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アニメ産業は農業を超えた

◉一般社団法人日本動画協会の『アニメ産業レポート2023』によると、アニメ産業市場は、2兆9277億円。ほぼ3兆円ですね。この内、海外市場は1兆4592億円と、49.84%を占めます。これは、2022年の農林水産物・食品の輸出額の1兆4148億円と比較しても、数百億円ですが上回っています。もちろん、日本国内の農業総産出額は8.9兆円と、全体で見るとまだまだ大きい分野です。ちなみに農産物の、輸入額は7兆374億5626万円と、これまた大きいです。アニメーションなんてと、軽く見る人がいますが、でも農業なんかいらないといえば、多くの人が反発するでしょう。

【「アニメ産業レポート2023」売上を伸ばすアニメ映画― 今後のヒット作、海外市場の広がりは?【藤津亮太のアニメの門V 第103回】】アニメ!アニメ!

昨年12月に『アニメ産業レポート2023』が刊行された。

あらためて紹介するとこのレポートは「アニメ産業の調査及び統計・分析を行っており、調査結果を内外に広く発信することを目的」(日本動画協会公式サイトより)に、2009年から刊行されている、日本のアニメ産業に関する統計である。逆にいうと、2009年までは、アニメ業界内で調査を行う産業統計が存在しなかったのである。だから、このレポートは現在もアニメ業界の産業面を知るための、もっとも基本的なデータとして非常に重要な役割を担っている。

https://animeanime.jp/article/2024/02/10/82782.html

ヘッダーはMANZEMIのロゴより、平田弘史先生の揮毫です。

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■多様性がビジネス■

単純にビジネスとして考えた場合、アニメーションは成長産業であり、もっとここを育てて、5兆円10兆円産業に伸ばしていく必要があります。その場合、国が余計な口出しをせず、クールジャパン戦略のように秋元康氏のような人間を引き込まず、自由度を高くすることに専念すべきで。それは、アニメ・漫画・小説・ゲームといった、他の表現分野を含めての、表現の自由を守ること。また、出版社が文化事業として税制的に優遇されるなら、それは個人事業主たる作家やアニメ制作会社などにも、適用されるべきでしょう。

【日本のアニメは売り上げの約5割が「海外」で前年比11%増】日経トレンド

日本エンタ拡大の中心に位置する「アニメ」。2014年から増加を続ける「配信」が、20~21年に新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要でブーストがかかり成長を後押し。直近のデータで「海外」は前年比11%増。エンタテインメント企業の海外進出も活発化するなか、「ゲーム」と「リアル」が今後のカギとなりそうだ。

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00930/00004/

考えようによっては、他国が日本に表現規制を求めるのは、日本のコンテンツビジネス潰しみたいな部分がありませんかね? 捕鯨を禁止すれば、我が国の牛肉を輸入するだろう、みたいな? 日本の自由な表現の場があるからこそ、キリスト教文化圏ともイスラム教文化圏とも異なる、第三の表現文化圏足り得るわけで。一神教はどうしても、自分たちの価値観で世界を塗りつぶしたがる傾向がありますが。多様性があるからこそ、キリスト教文化圏ともイスラム教文化圏とも馴染めない人の、救いになるのです。ラフカディオ・ハーンが、日本文化に安らぎを感じたように。

■現場に金が来ない■

アニメ映画興行収入は785億円と、なるほど『セクシー田中さん』問題で、主要映画会社のトップが、原作者尊重のコメントを出すのは当然ですね。またアニメ産業市場全体では、アニメ関連のライブやイベント、展覧会などで、972億円と、けっこうな数字が出ています。前年比170.2%と大幅な伸びを見せ、こういう部分も成長産業として、可能性を感じさせます。マネタイズの方法論が広がるのは、業界にはプラスです。しかし同時に、こんな指摘もあります。2兆9277億円の売上がありながら、制作会社に入るのはわずかしかありません。

【アニメ制作市場、3年ぶりに回復 「動画配信」が追い風、版権収入がカギに 日本アニメ、海外に活路 3社に1社が「海外取引」】PR.TIMES

2022年(1~12月期決算)におけるアニメ制作業界の市場規模(事業者売上高ベース)は、前年(2475億4400万円)を4.9%上回る2597億9000万円となった。2年連続で減少が続いた21年から一転して、3年ぶりに市場が回復した。アニメ制作市場は2011年以降、制作元請を中心に制作本数の増加や配信料などライセンス収入の増加に支えられ、19年まで9年連続で拡大していたが、20-21年はコロナ禍による制作・公開スケジュールの遅延などで納品が翌期へずれ込むといった影響を受け、前年比で減少が続いた。22年も引き続き制作本数はコロナ前に比べて減少したケースが多かったものの、23年以降に公開される大型の劇場版映画やアニメ作品などの制作案件が増加したことで、制作市場全体でも持ち直しの動きが広がった。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000716.000043465.html

2022年のアニメ制作業界の市場規模(事業者売上高ベース)は、前年の2475億4400万円を4.9%上回る2597億9000万円とのこと。つまり8.87%にすぎません。なんですか、この新人漫画家の印税率のような数字は……。漫画家はまだ、原稿料もあれば専属契約もありますが、全部の売上げでこれって、どれだけ上前をはねられているんだって話です。TBSラジオ批判のnoteでも書きましたが、これでは女郎の上前をはねる置屋と、何が違うのか? 産業構造として、イビツですね。

■今後の課題は人材■

自分は、若手アニメーターの低賃金批判報道については、疑問を持っています。スポーツ選手と同じく、才能の世界ですから。才能がない人間に、払うお金はないんです。ただ、才能ある人間には、ちゃんと払うべきだと思います。普通に、一流のアニメーターならスポーツ選手並みとは言いませんが、良い収入になって欲しいんですよね。

その意味では、手塚治虫先生の虫プロは、実際は東映動画より遥かに良い年収でスカウトし、しかも東映動画のような大卒か高卒かの学歴による差別もなく。宮崎駿監督が、虫プロがアニメ界の貧乏体質を作り上げたかのように責任転嫁していましたが。たぶん、東映動画世代のベテランが去ることでようやく、アニメ業界の体質は改善されるのではないか……と思います。アニメ制作会社も、社員の自社育成と内製化を強め、変化の兆しはあります。

好きなアニメを作っていられれば、それだけで幸せという状況から、もうちょっとビジネスとしてちゃんと考えていかないとダメですしね。ヒット作が出たら、京都アニメーションのような出版部門を社内に立ち上げ、そこからきちんと版権ビジネスでまともな収入を確保し、社員の福利厚生や新作への原資とするような、ある意味で官僚的な有能さを持った事務方のスタッフが必要なのでしょう。

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