ばずに入れるかもしれない。よし、ここにしようと狙いを定めた。そうと決まれば、駅に向かう足も少し早足になる。

店の近くまで行くと、電信柱の横に並んでいる人の姿が見えた。店の前には6名ほど。
食べログではお店の席数は8席とあるので、ギリギリセーフで席に通された。
入れたことによる興奮のまま、わたしが弾んだ声であぶなかったですねと言うと、
「今日はなんでもツイてる日なんだよ。」
と係長もうれしそう。

お店は経堂駅の「しずる」。
牛ハラミやハンバーグの定食が人気のようで、2人とも牛ハラミを選んだ。
席に着いてすぐにキャベツのサラダが運ばれてきて、ドレッシングがやたらにうまい。
その後しばらく待てば、麦飯、お味噌汁と、お待ちかねの牛ハラミが鉄板に乗って登場した。
ピンク色の部分が残るハラミ肉は、柔らかくボリュームもあり、肉肉しくて最高。
肉の下に敷かれたもやしは肉の味を吸っているし、サイドにあるアスパラ、コーン、グリンピース、にんじんたちもちょうどいい塩加減で肉以外も美味しくいただいた。
とにかく無心で食べていて、終わったら満足感と共に超満腹。

このお店の魅力は食事だけではない。口コミにもしきりと書かれていたのが、店員の女性の気配りの素晴らしさ。
あまりにも記載が多かったからそちらもかなり気にはなっていたけど、実際すごかった。
お茶のつぎ足しだけでなく、サラダのドレッシングのつぎ足しや、サイドを食べるためのスプーンなど、先回りして色々準備してくれる。
その度に気遣いの言葉を添えてくれて、それが全くテンプレート的ではないのだ。
帰る際にも、「きれいに食べてくださってありがとうございます。」とか「お仕事の忙しい中で寄ってくださりありがとうございます。」とか、「お仕事頑張ってください、いってらっしゃい。」などなど。
気持ちの良い声かけ集が作れるのではというくらいに、素敵な気遣いをしてくれた。
こちらも嬉しく、「美味しかったです」と返して気持ちよくお店を出てきた。

接客も料理も素晴らしく、本当に人気なことが頷けるお店で、出てきた後も幸せな気持ちが続いた。
午後の活力になるご褒美ランチだった。

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