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アンモニアと石炭混焼で脱炭素

◉アンモニアを石炭火力発電所で混焼する研究、日本では進んでいるのですが、世界的には不人気です。でも、日本としてはこの研究、とても重要な分野ですし、適性もあるように思います。

【アンモニアと石炭の混焼で脱炭素、JERAが歩む「いばらの道」】Bloomberg

 アンモニアを石炭と混ぜて燃やすことで二酸化炭素(CO2)排出削減--。賛否の分かれる取り組みについて、脱炭素達成に向けた選択肢の一つとして挑戦させて欲しい。国内最大の発電事業者JERA(ジェラ)の可児行夫氏はそう訴える。

 4月1日にJERAの会長兼グローバル最高経営責任者(CEO)に就任した可児氏はブルームバーグとのインタビューで、今はエネルギー供給の新たな選択肢を作り込む段階で、風力発電や蓄電池などさまざまな取り組みを行っていると述べた。そのうちの一つとしてアンモニアにも理解を求める。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-04-30/RTPYBMT1UM0W01

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、蒸気機関車の石炭燃焼炉のイラストですね。

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■石炭火力発電の重要性■

どうにも欧米では、石炭火力発電が、地球温暖化の最大の原因と思われている節があり、目の敵にされていますね。確かに 中国の石炭火力発電は、二酸化炭素だけでなく亜硫酸ガスや粉塵など、有害物質をイロイロ撒き散らしていますから。温室効果ガスの約20%は、石炭火力発電所由来ともされています。中国の石炭火力発電所は、その半分を占めるとも。なにしろ、世界の発電量の3分の1は、石炭火力発電所由来だそうですから。こういう批判もあります

ただ、アンモニア混焼にはCO2を大量に排出する石炭火力の延命措置だとする批判も根強い。4月に札幌市で開催された主要7カ国(G7)閣僚会合でもアンモニアなどを巡り協議が難航し、まとめられた共同声明は一部の国が脱炭素に向けて電力部門での利用を検討していることを「留意する」といった弱い表記にとどまった。

しかし、日本の石炭火力発電はその点で、かなり高効率の上にかなりクリーンです。コンバインドサイクル発電という、ボイラー内部で硫黄酸化物を除去する炉内脱硫方式により、排煙脱硫装置が不要となり、発電所をコンパクトにつくることも可能です。さらに、燃料の石炭をガス化して燃焼する石炭ガス化複合発電 (IGCC)によって、最初から硫黄や塩素といった不純物を取り除く形で、さらなるクリーン化が研究されています。

■石炭ガス化複合発電 (IGCC)■

一口に石炭と言っても、炭素含有量 90%以上で最も品質が高い無煙炭から、炭素含有量70%から75%の瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭、亜炭、泥炭と品質は様々ですから。ガス化による不純物の取り除きは、空気吹きと酸素吹きの2種類のガス化方式があり、空気吹き方式はすでに商用炉が稼働し、酸素吹き方式は試験実証中。これは、アンモニアの混焼とも相性がいいですから。段階的なステップは必要ですが、石炭火力発電は絶対ダメというのは、狭量に思います。

可児氏は、発電用を含む幅広い用途でアンモニアを使い、まとまった需要を創出すれば、同燃料の生産や輸送などのバリューチェーン構築にかかる大規模な投資を正当化できると説明。50年以上前に、東電と東京ガスが組んで日本で初めて液化天然ガス(LNG)を輸入したのと同じだと指摘した。

石炭火力発電所延命の思惑が、日本側にゼロだとは思いませんが、一方的に否定するものでもなく。日本の場合は伝統的に化学研究が強く、アンモニア自体の研究や、アンモニア混焼の研究も、石炭火力発電自体の研究も、地道に続けてきた面がありますからね。中国やインドの石炭火力発電所が、コンバインドサイクル発電に置き換わるだけでも、かなりの二酸化酸素の削減になると言われていますし。もう少し柔軟に、G7も対応すべきかと。世界の発電量の30%は、石炭火力発電なのですから。

■水素エンジンとの絡みも■

石炭の液化研究自体は、それこそ自分が小学生の頃からあります。オイルショックによるパニックから、省エネ という言葉が大流行し、それまでの火力発電から様々な発電方法が研究されました。太陽光発電や太陽熱発電、地熱発電などが化学番組でよく取り上げられていました。石炭を液化して石油のように使えないか──という研究も、その流れの中で進んだのですが。商業ベースに載せるためには、思ったよりも ハードルは高く。

ただ、安全性がより高いとされる第四世代の原子炉のひとつ、高温ガス炉ではその名の通り、生まれる超高温を利用して、製鉄ができるほど。これを応用して、石炭の液化に使う研究も進んでいるようですし。脱炭素を推進するのは悪いことではないのですが、石炭火力発電や原子力発電を頭ごなしに否定するのではなく。多様なアプローチによって、意外な解決策が生まれることもあるわけですから。水素を安全に運ぶ物質としての、アンモニアという存在にも、色々と メリットがありますし。

ただ、欧米のEV車推しはTOYOTAへの対抗措置という面もあり。水素エンジンに力を入れるTOYOTAと、石炭液化や人工光合成による蟻酸での水素生成の研究とか、全体が繋がっている面もあります。そういう部分も絡んだ主導権争いの政治的側面も。核融合発電は夢の発電方法ではありますが、たとえそれが実現しても水力発電や 火力発電は相変わらず主要な発電方法であり続けるでしょうし。多面的アプローチが大事かと。

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