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カリスマ経営者の時代の終焉

◉カリスマ型の経営者───思いつくのはAppleのスティーブ・ジョブズやAmazonのジェフ・ベゾス、あるいはFacebookのマーク・ザッカーバーグやテスラ・モーターズのイーロン・マスクなどがそうでしょうけれど。でも自分、ここにGoogleの創業者であるラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンが入ってこないので、そもそもカリスマ型の経営者って、必須かなと思っています。ビル・ゲイツMicrosoft会長も、カリスマ型かと言えば疑問ですし。

【ジョブズにベゾス…。「カリスマ経営者」の時代は終わった】ライフハッカー

多くの人は、スティーブ・ジョブズ、イーロン・マスク、ジェフ・ベゾスのような人物は唯一無二の逸材だと思っています。
それは、彼らが、類まれな先見性と高いエネルギーを兼ね備えた稀有な存在だからです。
しかし実際には、「唯一無二の天才」という概念は間違った思い込みに過ぎません。
彼らの強さは、単独の源泉から生まれたものではなく、集団的知性の力によって発展し、花開いたのです。

ある意味、カリスマ型の経営者をライターや評論家が語るのって、キャラクター主義のマンガのように、あるいは紀伝体の史書のように、読者には解りやすくはあるんですけどね。歴史と絡めて、話してみますかね。

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■カリスマと後継者■

日本だと、徳川家康はあまりカリスマ型の経営者というイメージは薄いですね。織田信長や豊臣秀吉のイメージのほうが、独断専行のリーダーのそれに合致していて、家康は織田信長の手法や武田信玄の手法を謙虚に学んで取り入れた律儀者のイメージが強く、カリスマ型の経営者とはとても言えませんが。実際は、戦国最強の不敗の武田軍に無茶な戦を仕掛けたり、秀吉にも負けていませんからね。

野戦では最強の評価は、関ヶ原以前から確立していますし。三河以来の家臣団を率いるカリスマ性は、充分にあった訳で。だからこそ、自分の後の政治はカリスマ性に頼らなくて良い、合議制のシステムを構築した部分があります。これは、一代のカリスマ型経営者の豊臣秀吉が晩年、慌てて官僚制度を整えようとして石田三成らの文治派と、加藤清正ら武断派との対立を招いたのも大きいでしょう。

■後継者と源平興亡史■

なので自分の後継者には、人望があった結城秀康でもなく、戦上手な松平忠吉でもなく。律儀だが戦は下手な調整型の秀忠を指名したわけで。徳川家康は鎌倉幕府の史書である吾妻鏡を愛読し、平家がなぜ滅びたのか、さらに源頼朝の源氏政権がわずか三代で潰えたのか、かなり研究していたでしょうから。これは、優れた後継者であった嫡男の信康を既に失っていたのも、大きかったかもです。

下手に頼朝や義経に情けをかけた平清盛の平家政権は滅びたわけで。ゆえに、大坂夏の陣の後の豊臣政権にも容赦はしなかったわけ(ただし天皇に賜った豊臣の家名は潰していない)。また、平清盛が長男(正室の長子ではない)の平重盛を逆縁で失って、三男の宗盛が後継者になったように、後継者選定の重要性は感じていたでしょう。自分自身が有能な後継者を失ったこと、有能ではなかった源義朝が三男の頼朝を早くに指名し次世代に賭けたのも、参考になったでしょう。

■カリスマ型経営者の危うさ■

さて、鎌倉幕府の源氏は三代で絶え、その後は北条氏が実権を握りますが、そこは合議制の政体を構築したわけで。後には、得宗専制政治の弊害も出たように、日本はカリスマ型の独断専行タイプは、一時期は善くても長くは続かない傾向があります。天智天皇の昔から、平清盛・源頼朝・足利義満・足利義教・織田信長・大久保利通などなど、独裁型は破滅や暗殺が多いです。なので、関ヶ原以前から大坂の陣まで、江戸幕府の組織作りに奔走した家康。

だいたい、ジョブズのようなカリスマ型は、能力があれば抜擢してくれますが、能力が落ちれば即馘首で、部下は緊張とストレスが酷いです。そうなると、明智光秀のような反逆も呼び込むし。そういう意味では、カリスマ型経営者による120点の経営より、凡庸な経営者でも51点以上が取れる組織作りが大事なんですよね。ホンダの藤沢武夫氏が、カリスマ型経営者の本田宗一郎の次に来るトップが、カリスマ型でなくても良いように、腐心したように。

歴史はただの暗記教科ではなく、生きた学問───人間学だと、自分は思います。


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