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安倍晋三元総理と狂人理論

◉元朝日新聞の北京特派員でもあった峯村健司氏による、安倍晋三元総理大臣の、対中外交戦略についての記事です。朝日新聞と安倍晋三元総理と言えば、「珊瑚を大切に」の皮肉ツイートが度々出されたように、不倶戴天の敵にように思われますが。有能な記者には積極的に声をかけ、アドバイスを求めていたんですね。ここらへんが、敵の敵は味方の党派性丸出しの左派とは異なる、ボンボンゆえの受けの強さというか、懐の深さなんでしょう。

【安倍晋三元首相が中国を翻弄した秘策「狂人理論」 「中国が最も恐れた政治家」が使ったアメとムチ】東洋経済オンライン

安倍晋三元首相の突然の死により、その外交手腕があらためて注目されている。これから「安倍外交」はさまざまな角度から検証されることになるだろう。しかし、今後の日本外交についてどういう戦略を持っていたかを本人が語る機会はもうない。安倍氏に外交・安全保障について定期的にレクチャーしてきた識者に、日本外交の最大の課題である対中関係にフォーカスして安倍氏の外交構想を描き出してもらった。

https://toyokeizai.net/articles/-/606101

ヘッダーは魯迅の『狂人日記』の青空文庫版表紙より。中国と狂人と言えば、これを思い出すのは仕方ないでしょう。

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■狂人理論とは何か?■

のっけから『愛人村』とか『妊婦村』とか、ギョッとする言葉が並びますが。中国の実態を知っていると、わりと耳にする言葉ですね。共産党一党独裁体制を敷きながら、内実は西側の文明に憧れ、子女を海外留学させて保険にする。ここらへんは、北朝鮮も同じですが。さて、表題の狂人理論とは、リチャード・ニクソン大統領が駆使した外交戦略理論で、Wikipediaに説明がありましたので、以下に引用しておきます。

狂人理論(きょうじんりろん)あるいはマッドマン・セオリー(英: madman theory)とは、アメリカ合衆国第37代大統領リチャード・ニクソンの外交政策の要として広く知られる理論あるいは戦略である。ニクソンおよびニクソン政権は、東側諸国の指導者たちに大統領が非合理的で気まぐれだと思わせることに腐心した[1]。ターゲットとした国家に挑発行為をやめさせ交渉の場につかせるために、アメリカがとる行動が予測不可能であると思わせるのがこの理論の骨子である。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8B%82%E4%BA%BA%E7%90%86%E8%AB%96

ニクソン元大統領というと、何かと悪評がつきまといますね。ウォーターゲート事件で失脚し、いろんな陰謀論の黒幕のような扱いですが。ところが小西克哉さんに言わせると、国際政治学のばでは、とても評価が高い。実際、レーガン政権に裏でアドバイスして、ソビエト連邦を戦わずして崩壊に追い込むなど、孫子の兵法の理想を実現していますから。そこで用いたのが、相手を交渉の場につかせる狂人理論。

■ニクソン外交と安倍政権■

これに対する批判はありますが。狂人理論がわかれば、トランプ大統領の奇矯に見えた言動も、理解ができます。タカ派で危険な男というイメージとは逆に、韓国の騙し討ちによる北朝鮮との会談でも、いちおうは応じていますからね。けっきょく、国際政治の交渉に必要なのは、ヤクザの力の論理に近いものが必要で。いざとなったら実力行使に出るぞという、危険な香りが有形無形の影響を保つわけで。その上で、情報を駆使して相手を説得する。かなりの名人芸ですが。

安倍晋三元総理の外交ブレーンの一人が、北岡伸一氏なのですが。北岡氏は、大平内閣や中曽根内閣のブレーンだった佐藤誠三郎東大教授の門下生。佐藤教授自体が、ニクソン・キッシンジャーの外交戦略の影響を受けていますから。そういう意味では、対中強硬派でありながら、実際は第一次安倍政権でも第二次安倍政権でも、対中関係は悪くなかった理由が、見えてきます。むしろ、媚中派でさえあった民主党政権のほうが、尖閣諸島国有化で関係悪化しましたし。

■狂人のフリと真の狂人■

日本の場合、極左も極右も極端なことを言って、潔癖症かと思うことがしばしばあります。自分は保守派ですが、日韓断交と言ってる連中を見てると、バカジャネーノとしか思わないです。いやだって、日本は台湾と国交断絶していますが、普通に友好な関係です。国交断交という意味では、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)とも断交していますが、だからと言って朝鮮総連を解散させたり、朝鮮籍の人間を国外追放してるわけでもなく。断交に夢見過ぎで、現実を見ていないんですから。

断交という言葉に、なにか過剰なイメージや夢を見ているという点では、「忖度」とか「ズブズブの関係」とかに過剰な意味を持たせている左派と、同じ穴のムジナ。けっきょく、文学青年崩れのようなナイーブな言葉遣いをして、そこに過剰なお思い入れをしているという点で、こちら葛飾区亀有公園前派出所に出てきた、三流出版社の編集者と社長に似ています。安倍晋三元総理は、ただの現実主義者ですから。どっちかと言えば、戦後民主主義に思い入れがある点で、左派に近い面も。

■演戯する政治家■

狂人という言葉を出すと、「狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり。悪人の真似とて人を殺さば、即ち悪人なり」という、兼好法師の『徒然草』第八十五段の言葉を、得意げに言ってくる人がいますが。いやあの、わたしゃこれでも日本文学科卒ですので。釈迦に説法マンほど、不愉快なものはありません。狂人と書けば、そりゃあイメージ的には精神に異常をきたした人と、同一視しがちですが。どっちかと言えば傾奇者、あるいは異装・異風・男伊達を気取り無頼な行動をとる旗本奴みたいなものでしょうか。

1953年の時点で、「平和論の進め方についての疑問」を発表し、進歩的文化人の欺瞞や偽善を指摘した福田恆存ですが。『人間、この劇的なもの』では、人間蓮のままで生きられない、多かれ少なから自分の理想像に近いものを、演じていると。現実の生活とはべつの次元に意識の生活があるとも。ゆえに人生を輝かしく生きるには「演技」でなく「演戯」が必要だとも語っていますね。であるならば、安倍晋三元総理は、演戯理論を実行したと言えば、言葉遊びが好きな釈迦に説法マンもだまりますかね?

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