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儲からない本屋の岐路

◉朝日新聞に、書店が儲からない仕組みと同転換するかについて、フリーライターの永江朗氏の記事が出ていました。有料期になので、最後までは読めませんが、割と重要なポイントは、無料部分で読めますので。

【「書店は儲からない」を変える仕組みは 岐路に立つ独立系と大手連合】朝日新聞

 書店の減少で、近所で本を買えない地域も増えています。利益が出にくい現状の書店ビジネスの問題点とその打開策は。出版流通に詳しいフリーライターの永江朗さんに聞きました。
(中略)
 現在の出版流通の仕組みは、書店が利益を出しにくいものです。新刊は1日平均200点も出るので、多くの書店が、配本を担う出版取次会社に仕入れる本の選定も頼っています。しかし取次は、規模や立地に応じて機械的に選んだ本を送るので、各店の客層に合わない本も多い。その結果、平均で雑誌40%、書籍30%ほどが返品されます。60冊を売るために100冊を動かすという、一般的な産業ではあり得ない無駄が起きているのです。無料で返品できる委託販売制度を利用する書店が多いですが、リスクを負わない分、取り分は価格の2割ほどと少ない。日本には、紙の書籍は定価販売するという再販制度があり、戦略的な値引きもできません。

https://www.asahi.com/articles/ASRBR43HLRBRUPQJ007.html

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、

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■再販売価格維持とは■

再販制度、あるいは再販売価格維持は、出版業界の重要な要。再販売価格維持自体は、自由で公正な競争を阻害するとして、多くの国では独占禁止法で原則禁止しています。市場価格というのは、需要と供給のバランスに基づいて価格形成が起きるというのが、古典経済学からの原則。それをを妨げ、消費者の利益を損なうため、原則禁止は当然です。ただ、国家が経済を統制する社会主義国や、戦時下などで流通に優先順位が起きるようなときには、例外的に認められます。

例外的に、一部の商品に関しては一定要件を満たした上で、再販売価格維持を容認している場合がありまして、これを再販制度と通称します。新聞・出版業界はこの例外の対象でして、全国で一律の価格で販売しています。その場合、書店で本が売れなかった場合、出版社は取次会社を介して出版社日本を送り返すだけでよく、売れなくても損はしません。コレがアメリカだと、売れると思った本は書店が買い取って販売するという、八百屋や魚屋と同じ扱いです。

「無料で返品できる委託販売制度を利用する書店が多いですが、リスクを負わない分、取り分は価格の2割ほどと少ない。」というのは、そういう部分を指しています。リスクが低いのですから、リターンも低い。ローリスク・ローリターンは当たり前で、リターンを高めるにはリスクを取らないといけないのは、どの業界も同じです。版元の出版社・流通を担う取次会社・小売の書店の三位一体は、そうやって持ちつ持たれつの部分があり。取次会社の大株主でもある大手出版社にとって、自社の本をゴリ押しできる、都合の良い制度の面もありました。

■電子書籍の流通革命■

ただ、コレにはメリットもあり。本の多様性が保証されるんですよね。書店が買い取りだと、売れない本を置きたくないと、出版点数は増えないんですよね。そういう意味では、文化の多様性という点では、貢献してきたのも事実です。自分も、昔はその点を高く評価していたのですが。電子書籍の時代になって、再販制度自体が無意味になったなと。電子書籍なら、東京都の千代田区で購入しようが、離島の浜辺で購入しようが、富士山の山頂で購入しようが、輸送費がかからないので、同じ値段で購入しても、むしろ版元には利益率が高いんですよね。

そして、電子書籍の大幅割引によって、流通が止まっていた作品が、また雁と売れる。KADOKAWAとか、年がら年中セールをやってる感じですが。10年20年前の作品とか、動かなくなっていたのが、50%オフとかで、また売上ランキングに入る。再販制度のメリットよりもデメリットが、ハッキリ見えてしまった部分ですね。もちろん、プリント・オン・デマンド版とかは、容易に値段を下げられませんが。在庫のための巨大な倉庫も必要なく、電子礎石は世界を変えるでしょうね。紙の本が好きすぎる、出版社の重役は、理解していない面もありますが。

そういう意味では、自分は書店はもう映画館と同じで、都会の贅沢品になるのだろうと思っています。人口1万人に1件ぐらいの中型書店が、都会では当たり前ですから。書店の危機とか言ってる人は、地方の貧弱な書店の数と、もっと貧弱な品揃えなんか、見ていませんから。そんなものを救う義理もないでしょうし。自分は、都会の書店は大型店や郊外店などで生き残り、地方はもう池袋ジュンク堂の1階レベルの売り場面積があれば御の字と思っています。紙の本のファンも、Amazonなどのネット通販にシフトするでしょう。

■本屋は地方から消滅■

でも、最終的には多くの本は、電子書籍・POD版・愛蔵版の3種類に修練されていくと思います。このまま行けば、紙の本は本屋で購入するのではなく、コンビニでデータをダウンロードしてPOD版で購入する時代が、来るでしょう。MANZEMIの出版部門である春由舎では、実験的にAmazonの電子書籍で、POD版の販売も始めていますが。東京でデータをアップすると、アメリカやドイツで購入する人間がいるんですから。もう、この便利さには勝てないでしょう。今はまだ、各国の地元の印刷会社で製本していますが、将来的にはペーパーバックはコンビニの特殊プリンターで出力するでしょう。

あるいは、その前の段階ではAmazonが各地の印刷所に、印刷を委託して販売する形式になるでしょう。いずれにしろ、もうそうやってBtoCで流通が確立されれば、その流通拠点は本屋である必要は、ほとんどなくなります。それは、取次会社も同じです。出版社は畢竟、自社が儲かればいいのであって、その流れは止められないと思います。都会の専門店なら生き残るでしょうけれども。地方の小さな店舗で、取次にお任せの怠惰な書店は、駄目でしょうね。本との意外な出会いの場は、図書館に役割がシフトするでしょう。

たぶんその結果、100万部や200万部売れるようなメガヒットは出なくなり。でも、1万部も売れれば作家は印税70%で、年に1冊か2冊出せば充分暮らせる、フランスのバンド・デシネの作家みたいになるでしょう。出版社も、大きな出版社は海外同時翻訳とかアニメ化のために自社でアニメ制作スタジオを抱えたり。弱小出版社は、フットワークの良さを活かしてニッチなジャンルを攻めていく。それで、作家の数や出版点数が増え、生活ができることが、文化の豊かさであって、出版社や書店が儲かって作家が貧乏するような、そんな時代は終わって欲しいです。

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