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エネルギー関連:核融合炉・地熱・アンモニア

◉あまり人気はないですが、エネルギー関連の話題をいくつか まとめて。量子科学技術研究開発機構が、核融合実験炉の、運転開始記念式典を開いたとのこと。式には日欧の関係者に加え盛山正仁文部科学相や高市早苗内閣府特命担当相が参加と、かなり力を入れていますね。トカマク型としては、世界最大クラスですから、政府の核融合への期待が伺い知れますね。

【世界最大クラス体積約160㎥のプラズマ生成に成功…量研機構が「核融合実験炉」運転開始式】ニュースイッチ

 量子科学技術研究開発機構は那珂研究所(茨城県那珂市)に建設した核融合実験炉「JT―60SA」の運転開始記念式典を開いた(写真)。日欧の共同プロジェクトで建設したJT―60SAは10月23日に初プラズマの生成に成功。強力な磁場でプラズマを閉じ込める「トカマク型」として、これまでに世界最大クラスとなる体積約160立方メートルのプラズマを生成し、温度は1500万度C程度まで上昇したのを確認したという。

https://newswitch.jp/p/39541

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、風力発電の風車の写真です。

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■Eavor-Loop地熱発電■

核融合発電に関してはやはり、アメリカの研究がかなり先行していて、そこはノーベル賞級の科学者がゴロゴロいて、研究予算も潤沢ですから仕方がないですね。それでも日本はかなり頑張っている方ではないでしょうか。とはいえ、発電に関してはいろんな方法がありますから。

火山国の日本では、地熱発電への期待もありますが、調べてみるとなかなか厳しい現実が浮き上がってきます。地熱発電は思ったほど高温の温泉は少なく、そういう温泉はほとんど人気の温泉街。地熱発電所建設で湯量の減少の懸念があります。またボーリング調査をするだけでも莫大な費用がかかってしまい、しかも 建設した後のメンテナンスも大変。ただ、Eavor-Loop地熱発電は興味深い方式です。

【地熱発電を推進する秘策、日本ならではのベースロード電源】Forbes

発電時に二酸化炭素を排出しない地熱発電。火山国の日本には大量の地熱資源がある。また、地熱発電用タービンの生産は日本が世界をリードしているという。しかし、日本では数々の問題があって残念ながら地熱発電が普及しない。そこで海外の高度な地熱発電技術を呼び込むべく、日本のファンドが投資を行った。

日本で地熱発電が進まない理由には、地熱発電に適した場所の調査や試掘に膨大な時間とコストがかかることや、適所はほとんど国立公園内か温泉地にあるため、自然公園法や温泉法の規制があって開発が難しい点があげられる。国立公園などで大規模な工事を行い発電所を建てることはできない。温泉地では温泉を汲み出す井戸の数に制限があったり、温泉の枯渇を心配する業者の反発もある。政府はこうした規制を見直して再生可能エネルギーの開発を推進するとしているが、そこを技術的にクリアする方法もある。

https://forbesjapan.com/articles/detail/67137

カナダのエネルギー企業Eaver TechnologiesのEavor-Loopは画期的な地熱発電ソリューションなんだそうで。2本の垂直杭と複数の水平杭を接続して、この中を作動流体=淡水を循環させるシステム。昔、あさりよしとう先生のまんがサイエンスで、似たシステムを見た記憶が。地上から高圧の水分を送り込んで岩盤を破砕し、人工的に地熱貯留層を創り出すという、高温岩体発電ですが。

Eavor-Loop地熱発電は、さらに洗練されていますね。水平杭は熱回収機の役割で、熱水を汲み上げることなく地上に熱を伝えることができるシステム。これならばメンテナンスの問題がだいぶ軽減できますし、湯量の枯渇で温泉観光地との対立も避けられます。ボーリング調査に莫大な費用がかかるのは相変わらずですが、火山地帯でうまく狙い撃ちして、設置できれば面白そうですね。

■ガレージに収まる核融合炉■

こちらもまた興味深い、小型の核融合炉の研究です。まだ大型の核融合の自体が、まだ実験炉の段階であって。商用実証炉が建設されて商業ベースに入っていない時点で、すでに小型の核融合炉の研究が進んでいるというのも、不思議な感じですが。こういう研究は、前記のトカマク型のような大型の核融合炉の研究と、セットですからね。ビジネスチャンスを考えるならば、先行しておくに越したことはありませんから。

