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日本はヤポネシア

◉日経サイエンスの動画と、記事が面白かったのでご紹介。仕事中は、radikoを聴くかYouTubeを聴く(ただし画面はほとんど見てないことが多いです)ことが多いのですが。偶然、おすすめに出てきた日経サイエンス公式動画の内容が、日本文化の中のポリネシア文化について、ちょいちょい言及してきた自分にとって、非常に面白く。遅ればせながらKindle版の2月号を購入。非常に興味深い内容でした。

【特集:DNAが語る古代ヤポネシア】日経サイエンス

人類学や考古学の研究に触れる時,私たちはある種の切実な好奇心をかき立てられる。私たちは何者なのか──その問いに答えようと世界中で多くの遺跡が発掘され,古代人の人骨や各種の遺物から文字に残らなかった人類の過去を解き明かす研究が行われてきた。

その結果,こんにちでは多くのことがわかってきている。アフリカを旅立った私たちの祖先は約4万年前に東アジアに到着した。日本列島内の遺跡は,おおよそこの頃に日本列島にも人類が到達していたことを示唆している。

日本列島にはその後も何度か人類集団の流入があったようだ。もっとも有名なのは弥生時代の渡来人だろう。先住の縄文人の子孫と渡来人が混血して現在の日本人集団が形成された。ただ,渡来したのが誰なのか,混血がどのように進んだのかはいまだ謎だ。

https://www.nikkei-science.com/202402_038.html

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、大西洋とイースター島のGoogleマップのスクショです。

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■モアイ像もポリネシア系■

ポリネシア人というのは、現在の台湾やその対岸の福建省のあたりを発祥の地として、西は イースター島、東魚 アフリカのマダガスカル、北はハワイ諸島、南はニュージーランドのあたりまで広がった、大海洋民族です。アウトリガーカヌーで、これぐらい 広大な地域に拡散したわけですから。台湾から与論島→沖縄諸島→奄美諸島を経て、日本列島に到達しないはずもなく。

イースター島のモアイは、ふんどしを着けて正座をし、背中には文身(入れ墨)をしていますが。この三点セットは、ポリネシア系文化の特徴的なものです。モアイのふんどしの結び目など、大相撲の横綱の雲龍型と不知火型とそっくりなものが、観察できます。また魏志倭人伝には、皆黥面文身とか今倭水人好沈没捕魚蛤とあり、倭人が潜水漁撈をしていたことがわかります。

黥面は顔の刺青、文身が身体の刺青のことです。日本でも奄美諸島やアイヌ民族など、古くは顔や手への刺青文化がありますね。儒教の影響でたびたび入れ墨(彫り物)は禁止されますが、断絶しては復活を繰り返し、現在も伝わっています。こちらの動画も、是非どうぞ。

■済州島とイースター島■

また素潜り漁は、暖かい海の民族の特徴ですね。海女というのは外国人には物珍しいらしく、スパイ映画『007は二度死ぬ』でも、日本が舞台の時に登場したほどです。縄文時代の人骨でも、潜水漁撈をする人特有の外耳骨の変形があるものが見つかっており、かなり古い時期に伝播したのが分かっています。それが伝播し北上し、男性よりも脂肪が多く冷たい水に耐えられる女性が、海女になったわけで。

日本は熊本の天草や伊勢志摩の海女さん、島根や石川の日本海側や、千葉や岩手の海女さんなど、全国で海女さんがいます。太平洋側にも日本海側にも、広く分布。海女の文化は韓国の済州島でも見られるんですよね。済州島は古い記録を見ると、言語 もう文化も朝鮮半島とは別物で、トルハルバンという謎の石像や、石の遺跡が有名です。このトルハルバン、奈良の猿石やイースター島のモアイと、似ています。

トルハルバン
猿石

モアイ像も、両手の平をポッコリお腹に当てる形で正座しており、元々はアーモンド状の目が別途入っており、また頭にも帽子のような赤い岩が別途、乗せられていました。並べてみると三者は似ているのが理解できますよね? 相撲の四股も、古式はつま先を下に向けてあまり高く足を上げず、ニュージーランドの先住民族マオリ族の戦舞ハカの、大地を踏みしめる動きに似ています。

■瓜子姫伝説との関連■

この、日本の中のポリネシア系文化という視点で、個人的に面白いなと思うのは、日本各地の瓜子姫伝説との関連です。永久保貴一先生は、番町皿屋敷のお菊さんの伝承と、白山神社の菊理媛の伝説を、丁寧に検証されていらっしゃいましたが。ポリネシア系の文化が日本に伝播する中で、口承文学のように、ポリネシア系の神話や伝承が痕跡を残している可能性はあるわけで。

