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【2/12】一人でロンリ


・1700字強


・逆張り

 私の友人に逆張りオタクがいる(私もなんだけど)。

 グループ通話などを雑談をしていて、議論が発生することがよくあるじゃん。この場合の「議論」というのはそんな小難しい議論ではなくて、日常生活で発生する取捨選択をどうするか程度の、雑談の議論。

 その議論において、皆が「Aだよね」という意見に偏っていると、逆張りオタクの友人は「いや、Bじゃあないか?」と声を挙げる。


 ”””とてもわかる”””。


 私もそうだ。なんか「賛否両論」のある状態に持っていきたくなり、否定意見を投げてみたくなる。

 その性格は短所ではないどころか、長所にも思える。

 賛否両論がないと具合が悪い。どんなに怪しい被告人にも弁護人はつくように、どんなに支持されない非常識的/非効率的な意見にも、とりあえず味方をしてみたくなってくる。議論してみないと結果はわからない。

 ディベートだ。血液がディベートを求めている。


・「12人の優しい日本人」

 というワンシチュエーション映画、「もしも日本にも陪審員制度があったら」という設定でただただ12人が議論し続けるだけの映画なので個人的にとても好きな映画だ。人を選ぶ映画なんだけど。

 そこで交わされる議論は泥沼試合なんだけど、まあそこは御愛嬌。物分かりの良い人間ばかり登場させては議論劇は白熱しないのだ。物分かりの悪い人間ばかり12人登場させるのも必然と言えよう。

 12人全員に名前がついていないので、名前を覚えるのが苦手な私にとっては、会話劇なのに見ていて疲れない良い映画だった。


 その映画のオマージュ元である「12人の怒れる男」という1954年のアメリカのテレビドラマもよい。密室劇の金字塔的作品らしい。

 こちらもとある事件の殺人容疑を巡って議論するお話。有罪か無罪か?という結論自体は別に重要ではない。面白いのは、その12人の価値観、性格、意見、論調、知能がバラバラである点だ。

 はやく結論を知りたい人からしたら「こいつらは何をモタモタと非効率的で感情的な議論をしているんだ」とイライラしてしまって目も当てられないかもしれない。しかしそのモタモタこそが見どころである。

 物分かりが良かったり悪かったりする12人を見ていると、気づけば自分もその集団にいるような気がして、「私ならこう反論するのに」「効率よく議論するにはこう仕切った方がいいのに」などとグルグル考えているのだ。

 これは情操教育にいい作品だと思う。「感情論はダメなんだな」と自覚できるし、詭弁にどう対処したらいいのかという思考実験もできる。

 全国の中学生~大学生に見て欲しいね……


 「ナイゲン」という密室劇も好きだ。公式がyoutubeに動画を上げているので、よかったら見てみて欲しい。こんなに面白いしタダなのに一万再生しかされていないのは勿体ない……

あらすじ
“自主自律”を旨とし、かつては生徒による自治を誇っていたが、今やそんな伝統も失われつつある普通の県立高校、国府台高校。
ある夏の日、唯一残った伝統にして、やたら長いだけの文化祭の為の会議“ナイゲン”は、惰性のままにその日程を終わろうとしていた。
しかし、終了間際に一つの報せが飛び込む。
「今年は、1クラスだけ、文化祭での発表が出来なくなります」
それを機に会議は性格を変え始める。
――どこのクラスを落とすのか。
かくして、会議に不慣れな高校生達の泥仕合がはじまった…!

(引用:http://www.agarisk.com/naigen-online/

 文化祭前の会議と聞いて「えらくふわっとした議論になりそうだな」と思って観始めたけど全然そんなことはなく、キッチリとルールに則った範囲内の決しかとれないような設計になっていてよかった。途中から新たな情報が後出しされてくることはあまりなくて、クライマックスは伏線回収で気持ちよく進んでいく納得の展開だった。

 会話劇って視覚的には地味になりがちだと思うけど、ナイゲンは皆よく動き回っていたので退屈しなかった。

 役者のタイムマネジメント能力が高すぎる。難解練習したらこんな時間ぴったりの進行になるんだ。


 なんにしても、私のようなディベートフィリア議論性愛の人間には刺さる作品だった。


・おわり



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