美形でない顔への需要について/AIイラストの収益化について

・3400字弱


#AIイラスト #AIフォト #AI絵師

・まずはこのアカウントを見て欲しい。

・日本/英語圏をターゲットにAIフォトを売っているアカウントだ。初期はAIであることを明記していたようだけど、今は明記していないようだ。しかし実在の人間であるとも明記していないので、詐欺とまでは思えない。

・ツイッターで「to:@AL_Aina1」と検索し、このアカウントへのリプを見てみると、AIに疎い中高年と思われる文体のツイしか出てこない。それらを読んでいるとわかるが、やはりAIであることを知らずに、実在の女性だと思ってリプやお布施をしているのだ。おそらくいくつかはサクラと思われる。

・これには驚いた。私はいつかの日記で「現時点のAIフォトがグラビアアイドルに劣っている点の一つとして、同じモデルで違う構図の写真を撮ることができない点がある」という旨のことを書いたけど、そんなことはなく、AIで出力した絵は、AIに疎い人を騙せる程度には似通った顔になってくるのだ。

・@AL_Aina1だけでなく、@AL_Rea1や@mary_mary_2023と、似たアカウントが複数あり、それぞれが写真集を出して写真サブスクを開設している。中身は同一人物と思われる。

 中の人は、AIに出力させた画像が@AL_Aina1と@AL_Rea1と@mary_mary_2023のどれに似ているかを判断して投稿先を分けることで、よりモデルが同一人物に見えるよう工夫しているのだと憶測する。

・オッサンがオッサンから搾取する時代である。



#美男美女

・AIで出力した人間の顔が似たり寄ったりである理由は、AIが技術不足だからというより、人間の認知の方に理由があると思う。

・私はよくchichi-puiというAIイラスト投稿サイトを閲覧するのだけど、見ていると、美形というのは一つの正解に収束していくのだという感想を抱く。

・「AKBは誰が誰だか見分けがつかない」という人が多いのはある程度必然だと思う。


・美形の定義に関して、他人の日記から引用したいセンテンスがある。

・この記事では、ドラえもんに出てくる芸能人の顔について言及している。

・このイラストを見て「きたぞ……」と思った。この、アニメ作品に有名芸能人が登場するときに生まれる、微妙なリアリティラインの段差。現実の人間を再現するために必要なディテール量と既存キャラを描くのに必要なディテール量にズレがあるとこうなる。

~中略~

・特にストレートな美男美女は似顔絵におこすのが難しいみたいで、向井理や相武紗季のようにクセのない(?)人は「なんか誰でもない人」になってしまっている。これは絵を描く人の実力の問題ではなくて、デフォルメという手法の根本的な問題のような気がする。

・いろいろな人の顔を合成して平均顔にすると美男美女になる、という有名な話がある。

~中略~

・美形の芸能人をマンガに出すとき、造形がその絵柄におけるデフォルトのようなものになってしまうのは、デフォルトの絵柄がもっとも均整が取れていて美しいという定義づけのようなものがなされているからだろうか。にもかかわらず、マンガのキャラクターは顔に傷をつけたり髪型を特徴的にしたりして「個性」をつけ、魅力を出そうとする。

・これはかなり同意できる。「いろいろな人の顔を合成して平均顔にすると美男美女になる」という俗説はきっと正しいと思う。

 動物には「より遺伝子が優れた配偶者を見つけて優れた子を遺そうとする能力」があり、その「遺伝子が優れた配偶者」の定義のひとつに、「顔が左右対称で平均から外れていない」ことがあるのではと思う。専門性に欠ける素人意見だけど。

 とにかく、AIに出力させた美形顔が似たり寄ったりになるのは技術不足でなく人間の認知側に理由があると思っている。どれだけ技術が進歩しても、今より美形な顔写真が生まれることはないと思う。


 このまま美形イラストや美形フォトが息を吸って吐くように量産できるようになり、ティッシュ一枚の価値もないくらいになったとき、非美形に需要が生まれ、フォーカスされる時代が必ず来ると思う。

