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自衛隊の輸送能力

◉JMUディフェンス社が、オーストラリアの海洋防衛イベントに出展した、多用途水陸両用車の模型が、注目を集めていたとのこと。JMUディフェンスは造船メーカーのJMU(ジャパンマリンユナイテッド)の子会社です。日本の兵器は、多用途型が多いのですが、潤沢な軍事費がない国には、そういう汎用性って大事ですからね。政府としては、武器を輸出産業にしたいでしょうから、こういう評価は、追い風になるでしょう。

【日本が売り込みかける「謎の水陸両用車」とは? 造船系メーカーが開発 ニッチ需要がそこにある!】乗りものニュース

オーストラリアの海洋防衛イベントに日本から防衛装備庁と企業が初参加し、「多用途水陸両用車」なる車両が注目を集めました。作ったのは造船メーカーJMUの関連会社。輸出向けにはピッタリな装備品かもしれません。
(中略)

https://trafficnews.jp/post/129303

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、横須賀基地の護衛艦で「てまえ110がたかなみ型たかなみ,111が同級おおなみ」とのこと。

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■多用途水陸両用車■

武器輸出というと、すぐに「死の商人」とかそういうイメージを持つ人もいますが。現実問題、軍備は必要悪であって、なくなったら平和な世界が来るかと言えば、そんなこともなく。気候変動で人類に必要な食料の10分の1しかなくなったら、戦争が起きるわけで。みんなで分かち合って人類絶滅、なんて選択肢はない。国家は、民族は、家族は、個人は、時にエゴイストになります。そういう、永遠に悟れぬし解脱もできなければ、天国の門を跨げないのが人間という、ある種の諦念は必要でしょうね。

そして、日本は武器を輸出できないので、開発費が割高になっている現実。他国に輸出できれば、値段を下げられますし。安定精算は自国のストックにも影響を与えますから。生産ラインを安定して維持するのが、実は重要。島嶼部が多く、大型の船が接岸できない港も多いですから、いざとなったら水陸両用車で人や物を運ぶ能力とか、逆に占領された島を奪還する意味でも、水陸両用車って、けっこう大事に思うんですよね。ホバークラフトとはまた、役割が違いますし。

 94式水際地雷敷設装置は浮航時に2基のスクリュー・プロペラを使用しますが、多用途水陸両用車はアメリカのナムジェットが開発した「TJ381」ウォータージェット2基を使用します。これにより、多用途水陸両用車は最大水上浮航速度も94式水際地雷敷設装置の時速6ノット(約11km/h)から9ノット(16.7km/h)に向上。また波の高さが0.5m以上1.25m以下という、やや荒れた海面でも運用が可能となっています。貨物の積載重量は約6tです。

ちょっと驚いたのですが、「AAV7が強襲逆上陸を行って橋頭堡を築いた後、その橋頭堡に弾薬や食料などを輸送したり、負傷者を後送したりするための適当な装備は保有していません。」とのこと。日本の専守防衛のドグマが、侵略用にも使えるって部分での、能力の確保にブレーキが掛かっていたのか? 軍事ヲタクではないので、そこらへんはわかりませんが。日本の憲法9条教も、ロシア連邦軍のウクライナ侵攻で一気にその底の浅さが周知され、状況は変わりつつあるので。普通の兵器としての汎用性を追求してほしいですね。

■自衛隊海上輸送群■

この話題から派生して、2025年3月に発足することが明らかになった自衛隊の海上輸送群についても。どうも、海上自衛隊の部隊ということではなく。ある種の、陸海空の三軍の力をうまく使って効率的な物資の補給───昔で言う兵站を、担当する部隊ということのようです。日本は島国の海洋国家なんですが、大陸国家の中華文明の影響が強く、実は兵站軽視の面が強いんですよね。白村江の戦いから豊臣秀吉の朝鮮出兵、二次大戦でもそうですが。インパール作戦とか、その極みですからね。

【その名も「海上輸送群」自衛隊の新部隊どんな姿に? 陸海空の共同 中国に立ち向かう“運び屋”に】乗りものニュース

2025年3月に発足することが明らかになった自衛隊「海上輸送群」。その名称から海上自衛隊所属と思いきや、そうではないといいます。一体どんな部隊で、どんな船を運用するのでしょうか。
(中略)
 しかし、島嶼部への攻撃に対応するには、海上優勢と航空優勢の確保はもちろんのこと、上陸阻止や奪還に使う陸上戦力を迅速に機動・展開させる必要があります。自衛隊が持つ装備や人員の輸送が可能な艦艇は、海上自衛隊が保有するおおすみ型輸送艦3隻と「輸送艇2号」と呼ばれる小型揚陸艇が1隻のみ。防衛省がPFI(民間資金等活用事業)方式で契約している民間フェリー「はくおう」(1万7345総トン)と「ナッチャンWorld」(1万712総トン)は船体が大きく、小規模な港への輸送には不向きです。

 そのため、航空機による輸送に適さない重装備や、一度に大量の物資などを輸送するためには、現在の海上輸送能力では不十分であり、有事の際には全国各地から島嶼部に自衛隊の装備品を継続的に輸送する必要があることから、その部分の強化が不可欠といわれていました。

https://trafficnews.jp/post/129369

陸上自衛隊の車両、海上自衛隊の輸送艦などの艦艇、航空自衛隊の飛行機やヘリコプター。これらを効率的に使うには、縦割り行政ではダメなんですよね。戦前の大日本帝国軍は、陸軍と海軍のいがみ合いというか、予算のぶんどり合戦が昂じての反目があり、有機的に連帯できていたかと言えば、そこは疑問ですね。陸軍も、国内で戦っている分にはいいのですが、外国で戦うとなると、物資の補給は生命線。こう書くとまたぞろ、海外を侵略するために軍備を強化~軍靴の響きが~とか、言い出しそうですが。島嶼部防衛でも補給は生命線です。

■有人離島が多い国■

そもそも、我が国は1万4125もの島嶼により構成される典型的な島国です。この中で北海道・本州・四国・九州・沖縄本島を除く1万4120島が離島として認識されます。 この中で、有人離島は256島もありますから。敵国が侵略する場合、無人島に極秘侵攻して橋頭堡を作るか、有人島に侵攻して人質を取るか、そこはそれぞれの戦術次第でしょうけれど。日本は、そういう地理にあるということで。

 こうした背景を受けて2018年の「中期防衛力整備計画(中期防)」で「海上輸送部隊」1個群の新設が盛り込まれ、2022年度予算で中型のLSV1隻と小型のLCU1隻の取得が決定。さらに2023年度予算でもLCU2隻の建造が決まりました。建造ヤードはいずれも内海造船(広島県尾道市)で、LSV1隻とLCU1隻は今年2月に計約95億円で、LCU2隻は7月に計約82億円で契約が結ばれています。

僻地医療もドクターヘリの存在によって、ある意味で輸送の問題になるように。輸送というのは血管と血液のようなもの。血液=物資があっても、血管=流通手段がないと難しいですから。これは何も軍隊だけでなく、国内の流通インフラとも密接に関わっていますしね。自分が強襲揚陸艦推しなのは、日本の予算とか現実的な部分に加えて、医療船にもなるし、陸海空の三軍の力を集結しないと運用できない存在だから、です。ここでも、汎用性というのがキーワードになりますが。日本にとって、強襲揚陸艦はもっとも汎用性が高い艦艇ですしね。

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