【「ガレージに収まる」核融合炉 世界で加速する技術開発と投資】毎日新聞

 米西部ワシントン州シアトル郊外。航空大手ボーイングから食品関連までさまざまな事業所が集まる産業団地の一角に、核融合に関する技術を研究するスタートアップ「ZAP(ザップ)エナジー」の実験施設はある。

 「これが真空容器です」。同社のプラズマ物理研究部門を率いるコリン・アダムスさんが指さした。全長2メートルほどの円筒形の装置は同社が想定する商用炉の炉心とほぼ同じ大きさだという。将来、真空状態を作り出す容器内で、安定して核融合反応を起こしてエネルギーを取り出すことができれば、1基あたり50メガワットの発電が可能になると見込む。少なくみても数千世帯の電力需要をまかなえる規模だ。

https://mainichi.jp/articles/20231204/k00/00m/020/263000c

出力自体は大したことはないんですが、大きさが コンパクトですから。ガレージに入る大きさ というのは、さすがに驚きですが。これがうまく実用化できれば、うちの田舎のような過疎地だと、数千世帯の電力が賄えるだけで、かなりの範囲がカバーできてしまいますね。人口数万人の地方都市ならば、数基あればカバーできてしまうレベル。そうなると地産地消で、送電ロスがかなり軽減できますから。エネルギーの流通革命がおきますね。

安全性が高い第4世代炉の高温ガス炉は、出力自体は 第3世代炉の30%程度ですが、ロケーションを選ばないという利点があります。第3世代炉は古くて硬い岩盤と冷却用の水を必要としますが、第4世代炉はそれが不要。なので1都道府県に1基と地産地消に向いているのですが。小型核融合 ならば1町村に1基のレベルですね。

■アンモニア専焼バーナー■

さて、このnoteではおなじみの、アンモニア関連。アンモニアと言うと、化学肥料の原料にもなる、非常に重要な物資ですが。NH3で表せるように1個の窒素原子(N)と3個の水素原子(H)からできていますから。火力発電で燃やそうと思えば、燃えるんですよね。火力は弱く消えやすい、という欠点はありますが。なので 石炭などと混ぜて燃やす混焼が研究されているのですが。専燃バーナーの研究も進んでいるようです。

【「アンモニア専焼バーナー」火力発電所に国内初適用へ…三菱重工が試験成功】ニュースイッチ

 三菱重工業は火力発電ボイラでのアンモニア利用技術として、アンモニア専焼バーナーの試験に成功した。総合研究所長崎地区(長崎市)の燃料消費が毎時0・5トンの試験設備で、専焼試験や石炭との高混焼試験での安定燃焼のほか、石炭よりも窒素酸化物(NOx)排出を抑制できることを確認した。今後は同4トンの試験設備で、実機サイズのバーナーを使って燃焼試験を実施する。

 アンモニアの安定燃焼とNOx抑制を同時に実現するバーナーの基本構造を確認でき、火力発電ボイラの実用化に前進した。実機サイズの燃焼試験で成果を挙げ、2024年度までに専焼バーナーを開発し、国内外の火力発電所に適用することを目指す。

https://newswitch.jp/p/39538

アンモニア自体は、ハーバーボッシュ法で簡単に合成できるようになり、これで化学肥料が大量に供給できるようになり、食料問題にも大きく貢献したのですが。ハーバーボッシュ法だと、高温かつ高圧状態で合成されるのですが。日本では常温での合成研究も盛んで、アンモニアはいろんな意味で有望な燃料の一つです。

そもそも、水素キャリアとしても、優秀な存在ですからね。石炭と混焼してもいいし、専焼もできて、水素キャリアでもあり、化学肥料の原料にもなる。アンモニア自体は、古代エジプトでも存在が知られているほどの、ありふれた存在ですが。ありふれた存在だからこそ使い勝手も応用範囲も広いということで。個人的には色々と調べると、ワクワクする研究が出てきますね。今後もできるだけ紹介したいです。

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