 現在、イラストやアイドルなど物語性のないコンテンツでは、美形にしか需要がないけど、ドラマや漫画などの物語性のあるコンテンツにおいては、非美形の需要があると思う。

 複数の人物が識別しやすいし、美形が美形であることが相対的にわかりやすい。美形しか出てこない漫画には「他のキャラたちより相対的に美形なキャラ」が出せないことと思う。もし人間の平均顔=美形という俗説が正しいなら、美形のバリエーションには限りがあるが、非美形のバリエーションには限りがない。


・以前の日記でも書いたけど、麻雀放浪記という漫画は「非美形な美形」が多くてすごい。嶺岸信明先生は、洗練された非美形を描くのが上手い。

・AIが漫画やアニメや実写映画を作れるようになったら、非美形の時代がくるのである!




・ところで、冒頭に掲げたAIフォトに嫌悪感を催す人というのは多いことと思う。「AIに出力させた画像で金儲けをするなんて言語道断、もっと絵師やコスプレイヤーのように汗水垂らして金儲けしろ!」と思う人も多いように見受けられる。

・個人的には、今はAI黎明期だから金儲けができるのであって、もう少し待てば「AI絵は誰にでも出力できるのであって、金を払って他人に頼むようなものでもないな」と皆が気づき、AI画像出力者の収入は雀の涙程度のものになると思う。

 自分の代わりに手を動かしてAIスケベ絵を量産してくれる人がいるとして、私なら、スケベ絵が1日1枚上がるサブスクで月額50円くらいならギリ見るか迷うと思う。

・最近では「クリエイター保護の観点から、AI画像の収益化を規制した方がいいのでは」という意見が多い。しかし、どうせ10~20年後には絵師の描く絵の価値が暴落し、個々人で勝手に見たい絵を出力するようになり、遅かれ早かれ絵師の収益は激減する。

・かといって、クリエイター保護のためにAI画像の出力そのものを禁止するのは、人類全体の幸福度を下げる。

・付加価値を提供していないのに収益を出している製品やサービスはなくなった方がいい。転売とか、似非科学の健康器具とかは、付加価値を提供していないので、収益こそ出ているがGDPに全く寄与していないと言いたい。Yahoo!BBも付加価値がないので滅んだ方がいい。

 しかし、AI画像は金銭を払ってでも見たいと思えるような付加価値を提供している。今はそれが不当に高い値段で評価されているとは思うけど、もう少ししたら妥当な相場になると思う。

 冒頭に掲げた@AL_Aina1というアカウントは月額600円のサブスクでAIフォトを公開しているけど、これは自分がコスプレイヤーと同じ市場にいる自覚を持って、相場に寄せているのだろう。

・クリエイターの収益を守るためにAI出力や収益化の規制を! という考えは、別の製品やサービスで考えたらおかしいのはすぐわかると思う。

・仕立て屋の収益を守るために刺繍ロボットの規制を!

・板前の収益を守るために寿司ロボットの規制を!

・ドライバーの働き口を守るためにトラックやタクシーの自動運転の規制を!


・否、規制しない方が功利的である。


・イラストだけが他の産業より特別視されている理由は、(あくまで他の産業と比べての話になるが)ネットで顧客が喜んでいる姿が視界に入りづらい割に、ネットで生産者が悲しんでいる姿がやたら視界に入りやすいためであると個人的に思う。

 また、先ほど例えとして挙げた仕立て屋/板前/ドライバーなどと比べて、絵師にはややアイドル性がある。どれだけの人間がその絵師を追っているのかが数字でわかり、数字が多い方がカリスマである。ファンは感想を投げられるのに、絵師と会話できることはない。

 仕立て屋/板前/ドライバーの様な、個々人にスポットライトが当たらないような職業に比べると、絵師というのはオートメーション化して悲しませてはいけないような尊い職業だと錯覚する。

 また、絵は訴求力が高いために、感情論で幅を利かせる能力において絵師の右に出るものはいない。

・これは、由々しいことだと思う。

・多くの人間は、自分の意見に客観性を持たせようとする意識が欠如している。


・おわり

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