100人が住む島で、50人がエンターテイナーだったら、死の島すぎるよねという話

・3600字弱

・大事な話です



・自分が「功利主義」という言葉を知ったときの感情は、生まれて初めて眼鏡屋さんで眼鏡を調整してもらって、視界が鮮明になったときの感情に似ていた。「功利主義」……こっ、このような言葉があっていいのか! That's it! 自分が無意識に考えていた「人類全体での幸福度の総和が最大になるように行動しよう」という考え方には、名前がついているのか! と。


 その「功利主義」に似た考え方で、「人類全体の労働量の総和を減らそうよという考え方」にも名前はついていないのかなと思ったけど、ついていないらしく、哀しい気持ちになっている。Google検索/Bing AI/ChatGPTに訊いてもそれらしい言葉が出てこない。誰か教えてください。教えてくれないなら私が勝手に命名するけど、「労働量総和:人類全体の労働量の総和」と「怠け主義:労働量総和が小さくなるように行動しようよという考え方」です。

 Bing AIとChatGPTに「人々が全く観光からの興味を失い、旅行や観光に行かなかくなったとしたら、人類全体の労働量の総和は減りますよね」とか「人々が旅行や観光にいかなくなったときを想定したときに、増える労働と減る労働をそれぞれ挙げてください」とか訊いてみたのだけど、私の想定していた答えに反する、納得性の低い回答しか返ってこなかった。これはAIか私か、どちらかがアホです。

 抽象的な話だからわかりづらいのかもしれないけど、具体的に考えると、しっくりくるかもしれない。

 小さな小さな島国があるとしよう。その島国には、労働力人口が100人いる。100人は、水汲み、漁、狩猟、農耕、調理、林業、葬儀、建築、道具の生産と修理、流通、あらゆる「それがないと生きていけない労働」をこなしていて、おかげで生活が成り立っている。しかし、彼らは日々に退屈し、やがてエンタメを欲する……エンタメ需要は高まり、やがてエンタメだけで食っていける人が続出する。音楽家、噺家、大道芸人、キャバ嬢(ホスト)が現れた。楽器職人、イベントのマネージャー、広告代理店、音楽教師も現れた。手の込んだ服の生産や、手の込んだ料理をする人も現れた。←なくても死にはしないという意味で、彼らも一応、エンタメに含めておく。人々からのエンタメ需要はどんどん高まっていったために、職業も多様化した……気づくと労働力人口100人のうち、49人がエンタメに依存する職業になっていた。人々は、なぜか疲れを覚えていた。なぜかはわからないが、自分の労働量が倍に増えた気がするのだ。

 岡目八目。神目線から見ると「そんなの、本来100人でやってたはずの ”死なないための労働” を、今は51人がやることになってるのだから、労働力は倍くらいになるだろう」と思うかもしれない。でも、島民目線から見ると、「エンタメのために金を払う行為が、自分の労働量を増やすことに繋がっている」というのは、気づかないのではないだろうか。その2つは一見繋がっていないように見える。

 ということを私は普段から考えているので、なんか、”死なないための労働” ではないものに金を払うことって少なければ少ないほどよいと思っている。金を払うから「なくても死にはしない職業」が存続できてしまうし、本来発生しなかった労働が発生してしまうのだ。

 娯楽に金を払う行為を完全にやめた方がいい、とまでは言わない。娯楽禁止の世界はつまらなすぎる。でも、娯楽(:娯楽という表現には語弊があり、厳密には ”なくても死にはしない労働への対価を与える行為全般” である)を消費するたびに、僅かに自分の労働量が増えていることに繋がっているということは皆が覚えていた方が社会を豊かにすると思っているよ。

 なんか、こういう「素人でも思いつく考え」って大体は先人が思いついて言葉を作っていてくれているから、労働量総和(造語)に相当する経済学用語が絶対にあると思っていたのだけど、見当たらない(あったとしても一般認知度が低い)のは、ただただ哀しい。

