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DMMがアニメ制作会社設立

◉DMM TVで動画配信に参入するなど、動きが活発なDMMですが。アニメ制作会社を設立するとのこと。しかも代表取締役社長には、アニメ業界的には評価が高いProduction I.Gの元執行役員・制作部長だった、黒木類氏が就任ということで、かなり本気ですね。この流れ自体は、Amazon Prime VideoやNetflixなど先行する動画配信サービスが、独自コンテンツの制作と配信に力を入れているので、ある程度は予想できたんですが。まさか、自社の傘下にアニメ制作会社を入れるとは、思い切った手を打ってきましたね。もちろんリスクはありますが、当たるとリターンは大きいですから。

【DMMがアニメ制作会社設立。社長に元Production I.Gの黒木類氏】AV WAtch

DMM.comは、アニメーション制作の新会社「CUE」(キュー)を設立したことを発表。代表取締役社長にはProduction I.G 元執行役員・制作部長の黒木類氏が就任した。

DMMでは2017年よりアニメーションレーベル「DMM pictures」として、アニメーション作品の企画開発や、ライセンスビジネス、製作委員会への参画を行なっていたが、「昨今の世界的なアニメ人気の高まりを受け、より高品質なアニメを提供できる環境を追求し、この度のアニメーション制作会社設立に至った」という。

https://av.watch.impress.co.jp/docs/news/1489736.html

ヘッダーはCUEのロゴより、元サイトからの引用です。

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■リスクとリターン■

元GAINAX社長の岡田斗司夫氏が、Netflixのアニメ制作は失敗する旨を、早くから予言されていました。それは主に契約の問題で、アメリカの会社であるNetflixは、アメリカ方式の契約を日本のアニメ制作会社に押し付けるからだと。確かに制作資金は潤沢ですが、作品がヒットしたら権利は全部Netflixが持っていくので、制作会社的には美味しくない契約。なので、ヒットする確率が高いとっておきの企画は、Netflixではやらず。微妙な企画ばかり出すと。そりゃそうでしょうね、ひょっとして大ヒットするかもしれないイチかバチかの企画さえ、できればNetflixには渡したくはないでしょう。

全くの新会社や、新人監督やスタッフで、チャンスが欲しいなら、Netflixのそういう不利な契約にの応じるかも知れません。でもNetflixがほしいのは、著名なアニメ制作会社のブランド力や、著名なアニメ監督の才能であって、そんな未知の才能にリスクを背負って投資なんかしたくないでしょう。それこそ、無名時代の庵野秀明監督に、億単位の金を出すバンダイのような勇気があるのかって話です。たぶん、ない。またそういう隠れた才能を見抜く、目利きがいるわけでもない。権利でガチガチに縛って、楽して稼ぎたいわけですよ、アメリカン・スタイルで。

■まだ動かぬ出版社■

ここらへんのNetflixの商法は、出版業界の事情に疎いIT系の会社が、安易にWeb出版に進出して、いろんな出版社を渡り歩く業界ゴロのような編集者をかき集めて、著作権法を無視した契約書で作家とトラブルを起こす姿に、実は似ています。しかしDMMは、権利だけかすめ取るのではなく、自前でスタッフを揃えて雇用し、子会社として責任を持つスタイルのようです。ここらへんに、DMMの本気度を感じますね。もしも、覇権アニメ級の作品が一本でも出たら、会社としての儲けは莫大でしょうね。そこまで数年間を耐えるだけの、資本的な体力もあるので。

自分は今後、作家の個人出版社設立が増えるだろうから、出版社は資本が必要で高付加価値のアニメスタジオを傘下に持ち、自社の作品のアニメ化のクオリティコントロールをするかも……と以前、予想したんですけれども。AmazonのKindleで、出版社の連載を経ずしてヒット作家が出てくるようになり。さらにプリント・オン・デマンド(POD)サービスが始まり、それまで本の流通を握っていた出版社・取次会社・書店の三位一体が、大きく崩れました。流通を握られていたがゆえに、作家は印税率10%を呑まされ続けていたわけですが、そこが崩れた訳です。それどころか、パソコン一つで作った本が、世界中で印刷版として売れる。これは大きいです。

そして、コンテンツの流通を握っているDMMの方が、出版社よりも先に動きました。地上波のテレビに頼らずとも、アニメのヒット作品が出せるようになった現在、 この選択肢は必然ではあります。キラーコンテンツ獲得のためにも必要ですから。しかもDMMは、AmazonやNetflixの失敗に学んで、本気で動いた感じですね。こういう地産地消の流れは、止まらないだろうなと思います。Appleとかも参入するでしょうし。日本のテレビ界や映画界は、もうちょっと危機感を持った方がいいでしょうね。そうでないと将来的には、こういう配信会社の下請けになるでしょう。

■映画界の共産趣味■

ところで日本にアニメ界は、ある種の共産主義があるんですよね。例えば、声優のギャランティはランク制度によって、決まっているんですよね。人気や実力ではなく、キャリアとかで決まってしまう。また、アニメーターは書いた絵の内容ではなく、枚数でギャランティが決められるわけです。でも、例えば自分が書いた動画1枚と安彦良和先生が書いた1枚が、同じ値段のはずがないんですよね。けっきょく、そういう平等主義が貧乏体質の根本部分にあるわけで。同じ個人事業主である漫画家やスポーツ選手が、実力に見合った額をもらえるのに対して、そういう横並びがあります。

でも、そこを改めずに「日本版CNC設立を!」なんて、そんなの金の配分で権力が生まれるのは確実です。正に共産党の民主集中制モドキを、映画界はやりたいのでしょうか? もし、DMMがちゃんとアニメーターの社員の給料を保証し、でもきちんとしたクオリティコントロールができたら、そこはアニメ界の革命になるでしょうね。京都アニメーションも、かなりホワイトな職場と言われましすが。そういう職場がもっと増えたら、スタジオ・ジブリで高畑勲監督や宮崎駿監督がやりたかった共産趣味(主義ではない)を、資本主義の権化でエロでのし上がったDMMが実現する。極めて興味深い事例になるでしょう。

DMMがこのパターンで成功したら、それこそ出版社もアニメ制作会社を持つでしょうし、場合によっては作家も自社で持つかも知れませんね。そういえば、KADOKAWAは株式会社ENGIを持っていますね。『宇崎ちゃんは遊びたい!』もヒットしましたし。それこそ自社コンテンツを確保したいなら、まずは100万円×10本ぐらいの懸賞で小説を集め、売れた作家は専属契約か作家契約で囲ってもいいでしょうし。以前にも書きましたが、京都アニメーションやP.A.WARKSは出版部門を持ち、独自コンテンツの小説も販売しています。この流れは今後、アニメ制作会社に広がるでしょう。

逆に、ヒット作を持つアニメ制作スタジオは、それをキラーコンテンツとして、出版社として自前で出せば、ジブリと徳間書店以上に利益が大きな関係になれるでしょうから。その際には、是非自分を編集長として雇ってください(笑)。冗談はともかく、出版社って今は簡単に作れますし、むしろ難易度的にはアニメ制作会社のほうが難易度は高いので。アニメ制作会社の出版社化は、広がりそうですけどね。そうなったとき、漫画や小説が作品の種として大切にされ、作家がちゃんと才能に見合った待遇をされることを、切に願います。

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