火星の人 感想

・1400字強


#火星の人


火星に一人取り残されたマーク・ワトニーは、すぐさま生きのびる手立てを考え始めた。居住施設や探査車は無事だが、残された食料では次の探査隊が到着する4年後まで生き延びることは不可能だ。彼は不毛の地で食物を栽培すべく対策を編みだしていく。

Amazonより

 私の好きな人がオススメしていたので読みました。プロジェクト・ヘイル・メアリー(この著者の別の作品)が面白かったので、この著者には信頼がある。

 あのー、やっぱり面白いス……科学的に未知な部分を含まない、現実的にありえすぎるお話でした……

 物語は基本的に主人公の日誌を読む形で進んでいく。作中では122ソル(火星の1日)以上の時間が経過するのだけど、主人公は毎日色々な試みをしているので、「それから1か月後……」のような、時間を飛ばす描写なく、無駄のない122日を過ごしている。

 なぜそんなシチュエーションになったのか……? 主人公は何ができて、何ができないのか……? その背景が叙述され、状況を理解するほどに、絶望は現実味を帯びていく。サンプル部分を読んでくれたらわかると思うけど、冒頭の10~20ページくらい読んだあたりで「なにこれ、もうデッドエンド確定じゃない? 残りのページは全部回想シーンなの?」と思った。

 ほとんどの人間はそんな状況に置かれたら死んで終わると思うけど、主人公はその知識と判断力を以て、考えられる限り最適な選択肢をズカズカ歩いて行く。あまりにも痛快である……

 心情描写に力が入っていないのも最高だ。凡人凡才の小説家なら「火星でひとりぼっちだなんて、心情描写に注力するにはもってこいのシチュエーションだ」と思うだろう。しかし読者はハードSFを読みに来ているのであって、主人公が火星でひとりぼっちになってどのような鬱裂とした感情になり、仲間を恨み、地球の恋人のことを思い出し、過去を後悔しているかなどには毛ほども興味がない。そういった心情描写がさっぱりないのも痛快だ。

 ノリがずっとアメリカンジョークの文体だ。生死の狭間を行ったり来たりするような命がけのミッションがずっと発生し続けているのに、主人公がずっと冗談混じりに日誌を書いているので、シリアスすぎない。

 結末よりも過程が面白いので、面白い部分をやるだけやったらスッパリ終わってくれたのも痛快だ。



 おい、まてよ。読み終わってから、この作品には上下巻があることに気づいた。なんだ。主人公デッドエンドでスッパリ終わったのかと思った。

 ブオ~~~!!

 面白いけど上巻の方が面白かったな。プロジェクト・ヘイル・メアリーもそうだったけど、3D空間上で作業している様も見どころの一つなのだろうけど、専門用語が多いのと淡々としているのとでいまいち画が想像しづらく、これは映画化した方が面白いやつだなと思った。


・#オデッセイ

 と思って視聴しました。

感想:
・やっぱり映像作品は時間あたりの情報密度が高くて、おトクだね。
・やっぱあのボリュームの小説を2時間の映画に落とし込むのは無理があるぜ……
・私は原作の方を読んだから理解できたけど、原作読んでない人にとっては意味不明なシーンも多いのでは?
・小説の方では想像がつかなかった光景が補完できる。特にラストのアクションとか、文字情報ではよくわかっていなかった。
・小説の方、まずは宇宙開発の光景を想像できる素養が要るのかも。



・ところで皆さん、プロジェクト・ヘイル・メアリーのサンプル部分を読んで下さい。どうぞよろしく。


・おわり

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