ぼんやりとした小説を書いています。

宝石箱の住人

触れれば簡単に砕けそうな硝子のピアス。

 細かい曲線が連なった金の指輪。

 ぐにゃりと曲がる薄いバングル。

 どれもほんの少しの不注意で壊れてしまいそうなものばかりで、でもカエデさんの周りはそういったもので溢れている。

 「わざと身につけて緊張感を持って生きなきゃ、私はダメになるんだと思う」

 カエデさんが初めて俺の家にやってきたとき、彼女はひどく不安そうな顔をしてそう言った。俺より年上

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霧の中で

ここは雨ばかり降る。

 水滴が落ちてきて、蒸発して、それが白いもやもやとなって、彼女の周りを覆っている。

 「フォグおいで」

 彼女が私の名前を呼ぶとき、私はすでに彼女の膝の上にきちんといる。それでも、時々不安になるのか、彼女は私の名前を呼ぶ。

 もうしばらく開かれていないカーテンを眺めながら、彼女はいつもぼうっとしている。薄い緑色のカーテンは、淡い光を透かし、彼女の素足を柔らかく照らして

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宝石箱の住人

触れれば簡単に砕けそうな硝子のピアス。

 細かい曲線が連なった金の指輪。

 ぐにゃりと曲がる薄いバングル。

 どれもほんの少しの不注意で壊れてしまいそうなものばかりで、でもカエデさんの周りはそういったもので溢れている。

 「わざと身につけて緊張感を持って生きなきゃ、私はダメになるんだと思う」

 カエデさんが初めて俺の家にやってきたとき、彼女はひどく不安そうな顔をしてそう言った。俺より年上

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霧の中で

ここは雨ばかり降る。

 水滴が落ちてきて、蒸発して、それが白いもやもやとなって、彼女の周りを覆っている。

 「フォグおいで」

 彼女が私の名前を呼ぶとき、私はすでに彼女の膝の上にきちんといる。それでも、時々不安になるのか、彼女は私の名前を呼ぶ。

 もうしばらく開かれていないカーテンを眺めながら、彼女はいつもぼうっとしている。薄い緑色のカーテンは、淡い光を透かし、彼女の素足を柔らかく照らして

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