【日記2024/5/5】読書感想文 サイモン・シン「宇宙創成」

・2000字弱。


・宇宙創成(上)

・ノンフィクション本です

 同じ著者の「暗号解読」「フェルマーの最終定理」が面白かったので、ずっと気になってたんだよね。元のタイトルは「ビッグバン宇宙論」。最近、堀元見さんのブログで紹介されていたので、後押しされて買っちゃった。

 冒頭、学者の名言から入るのだけど、既に引きが強すぎて引きこまれたよね。

広大な大聖堂の中に三粒の砂を置けば、大聖堂の砂粒の密度は宇宙空間の星の密度よりも高いことになる __ジェイムズ・ジーンズ

 やはり、ドラマチックなテイストすぎる……これはジャンプ漫画です。

 え、宇宙創成ってジャンプで連載されてた?

 第1章、「地動説がなぜ認められなかったか」というテーマで当時の人々の価値観が説明されているけど、これはギュ……となる。仕方ないよなぁ~~~~もし地球の方が太陽にの周りを回転しているなら、地球はたえず強風が吹き荒れているはずだし、リンゴは地球でなく太陽に向かって落ちるはずだし、星々の位置関係も一年周期で大きく変わっているはずだよなぁ~~~



・科学の歴史、「次の進展」が起こるまでに普通に400年とか1500年とかの規模でジャンプするから怖いよな。

 ちょっとコンピュータ科学の歴史を見てみろよ。歴史が50年くらいしかないぞ。


・ガリレオの登場、初っ端からぶっ飛ばしており、圧倒的カリスマすぎる。とうとう現れてしまったか。



・アインシュタイン登場ッ! 彼の発見によって、物理学ものがたりは大きなターニングポイントに差し掛かる。


 各章の終わりにまとめがあるのがありがたい。

 変光星→分光学→赤方偏位の下り、奇跡すぎる。宇宙をパズルだと考えた時に、その難易度設定が絶妙すぎる。パズルって、解けるように設計されてないと解けないじゃん。特に天文学は他の分野と違って、研究対象を手元に置いてこねくり回すことができないから、ただ宇宙から降り注ぐヒントを注意深く観察することでしかパズルは解けないのだ。ヒントが少ないとパズルを解くのは不可能になる。しかしそこはさすが宇宙さん。人類が絶妙にパズルを解けるように奇跡的な難易度調整をしている。

 天文学の発展は、観測技術の発展と共にあるのであって、石器時代の人が「この世界って銀河がいっぱいあって、ビッグバンから始まったんだよな」と確信することは不可能なのだ。


 読了ッ!

 例え話が多くてわかりやすかった。



・宇宙創成(下)

 科学の歴史は泥臭く、美しくない所が美しい。光エーテル、宇宙定数、プラムプディングモデル、定常宇宙……人類は迷路を彷徨ううち、様々な不正解の道にぶち当たっている。いま信じられている科学が正解である保証もない。

 ジャンスキー登場ッ! 物語はターニングポイントを迎える!

・あのさ、この本ってジョジョのスピンオフ?

・すみません、科学ってジョジョのスピンオフかもしれません。


・さっきから聞こえる「パチパチ」という妙な電波だけどよォ~ どうも様子がおかしい●●●●ぜ……はじめは雷か嵐だと思ってたが、実際にはもっとヤバいヤツなんじゃねぇのか~? こんな話聞かされてねぇぜ……!

 しかも電波のピークは「23時間56分」の周期でやってきている……なんで24時間じゃねぇんだよッ! クソッタレが!


・この、「些細な違和感に気づいてよく調べて見ると、思っていたよりずっとヤベ~ことが起きていた」という冒涜的な怖さ、ジョジョあるあるであり、科学あるあるでもある。



鳩がアンテナにべっとりとつけた「白い誘電物質」が雑音の原因ではないかと考えたのだ。

・おもしろコラムを読んでる気持ちで電話の雑音の話を読んでたら、急にビッグバンモデルの正しさが証明されるんだもんな。心臓に悪いよ。

・高品質なFMラジオさえあれば、誰でも「ビッグバンの証拠」を聞くことができるの、アツいな。


 上巻では、天動説から始まって「ビッグバンがあるんじゃないか?」と気づいた所で終わっていたので、すごい快進撃だったのだけど、下巻はというと、あまりにも泥臭かった。


資料収集には多くの公文書館や図書館に協力をいただいたが、以下の方々および施設は、仕事上の義務を越えて協力してくださった。

謝辞より

 「仕事上の義務を超えて協力してくださった」←良い表現すぎる。


 読了ッ!

 魚も与えるが、魚の釣り方も教えるような本であった。訳者あとがきによると、この本の主人公は《科学的方法》だという。

 我々一般人の多くは地球平面論者フラットアーサーの意見を否定するとき、「多くの科学者は地球が丸いと言っているし、教科書にも載っているから地球は丸いんだ」程度の反論しかできないことと思うが、それって科学的というより権威主義的なマインドなのであって、マインドとしてはガリレオの時代の地動説信者と同じなのではないかと思う。



・おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?