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可視光を紫外線に変換する個体膜を東工大が開発


◉エネルギー関連のネタですが、新たな話題ですので単独でnoteに。今後、何度か言及する可能性が高いですからね。太陽光線は、いろんな光が含まれているのですが。赤外線と紫外線は人類の目では認識できないのですが、私たちが認識できる可視光──プリズムで分解できる赤橙黄緑青藍紫──を、紫外線に変更できる特殊な膜を、東京工業大学が開発したと。そしてこれが人工光合成にも応用できるかもしれない研究のようです。

【可視光を固体膜で紫外光に変換 東工大、人工光合成に】日経新聞

東京工業大学の村上陽一教授らは太陽光に含まれる程度の弱い可視光を効率よく紫外光に変える固体材料を開発した。水からの水素製造や二酸化炭素(CO2)から有用な化学品をつくる人工光合成に応用できる可能性がある。変換効率は4%程度だが、2年以内に3倍に高めることを目指す。

波長の長い光を短い光に変える「フォトン・アップコンバージョン」と呼ぶ機能を備える新材料を開発した。光を吸収する有機化合物と発光する有機化合物を新規開発の装置で溶かし固め、直径8ミリ、厚さ0.2ミリの膜を作った。装置の両端に温度差をつける工夫により、2種類の材料がきれいに混ざった高品質な膜ができるという。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC089GV0Y3A200C2000000/

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、木漏れ日の写真です。

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■なぜ紫外線に変換?■

太陽光を受けて、色素の漂泊に使えたり水を電気分解する化学反応をする素材を、光触媒と呼びます。光触媒として知られる酸化チタンなど、高機能な素材は紫外線だけを吸収して反応するものが多いようで。可視光をいったん紫外線に変換する個体膜というのは、これまで利用できなかった太陽光を利用できるということですから。これは大きいですね。人工光合成においても、応用できるのでしょう。日本はこのような素材研究は、まだまだ世界トップクラスなんですね。

現時点で変換効率は4%のようですが、目標とする数値が3倍なら、12%ですか。人工光合成の研究ですが、太陽光の変換効率が10%になると、経済効率的にも実用になると、言われていますね。この4%という数字が、可視光を紫外線に変換する効率のことなのか、太陽光全体の変換率のことなのか、それは記事ではよく分かりませんが。こういうところが日経新聞のダメなところですね。説明力のある理系の記者をもっと増やさないと。

■トヨタの人工光合成■

トヨタ自動車グループの豊田中央研究所が昨年、太陽光を使って水と二酸化炭素から蟻酸を生成する人工光合成の効率を、従来の0.04%から7.2%へと世界最高水準まで高めることに成功したというニュースを昨年、noteに書きました。こちらの方は続報をあまり聞きませんが、この手の研究というのは、ブレークスルーするまでが大変ですからね。今回の研究は、こういった研究にもプラスする可能性がありますから。有料部分では言及があるんですかね?

いちおう釘を刺していきますが、人工光合成の技術開発にはとても期待していますが、人工光合成や太陽光発電による大量のエネルギー生産は、日本では難しいです。日本の日照量は世界的な平均値よりも低く、1位の埼玉県でも2366時間、 2位の群馬県で2344時間、 3位の山梨県は2335時間です。これが、プロ野球のキャンプ地として有名なアメリカのアリゾナ州ユマだと4015時間と、1.69倍もあります。それだけ晴れの日が多いから、キャンプ地として最適なんでしょうね。

■八雲立つ多湿の日本■

逆に言えば、日本は雨が多い国です。日本という国名から、スピルバーグ監督の映画では『太陽の帝国』などとも呼ばれましたが。それはあくまでもイメージの話。農業の世界では昔から「日照りに不作なし」という言葉もあります。日本で飢饉が起こるのは旱魃ではなく、冷害や長雨などによる日照量不足が大きな原因です。天明の大飢饉も、同時期に浅間山が大噴火を起こし、成層圏に達した火山灰が、日照量を減らす日傘効果を起こしたという説もあります。

ちなみに日本の日照量最下位は、秋田県の1647時間です。これはユマの41%しかなく、逆に言えばユマはその2.43倍もあるのですから、生産効率がそもそも違います。四方を海に囲まれて高温多湿な日本は雨が多く、積雪量でも世界有数の国です。積雪の世界記録も日本が持っていますし、北欧やカナダの人たちから見ても日本の東北の積雪量は、驚くほどだとか。太陽光発電に妙な期待をする人は、勉強不足としか言いようがありません。ベースロード電源になりえないのですから。

■素材研究が日本の鍵■

もうひとつ、北海道大学が、可視光全域での光の吸収が可能な、酸化チタンを利用した技術を開発したというニュースも、去年ありました。酸化チタンの研究もまた日本が、世界にインパクトを与えた研究でした。本多健一博士とと藤嶋昭博士が、酸化チタンと白金の電極の間で水の電気化学的光分解が発生していることを発見したのが1972年。このため光をエネルギー源に、水を電気分解をすえう光触媒の化学反応を、本多-藤嶋効果と呼ばれています。

チタンはとても固い素材であるため、ゴルフのヘッドやパソコンやスマートフォンの状態などにも利用されていますが、光触媒として研究がされていました。光合成もある意味で、天然の光触媒によるエネルギー同化作用ですから。日本では、カーボンナノチューブなどの素材研究が次のノーベル賞候補だったりしますが。こういう素材研究はまだまだ強いですし、日本人は化学的な研究をコツコツやるのが昔から強いんですよね。今後もこういう研究には期待したいです。

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