 私がアホなだけ? 先ほどの100人島の例え話には致命的なミスがあって、私がアホだからそれに気づいていないだけ? 反論お待ちしています。


 すまん、なんか、SNSを見ていても、友人知人を見ていても、毎日が仕事仕事でつらそうにしている人ばかりで、哀しい気持ちになっている。

 皆で、生きるのに不必要な出費を無くしていかないかい。まずは皆、まだ使える道具を捨てるのをやめよう。話はそこからだ。



・具体的な改善案



・①観光やレジャーをすると、それだけ観光業/レストラン/交通/宿泊など、本来発生しなかった労働が次々に発生する。

・②服を毎シーズン買い替えることでも、服飾デザイン/生産/流通/ファッション雑誌編集/プロモーションなど、本来発生しなかった労働が次々に発生する。ビリヤードのように。

 家具や家電の買い替えもそうだ。

 「引越しの際は、いっそ家具や家電を全て捨てて、向こうで新たに買えばいい」という考えに至れてしまうのが資本主義のつらい所だ。「金を払っているのだから○○をしてもいいだろう」という考えができてしまう。それは怠け主義にも反するし、資源の浪費やフードロスにも繋がる。

・③自分はね、電子書籍とかサブスクの映画を見るのが趣味なのだけど、そういうのは「私が娯楽を摂取することによって追加で発生する労働」が小さいために罪悪感が少ないという側面がある。

 趣味がSNSとソシャゲだという人も、それによって他の娯楽をせずに済んでいるなら、それは良い趣味である気がする。

・④コレクション趣味は良い趣味である気がする。自分が死んだあと、そのコレクションが中古で出回るとき、追加の労働が発生することなく誰かの娯楽欲を満たせる。

 楽器の練習/ボドゲ/釣りのように、「道具を1つ買いさえすれば、後は追加の労働がほぼ発生することなく無から娯楽を生み出しつづけることができる」という、道具を使う娯楽全般もいいかもしれない。

・⑤1人暮らしなら、自炊せずに全ての飯を食堂やスーパーのお惣菜で済ます行為も怠け主義に即すると思う。全ての1人暮らし家庭のキッチンに調理道具が揃えられて、その人は脳内の片隅で常に「今日のご飯はどう作ろう」と考え続けなければいけないのは非効率的に思える。分業できるのが資本主義の美しさなので、それはご飯を作る職業の人に任せた方が、(割高だけど)人類全体の労働量を減らすことには繋がると思う。

 ⑥もっとわかりやすい例でいうと、スキー板とかバーベキューセットみたいな、「高い割にはあまり使わず、壊れるまで使うことなく捨てることになる道具」に関しては、レンタルにした方が(例え割高だったとしても)怠け主義に即すると思う。

・⑦あの~、キャンペーンって、「キャンペーンを行うことによる利益を計算して会議でプレゼンしてる経営者」がいて、「キャンペーンのチラシやクーポン券をデザインしているデザイナー」がいて成り立っているので、それってマジで労働量総和をいたずらに増やしていると思っている。

 や、キャンペーンを行うことで自社のプロダクトの市場シェア率を上げられるのかもしれないけどさ、自社のシェア率を上げるということは他社の市場シェア率を下げるということなのであって、それって功利主義的には無価値な行為だよね。キャンペーン/クーポン/ポイントカードは気に入らないので、徹底的に不買を貫いている。

 でも、プロモーション自体はいいと思うよ? 生産者と消費者を適切にマッチさせるための労働は、「ないと死ぬ労働」に含めていいと思う。


具体的な改善案まとめ
①旅行控えろ
②服/車/家電など、道具全般は限界まで使え
③電子情報を鑑賞する娯楽で満足できるといいね
④コレクション趣味や、道具を使う系の趣味もいいかもね
⑤1人暮らしなら自炊せず外食やお惣菜で済ませてよい
⑥スキー板とかバーベキューセットはレンタルしろ
⑦キャンペーン/クーポン/ポイントカード等は不買しろ



 余談。暗号解読(上)のここの記述、めっちゃ気持ち良いよな。

 バベッジは、手紙ごとに料金を計算する労働コストは郵便料金を上まわることを指摘し、全国どこでも均一料金で手紙を送れるという今日のシステムを提案したのだった。

サイモン・シン. 暗号解読(上)(新潮文庫) (p.126). 新潮社. Kindle 版.

 これ👆、誰も損せずに、世の中に発生する労働だけが減っていて気持ちが良い。


・自分は、娯楽を消費することが、世間では「経済を回している」とポジティブに捉えられているのがどうにも共感できない。小さな節約が、人類全体を生きやすくしていくと思うよ。



・おわり


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