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【体験談】私が30代で改名(名前の変更)をした話【実際の裁判所への申請とその後の手続き】

はじめましてnemunemuです。私は2022年、家庭裁判所への申立手続きを行い、改名(名の変更)を行いました。改名をしたのはいわゆる名の部分、例えば「山田梨衣乃さん」であれば、「梨衣乃」の部分です。


結論を先にお話すると、私の場合は「改名の申立が受理され、いまは新しい名前で生活」しています。30代で改名を行いましたが「もっとはやく行えばよかったな」というのがいまの正直な気持ちです。

私は珍しい名前ととある理由のため、小学生から大学生までは自己紹介するとからかわれ、大人になったら「可哀想に」と言われてきました。そのため自己紹介や名前を名乗ることに抵抗がありましたが、世間一般的に「名前に対して悩んでいる人」はそう多くないと思います。

だからこそ「改名(名の変更)」について情報収集することにとても苦労しました。そこで、このnoteでは私が改名にいたった経緯から、裁判所での手続き、大変だったことを、改名から1年たったいま書き残しておこうと思います。私の経験が同じ悩みを抱えるだれかの助けになれたら幸いです。

子どものときから続く、私と名前の因縁

そもそも私の名前は珍しく、名前だけだとしても同名の人は確実にいないと思います。ちなみに小学4年生のときは1年間、漢字が間違った状態の名簿で過ごしていました。

いまだから冷静に振り返られますが、やはり子どもの頃は自分の名前を言うことで周りの子どもたちが笑うこと、それを大人がたしなめることにすごく傷ついて、毎年クラス替えで自己紹介をするのが苦痛でした。

しかも小学校だけ耐えればよいと思っていたら、中学校、高校まで、そして大学でも小声でクスクスと笑われる。その後、社会人になってからは自己紹介をするごとに「大変だったでしょう」と労われ、逆にいたたまれなくなる日々でした。

改名ができることはニュースで知っていました。ただし、それはいわゆるキラキラネームや性同一性障害が理由となる場合のみだと考えていました。

しかしあるとき人づてに「上記の理由以外でも、改名ができる可能性がある」ことを知ります。それは私が20代中盤になる歳でした。

改名に至るまでの10年間

さっそく改名について調べ、家庭裁判所での判決になること、申請には手続きが必要なことがわかりました。そして、改名できるとはいえあくまでも可能性であることも知りました。

大学卒業後、就職していた私はほぼ名字しか使わない生活でした。同世代の友人はみな、私のことを名字や名字に関連したあだなで呼び、名前で呼ぶ人はだれもいません。両親や親戚も「3文字ある名前の、前の2文字」でしか呼ばないため、私の名前を本名ので呼ぶ人はいませんでした。

そして会社では名字しか利用しないため、必然的に新しい自己紹介の場がなければコンプレックスが刺激されることはありませんでした。

本名を名乗ることをやめる

前述の「両親に改名の許可をとること」で気づいた方もいるかもしれませんが、私はもともとまじめな性格です。あまりなにも考えずに、本名が不要なところでもバカ正直に本名を名乗ることでイヤな思いをしてきたわけです。

「自分の名前がイヤだ」ということも、そんなひどいことを誰にも言ってはいけないと思っていました。(実際に両親が付けてくれた名前に抵抗を示すなんて眉をひそめられることもありました)

社会に出て「そんなに気になるなら本名を名乗らなければいいのに」と言われ、ハッとしました。そこからは両親や親戚が呼ぶように前二文字だけを名乗ることにしました。

すると名乗ったときの相手の反応が驚くほど変わりました。”前二文字だけ”であれば珍しい名前ではない、からかわれることも聞き返されることもなくなったのです。これだけでこんなに世界は生きやすくなるのかとあっけにとられたことを覚えています。

そのときに改名の変更の手間(家庭裁判所・免許証の変更など、その後の手間)と天秤にかけた私は「改名」を保留にしました。

手間の中でもとくに「両親に改名の許可をとること」が言い出しづらくハードルが高かったのです。(ちなみに家庭裁判所で改名の申請にあたって、親の許可を取っているかの確認はありませんでした)

我が家の場合、黙って名前を変えるとそれが判明したときに両親とトラブルになる可能性が高かったため、名の変更前後には連絡が必要だと考えていました。

想像よりも重要な「改名を申し立てるタイミング」

その後も当たり前のように「名字」で呼ばれる生活が続きます。

学生時代からの友達にはあだ名で、新しく会った人には「前の二文字」で呼ばれるため、名前が必要となるのは病院や公的機関くらいです。私の生き辛さもどんどん減ったかのように感じていました。

このままライフスタイルを変えなければ、私は改名しなかったかもしれません。しかし、新型コロナウイルスの影響で転職をすることになりました。

転職をするとき、「改名するならいまなのでは?」という考えが頭をよぎりました。もし在職中に改名をするなら「健康保険証」や「税金」など、少なくとも会社に負担を与えるからです。もちろん事前に総務の人や社長にも話を通さなくてはなりません。

ただし転職の面接や引き継ぎで改名について調べることが遅れ、「改名には数カ月」かかるとわかったのは転職先の内定がでて入社が決まったときでした。

あたりまえですが転職活動では履歴書・職務経歴書に本名を記載していたため、この時点で改名を行い、もし承認されたら、入社後の数カ月で名前が変わることになります。イヤな思いをすることが減った私は、入社後のことを考えて改名を諦めることにしました。このときの私は「もうそんなに苦しい思いをすることはないだろう」と考えていました。

転職後に状況が変わる

これまでとは違い、大きな企業に入社すると業務内容も変わります。社員数も多いため、名字が重複することも多く、社内・社外で基本的にフルネームを名乗るように。また前職まで経理や総務担当の人に依頼をしていた契約書や請求書の発行は自身で行うようになりました。そうなってくると想像しなかった名前の問題が発生します。

社内や社外の担当者から、私の名前が間違えられることによって修正の業務が発生するようになりました。

名前の読みだけではなく、私の名前は漢字も珍しく、今だとキラキラネームの扱いになるかもしれません(シワシワネームでもあります)。見慣れない、聞き覚えもない名前で、漢字も珍しいとなれば、間違えられる確率はどんどん増えていきます。

これまでは私自身は気にせずに仕事をしていました。しかし、転職後の会社ではシステムの仕様上、名前の間違いは指摘して修正してもらわなければなりませんでした。なぜなら契約書や請求書の名前が異なっているとシステムエラーが起きてしまうからです。

新しい仕事では社内も取引先もスタッフの入れ替わりが激しく、その度に間違えられ、謝罪をして修正してもらいを繰り返し、疲弊していくことが増えていきました。私が気づく前に同じチームの同僚が指摘してくれることも多く、私の名前のせいで周りの負担を増やすことがとてもつらかったのを覚えています。

また、若い世代にとって聞き覚えがない私の名前は、電話で伝えても一度で聞き取ってもらえることが少なくなっていきました。お店の予約は「名字だけ」でよくても、病院の予約や問い合わせは「フルネーム」で伝えなければなりません。体調が悪いなか、何度も自分の名前を伝えること、相手に何度も聞き返させることで、自分の中で名前がどんどん重しになっているように感じました。

このときに私は「次の転職のタイミングで無職期間を作り、改名すること」を決意しました。

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