バンコクマダム連載コラム『タイ生活』より  第4話・・・「タイ語」


タイ人が話すタイ語を初めて耳にしたのは初めてタイに来た時に乗ったタイ航空の客室乗務員のお姉さんのアナウンスだった。

「カプリサーン」

一番最初に聞こえたこの言葉は耳にとても心地よく響きとても素敵な言葉に思えた。
それからタイ航空を利用する度に「カプリサーン」を聞くのが楽しみになった。

タイで暮らすようになりタイ語が少し分かるようになった頃
大好きな「カプリサーン」の意味を知らないことに気が付いた。

周りのタイ人に「カプリサーン」とはどういう意味なのか尋ねてみる。
ところが、みんな口を揃えて「そんな言葉はない。」と答える。

えっ!そんなはずない。
だって、タイ航空に乗ったらいつも聞くもん。「カプリサーン」って。

後になって、私がてっきり「カプリサーン」と思い込んでいた言葉は、実は「ターン・プー・ドイサーン(ท่านผู้โดยสาร)乗客の皆様」・・・というのが正しいのだと分かった。
それをタイ人が早く言うと私の耳には「カプリサーン」と聞こえていたのだ。
いつも「カプリサーン」と聞こえていたのに正しいのを知ってしまうと本当に「ターン・プー・ドイサーン」で、今度はどう努力しても「カプリサーン」とは聞こえなくなってしまった。

しかし、正しい方を知ってもどうしても思い込んだ方に聞こえる言葉もある。
タイ人は普段はチュー・レン(ニックネーム)で呼び合うことが多い。
本名は長くて覚えにくいものも多いし、親しい人でもニックネームは知っているけど本名は知らないという場合もある。

娘がタイの学校に通い出した頃、友達の名前を教えてくれるのだけど何度聞いても覚えられない。
それが、たった一人だけパッと即座に覚えられた名前の男の子がいた。
優等生でハンサムな男の子だ。
彼の苗字を初めて聞いたとき、「これは覚えやすいっ!」と感激した。

「たぬきちくーん」

一発で覚えてしまった。
彼を見かける度に、「あっ、たぬきちくんだ。」と親しみを感じて心の中で手を振る。
「タマキティクーン」
彼の苗字だ。



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これは、タイのフリーペーパー『バンコクマダム』に2013年から連載させてもらっているコラムをちょこっと編集し、まとめておきたくて書き留めています。

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