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日本ビクターの業務用VHS 系譜

 日本ビクターに入社してから十数年、業務用VHSのメカの開発に携わってきましたが、だんだんと当時の記憶も怪しくなってきたので(笑)、覚えているうちに業務用VHSの系譜をまとめておきたいと思います。


VTRの家庭用/業務用/放送用の区分


 一般に、放送局が使うVTRを放送用VTR、家庭で使うVTR(VHSやベータなど)を家庭用VTR(民生用VTRとも言います)、その中間で企業や学校などで仕事(業務)として使われるVTRを業務用VTRと呼ぶことが多いようです。

業務用VHSの誕生


 1960年代までは、業務用VTRと言えばビクター、ソニー、松下の3社が共同開発したテープ幅が3/4”(インチ)のU-VCR(U Macic)が主流でした。テープ幅が3/4”(インチ)なので3/4とも呼ばれています。
 3/4も元々は家庭用として開発されたものですが家庭用としてはあまり普及せず、VHSが登場してからはもっぱら業務用として開発・販売されていました。昭和50年代までは学校の授業などで、でかい3/4”のVTRで動画を再生していたのを覚えている方もいるかと思います。

 しかし3/4は規格上カセットやメカが大きいので小型化が難しく、コストもかさんでしまいます。
 VHSは日本ビクターが開発した規格で、当初から家庭向けのVTRとして開発されたものですが、広く普及したVHSを使って手頃な業務用VTRが作られるようになりました。

業務用VHSの区分け

 一言で業務用といっても、用途によって違いがあります。大きく分けると

1.録再機(レコーダー)

 家庭用のVHSやベータと同じく、通常の記録再生ができるVTRです。録再機の派生として、再生専用の再生機(プレイヤー)があります。

2.編集機

 ビデオやオーディオのフレーム単位のつなぎ録りやインサート編集などが行えるVTRです。当時は2台一組のVTRをリモコンで制御して編集を行っていました。
 長手方向に連続しているテープを走らせながら編集するので、「リニア編集」と呼ばれます。いまのパソコンを使った「ノンリニア編集」という言葉は、この「リニア編集」に対する反語として生まれました。

3.ダビング機

 ビデオソフトの制作のためのダビングを行うVTRです。VHSのビデオソフトは長い間、たくさんのVTRを並べて一斉にダビングを行って作成されていました。
 ダビング機は機能としてはカセットを入れて録画、巻き戻しができればいいのですが、耐久性や低コストが求められます。

4.タイムラプス

 監視カメラの普及につれて、カメラ画像を長時間記録するため、コマ送りでの記録が出来るVTRが登場しました。市販のVHSカセットを使い、複数のカメラを切り替えながら最長240時間の記録ができます。またVHSに準じた記録方式なので、通常のVHSデッキで再生が可能です。

5.カムコーダー

 カメラ一体型で記録を行うVTRです。家庭用のビデオムービーよりも高画質でVHS記録を行えるので、結婚式場でのビデオ撮影や学校の校内放送、企業での社内放送などで重宝されました。

今後の予定

 次回からは、ビクターの業務用VHSを順次紹介していきたいと思います。

お断り

 私が直接関わっていない機種の記憶が怪しかったり、私が関わった機種でも記憶違いもあると思います。記憶違いや不正確な記載などを修正するため、本稿は適宜変更する場合がありますのでご了承ください。

 また、間違い等に気が付いた方、ご意見、ご要望のある方は、是非コメント欄にてお寄せください。

編集履歴

2023/01/16
一覧表にBR-S525、BR-S800/500、BR-S710を追加 

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