ポリネシア文化は女系文化で、日本にはそのような女系文化の名残が、石長比売と木花咲耶姫の神話とかに、残っているという指摘もあります。そこら辺を考え始めたきっかけは、こちらのポストでした。瓜子姫の伝承は日本各地にあるのですが、その分布には偏りがあり、また結末にもいくつかのパターンがあるのですが、それを分かりやすく、日本地図で示したものでした。

需要がありそうなので、定期的にアップします。
瓜子姫分布図
赤……死亡型・瓜子姫が死亡する 緑……生存型・瓜子姫が生き延びる #瓜子姫

https://x.com/urikohimefukyuu/status/1246301050560065538?s=20

資料的価値が高いので、画像も転載を。

地域的には明らかに、島根や鳥取や岡山の中国地方に固まっており、しかし宮崎や紀伊半島など、見事に瓜子姫伝説がないですね。で、ツラツラ見ていて思ったんですけど。瓜子姫伝説がない・あるいは希薄な地域って、中央構造線の南側じゃないですか? これ、単なる偶然にしては、キレイに偏りすぎです。もうひとつ。瓜子姫伝説のない・希薄な地域は、富士山と伊豆半島からの地域を除いて、活火山がない地域とも重なります。

■火山と日本の結界?■

星野之宣先生の『ヤマタイカ』で、宇佐神宮から伊勢神宮までの地域は、活火山がない(山陰はある)と指摘されていて。これって中央構造線と合わせて俯瞰すると、とても興味深い。ちなみに下の画像の赤い線が、中央構造線です。いくつかの例外はありますが、この中央構造線の南側には、瓜子姫の伝説がかな〜り少ないですよね?

瓜子姫伝説が多い島根は、因幡の白兎と大国主命の神話で有名ですけれども。大国主命の別名は大穴持命。九州の大浪池や御池などの、火山の火口にできたカルデラ湖に行くと実感するんですけれど、まさに火山の火口は大穴です。神秘的でさえあります。そして、中国四国地方に数少ない島根の火山の三瓶山、こちらはカルデラ湖があるんですね。瓜子姫伝説が、火山がある地域と重なる不思議。

■火山とポリネシア系民族■

島根県の出雲大社では、海辺に打ち上げられたセグロウミヘビを龍蛇様と呼び、奉納する神在祭という儀式があります。セグロウミヘビは元々、南方の海に生息するのですが、卵胎生で遊泳能力が高いのが特徴です。島根県どころかもっと北の方まで、北海道まで回遊するそうです。加えて、奄美大島以南の温かいに生息するゴボウラガイの腕輪が、福岡や島根で発見されており、弥生時代初期から南西諸島と九州中国の、交易ルートがあった訳です。

https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/kaisetsu/katsukazan_toha/katsukazan_toha.html

ポリネシア系は、4500年ほど前に移動を開始し、イースター島やマダガスカル島にまで達した大海洋民族。一部が北上して、日本人のルーツのひとつに。セグロウミヘビは黒潮や対馬海流の暖流に乗って、時に北海道まで遊泳するので、海洋民としては、北上の目印か? 火山と瓜子姫伝説と中央構造線と海女と。日本の文化の深いところで、繋がっていそう。ポリネシア人は移住した先にココ椰子とバナナをもたらしたことが、分かっています。

ちなみに、古代米の遺跡を見ると、日本海側ルートと瀬戸内ルートがあり、いったん濃尾平野ぐらいまでの伝播があったようで。日本の民族学は稲作を重視しすぎる傾向がありますが、粟や稗や黍など、五穀とされるイネ科作物の農耕自体は、稲作よりも数千年は先行しているわけで。瓜子姫伝説は記紀神話に登場するオオゲツヒメの神話ように、稲作伝播以前の五穀の伝播の記憶か?

ちなみに、ハワイ諸島は火山島。イースター島も火山島。ニュージーランドも火山が多い。トンガも火山群島。サモアも火山群島。言うまでもなく日本列島は、全世界の7%ぐらいの火山が集まるほど、火山大国です。太平洋プレートの関係で必然ではあるのですけれど、何やら活火山とポリネシア系海洋民族と信仰の存在を思わせます。海洋民族からしたら、火山島は海の上で目印になった可能性はあります。

火山を進行するポリネシア系民族と、火山を恐れる 大陸系民族とが、日本列島で出会って、日本民族を形成したのか? そういう論文があれば、読んでみたいけれども。


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