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2025年の台湾有事

◉2024年、あるいは2025年に習近平主席が、台湾侵攻に踏み切る……という予測が米軍関係者から、かなり信憑性を持って語られ始めましたね。表に出せない情報も多々あるでしょうから、もっと深いところで確証を得ているのかもしれません。台湾の次回の総統(中華民国総統)選挙は、2024年に予定されていますから、その結果によっては2024年が2025年に台湾有事があり得るというのは、かなり信憑性があります。

【台湾有事、25年までにも 米軍幹部が内部メモで警告】時事通信社

 【ワシントン時事】米NBCテレビは27日、米軍のマイク・ミニハン空軍大将が内部のメモで、2025年までに中国が台湾に侵攻し、米中戦争が起こり得ると警告したと報じた。24年に米大統領選と台湾総統選が予定されているとして、その直後に台湾有事が発生する可能性があるという。
 ミニハン氏は空軍航空機動司令部の司令官で、19年9月~21年8月にインド太平洋軍の副司令官を務めた。米政府・軍の幹部からは早期の台湾有事を警戒する声が相次いでいる。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2023012800378&g=int

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、九份の夜景だそうです。

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■2024年の中華民国総統選挙■

現在の蔡英文総統は2016年に初当選し、2020年に再選されています。中華民国総統選挙は、1度だけの再選(連続でも間を置いての再登板でもあり)を認めていますから、蔡英文総統はあと1年ちょっとで退任されます。プーチン大統領のような裏技を使っての長期独裁は、できないシステムです。2024年の総統選挙では、新総統が誕生するのは確実。そこで親中派の新総統が生まれなければ、人民共和国による台湾への締め付けはより厳しくなるでしょう。

中華人民共和国では2018年に、国家主席と国家副主席の任期を2期10年とする制限を撤廃し、習近平独裁体制を確立する動きが加速しました。そして昨年、2022年10月22日の第20回全国代表大会において、事実上の前皇帝である胡錦濤前国家主席と、その後継者であった李克強の追放劇が、全国にテレビ中継されました。2024年の中華民国総統選挙はまさに、終身国家主席となった習近平皇帝には、絶好の権力アピールの場です。

■皇帝は天下に一人■

何度も書いていますが、中国は何だかんだ言っても未だに、東アジア型専制君主国家=皇帝制度の国です。皇帝という名称は秦の始皇帝が制定したものですが、これは伝説の三皇五帝から現在の皇帝まで、天が与えた天下人民の支配権が、連綿と続いているという考え方です。なので、三国時代も五胡十六国時代も五代十国時代も南北朝時代も、天下に皇帝はたった一人だけです。蜀の劉備も呉の孫権も、中国の史書では皇帝としては認められていません。

彼らは皇帝を勝手に名乗った、僭主=偽りの皇帝と言う扱いです。今日はこの考え方は矛盾も孕んでいます。明王朝は元王朝(モンゴル帝国の大元ウルス)を滅ぼして成立し、朱元璋が1368年に初代皇帝に即位したとされますが。実際には、モンゴル人による征服王朝である元は、滅びていません。本来の本拠地であるモンゴル高原に後退しただけで。実際、元朝のトゴン・テムル皇帝(ハーン)と朱元璋の在位期間は、2年ほどかぶっています。

中国史ではこれをごまかすために、元朝を北元と呼んで、別の国家のように扱っていますが。そんなことはありません。元朝はフビライ・ハーンの血統が途絶えたりもしましたが、15世紀末にはダヤン・ハーンによってモンゴル高原の遊牧民再統合が果たされるなど、一定の力を維持し続けます。ダヤン・ハーンの末裔のリンダン・ハーンが死に、満州人の後金国のホンタイジに、元朝の皇帝位と玉璽が禅譲されたのが1636年。朱元璋の即位から数えて、268年間も存続します。

■モデルは前漢の武帝?■

後金国は8年後の1644年、明朝を滅ぼします。つまり、元朝の皇帝の正統は直接、清王朝に継承されたということになります。そうなると朱元璋以降の明朝の歴代皇帝は全員、僭主ということになってしまいます。勘のいい人は気付いたでしょうけれど、中華人民共和国にとっての中華民国というのはまさに、明朝にとっての北元になってしまいます。自分も便宜的に台湾と呼んでいますが、正式には中華民国ですからね。

三皇五帝から連綿と続く中華帝国の皇帝たる習近平主席にとって、台湾こと中華民国は、その正統性を毀損しかねない存在。中華人民共和国帝国において、初代皇帝の毛沢東と中興の祖である鄧小平。この2人を超える存在になりたいのが習近平皇帝ですから。毛沢東もなし得なかった中華民国滅亡を達成できれば、前漢王朝の武帝の立場に躍り出ます。高祖劉邦と名君の文帝を超える存在になろうとして、対外戦争を行った武帝のように。

前漢の高祖劉邦は、冒頓単于率いる匈奴軍に白登山の戦いで大敗し、匈奴に毎年朝貢するという、屈辱的な状況に置かれていました。これを打ち破ったことで、武帝は前漢王朝最盛期の皇帝として、評価されることに。習近平皇帝が踏襲するとしたら、この武帝の業績でしょう。武帝の治世は54年もの長期間にわたり、事実上の終身国家主席に就任した習近平皇帝としては、自分自身を重ね合わせるには最高のモデルでしょう。

■歴史は民族の見た夢■

文系の学問など、役に立たないという人がいます。非常に薄っぺらい考え方ですね。実は文系の学問は一番役に立つのは、戦争になった時だったりします。その国の文化や考え方、思考の方向性を知ることが戦争においてはとても大事だったりします。真珠湾攻撃をされた後、アメリカ人は文化人類学者まで動員して日本のことを徹底的に研究しました。『菊と刀』という、文化人類学の古典的な名著が生まれた理由です。

その成果として、日本軍が総攻撃を仕掛けてくるタイミングというのが、陸軍記念日とかそういう、軍にとって節目のタイミングであることに気づきました。何のことはない、松任谷由実『Anniversary』や俵万智『サラダ記念日』と同じで、特別な日に対する思い出の文化というのは、戦前も戦後も連綿と続いているのです。音楽や文学の研究が戦争に役立つという理由です。ハワイ日系人部隊が、最高の戦果を挙げた理由でもあります。

米軍の情報将校であったドナルドキーン氏は、行書や草書の崩し字まで読める高い日本語能力を使って、兵士たちの手紙を解読したとか。公式発表には絶対に反映されない、大衆の本音が反映されるのがそういう個人的な手紙ですからね。中国という国や中国人の嗜好を知ろうと思ったら、歴史と文化と文学を研究するのがとても重要になります。2024年から25年にかけて、習近平皇帝が動く可能性は高いと、自分は思います。

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