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五街道雲助師匠が人間国宝に

◉柳家小さん・桂米朝・柳家小三治師匠に続く、4人目の人間国宝です。本格本寸法の落語家ということで、納得の人選。落語会は祝賀ムード一色ですね。年齢は75歳。明治大学を中退して、金原亭馬生師匠に入門されたのが1968年ですから、芸歴は55年。五街道雲助という名前自体は、江戸時代の駕籠かきを雲助と呼んだためで、五海堂雲輔や五海道雲輔の名前で、過去に4人いるのですが、六代目と自称。まぁ、落語家の代数は、意外と適当ですからね。人気がないと代数に入れませんし、末広がりで縁起が良いと、桂文楽は八代目を自称していましたし。個人的な雑感を、ダラダラ書きますね。

【人間国宝に五街道雲助さんら12人 落語4人目、中村歌六氏も】産経新聞

 文化審議会は21日、重要無形文化財の保持者(人間国宝)に古典落語の五街道雲助さん(75)や歌舞伎脇役の中村歌六さん(72)、人形浄瑠璃文楽人形の吉田玉男さん(69)ら12人を認定するよう永岡桂子文部科学相に答申した。近く答申通り告示され、人間国宝は計109人となる。

 古典落語の人間国宝認定は雲助さんが4人目。柳家小三治さんが令和3年に死去してからは、保持者が不在となっていた。今回の認定に併せ、古典落語は重要無形文化財に改めて指定される。

https://www.sankei.com/article/20230721-64M3KUFWVZLXJH5YUN6EB5Z5IA/

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、

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■古今亭系初の人間国宝■

古今亭系としては、初の人間国宝。落語家の系譜としては、長らく三遊亭系と柳屋系が人気を二分してきたのですが。六代目三遊亭圓生が落語協会分裂騒動を起こしてから、三遊亭系はすっかり凋落した部分があります。いや、単純に数だけなら、三遊亭円楽師匠の一門が、ものすごく人材育成に力を入れているんですが。落語協会という、最大団体で力を失ったのは事実。昭和の名人・古今亭志ん生によって一気に勢力を伸ばした古今亭系ですが、もし仙台の金原亭馬生師匠や古今亭志ん朝師性が長生きされていたら、間違いなく人間国宝だったでしょう。そういう意味では、古今亭系悲願の人間国宝。

三遊亭系は六代目圓生の直弟子として、三遊亭圓彌師匠とか三遊亭圓窓師匠など、本格派がいらっしゃいましたが、もう鬼籍に入られ。新作派の圓丈師匠とか、個人的には好きな落語家でしたが。もう、直弟子はほとんど鬼籍に入られて。破門された川柳川柳師匠も2021年に大往生。そういえば、川柳川柳師匠をフューチャーした川柳まつりでは、五街道雲助師匠がジャズ息子を、古今亭右朝師匠がガーコンを演じられていましたね。右蝶師匠も長生きされたら、名人の仲間入りだったでしょう。円楽一門も、どうなんですかね。よくわかりませんが、人間国宝を目指せるタイプが居るのか。

■上方落語協会の今後■

そう言えば上方落語協会は、三代目桂春團治師匠を人間国宝に、という運動をされていましたね。残念ながら、春團治師匠は2016年に亡くなられたのですが。こちらは、もうプロの芸人が金を払ってでも見たい至芸と、絶賛されておられましたからね。立川談之助師匠とか。上方落語はその後、笑福亭仁鶴師匠も亡くなりましたし。人間国宝に推せる候補が、ちょっと不足している感じでしょうか。桂文枝師匠は、女性スキャンダルがありましたし。ベテランの桂ざこば師匠や笑福亭鶴光師匠は、人間国宝って感じではないですからね。

笑福亭松喬師匠や桂吉朝師匠が御存命なら、悩むことはなかったのでしょうけれど。特に、桂吉朝師匠は古典落語の本格派として、誰もが認める存在でしたから。早世が惜しまれますね。個人的には、あんがい桂米團治師匠、アホボンとか下手とか言われますが、あの清潔感は70歳の坂を越えたら、いい感じになる気がするんですけどね。それは、林家正蔵師匠もそうですが。年齢的には桂福団治師匠か四代目の桂春團治師匠か、いずれにしろ上方落語のためにも、5人目は上方から出てほしいですね。上方落語協会全体で、推して行く必要はあるでしょうけれど。

というか、上方落語は四天王の直弟子世代は、このままでは上方落語が滅びるって危機感を共有していて、仁鶴・枝雀・三枝・鶴光・釣瓶・さんまと、全国区の人気者を輩出しましたが。孫弟子世代は枝雀一門はともかく、関西の仕事で充分食える成果、全国区の人気者が少ないですね。『ちりとてちん』で名を売った桂吉弥師匠ぐらいしか、一般の主婦も知ってるレベルの孫弟子世代がいないような。文枝師匠が三枝時代、天神天満繁昌亭の設立をにらみ、上野鈴本演芸場に主任として出たときには、チケットは完売で行列ができましたからね。そういうレベルのスターがいないと、やはり興行の世界は先細ってしまうので。

■大衆芸能の部分を■

さて、東京の方は、たぶん次の人間国宝は、春風亭小朝師匠とか柳亭市馬会長とか、人気実力ともにある候補はかなりいますし。春風亭一之輔師匠とか、将来的にはそうなるでしょうし。その意味では、古典落語は権威化しやすい面と、親和性がありますからね。もっとも、柳家小さん師匠が人間国宝になったとき、寄席でお弟子さんが「これが焼き物とかの人間国宝なら、作品の値段が丸が一個増えるんですが、落語家だと独演会のチケットを10倍にも出来ず」と、ギャグにしていましたね。自分などは落語が、大衆芸能としての部分を、なくさないでほしいなと思います。

新作派の三遊亭圓丈師匠とかが人間国宝になれば、活性化されたでしょうけれど。弟子の白鳥師匠に期待。春風亭昇太師匠は……人間国宝というタイプではないでしょうしね。でも、だからこそ昇太師匠には昇太師匠の価値がある、ということで。能にしろ歌舞伎にしろ、権威化することで生き残った部分もあり、そこは否定しません。でも、落語は100年後も、活きた芸であってほしいと思いますし、一部好事家のものであってはいけないと思いますしね。それは、映画にしろ音楽にしろ、同じなんですが。三味線とかも、若手が出てきて現代に訴求していますし。

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