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映画や音楽のことについてのらりくらりと書いてます。

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  • 映画めも。

    観た映画のはなし。 ネタバレするぞー!

  • A24

    A24作品で観た映画の感想

  • ルイス・アルベルト・スピネッタの軌跡

    アルゼンチンロックの中心人物だったルイス・アルベルト・スピネッタの40年に渡るキャリアを、アルゼンチンの情勢と共に紐解く。

  • ジョアン・ジルベルトガイド

    ジョアン・ジルベルトの全キャリアを年代とアルバムで切り分けて辿る。彼が何を見て何を目指したのか、同時代の流れも含めてルーツを遡っていくジョアンを知るためのガイド。 ※2020/2/1更新

  • 世界で一番好きな(のかもしれない)音楽

    僕が心を打たれた音楽について、何故心を打たれたのかをつらつらと書き連ねてます。

最近の記事

【映画】パスト・ライブス Past lives/セリーヌ・ソン

タイトル:パスト・ライブス Past lives 2023年 監督:セリーヌ・ソン 韓国人移民といえば本作と同じくA24が配給した「ミナリ」や、養子問題を外からの視点で描いた「ソウルに帰る」など韓国国外についての映画がある。韓国人としてのアイデンティティと、長く国外で暮らす移民としてのアイデンティティの揺らぎがそれぞれで描かれていたが、本作は韓国側の状況も含んでいて、過去から現在へ至るまでにスプリットされてしまった12歳の頃の記憶と、12年置きに進む物語の中で過去の記憶が交

    • 【美術】安井仲治ー僕の大切な写真@東京ステーションギャラリー

      戦前から戦中にかけて活躍し早逝してしまった安井仲治の写真展が東京ステーションギャラリーで開催中。中々時間が取れなかったけど、やっと行く事が出来た。 先日鑑賞してきた「シュールレアリズムと日本」や、昨年の「「前衛」写真の精神」と同時代とあって、アンドレ・ブルトンやマックス・エルンストらダダイズムからシュールレアリズムの流れと、マン・レイやモホイ=ナジからのダイレクトな影響を感じさる。日本独自な風土からくる作風と戦後の作家の作品群へと連なりが、ちゃんとこの時代にあってもしっかりと

      • 【映画】アワー・ミュージック Notre musique/JLG

        タイトル:アワー・ミュージック Notre musique 2004年 監督:ジャン=リュック・ゴダール 遺作となった20分ほどの短編「遺言 奇妙な戦争」は映画というよりもインスタレーションっぽい作品で、語りにもあったように予告であり絵コンテというか青写真をまとめたような内容だった。デビューから最前まで一貫した彼のアティチュードは、常にポストモダンであり、かつリアリストでもあったという事を作品に触れるたびに思い起こされる。 「イメージの本」もそうだったが、この短編もボスニア

        • 【映画】海がきこえる/望月智充

          タイトル:海がきこえる 1993年 監督:望月智充 十代の心の機微を描いた作品であり、間を活かしたライトなサウンドトラックが時代にも合っていて、ファッション含め違和感なく受け入れられる時代だと思う。しかし、ジブリの中でも一番スルーされがちな本作がまさかまさかの劇場上映が行われ、初日から三日間全て完売という状況に大変驚いた。というのも、この作品が好きという人に全く出会った事がなく(SNSでは当然見かけるけれど)、ジブリ好きな人からは敬遠されがちなこの作品がようやく日の目を見た

        【映画】パスト・ライブス Past lives/セリーヌ・ソン

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          【映画】英国式庭園殺人事件・ZOO/ピーター・グリーナウェイ

          世代によってアダプトしにくい作家、監督、ミュージシャンがいて、特に十年くらい前の近過去のものほど意外と繋がりにくい事が少なくない。僕の中でピーター・グリーナウェイはそのひとつだったりする。現在サブスクに作品があまり無い事も、振り返る上で阻まれる事の要因のひとつでもある。これはグリーナウェイに限った事では無いのだけれど…。 常にピックアップされ、時代がかわっても紹介されるヒット作や名作はアダプトしやすい反面、時代のカラーが色濃く出てしまったり、その時代のものと位置付けられてしま

          【映画】英国式庭園殺人事件・ZOO/ピーター・グリーナウェイ

          【映画】エリス&トム Elis &Tom – Só Tinha De Ser Com Você/ホベルト・デ・オリヴェイラ、ジョン・トブ・アズライ

          タイトル:エリス&トム Elis &Tom – Só Tinha De Ser Com Você 2023年 監督:ホベルト・デ・オリヴェイラ、ジョン・トブ・アズライ 「三月の雨」の7thコードの展開形のイントロからエリスとジョビンの折り重なる歌を聴くだけで涙腺が緩む。穏やかで融和な雰囲気溢れるアルバムだと思い込んでいたが、融和というよりも宥和な状態から作り出されたアルバムだった事が明らかにされたドキュメンタリーだった。 この時のレコーディングへ至る記録が半世紀眠っていた1

          【映画】エリス&トム Elis &Tom – Só Tinha De Ser Com Você/ホベルト・デ・オリヴェイラ、ジョン・トブ・アズライ

          【本】哀れなるものたち Poor Things/アラスター・グレイ

          映画を観た後に読んで。まず驚かされるのが映画本編の物語を覆すラストと、後日譚だった。 原作は3つに分かれていて、マッキャンドルズが書いた回想録と、ヴィクトリアによる事実を明らかにする書簡、それら2つの書物を発見したグレイによる注釈となっている。映画はマッキャンドルズによる回想録をベラの視点で描かれているが、原作ではこの部分がマッキャンドルズによる創作だという事がヴィクトリアの書簡によって明らかにされる。全てが覆されるラストを映画が盛り込まなかったのは、単純に上映時間が長くなる

          【本】哀れなるものたち Poor Things/アラスター・グレイ

          【映画】ミレニアム・マンボ Millennium Mambo/ホウ・シャオシェン

          タイトル:ミレニアム・マンボ4k Millennium Mambo 2001年 監督:ホウ・シャオシェン 2000年前後のあの時代がフラッシュバックする。舞台が台北であっても(途中で夕張と新宿が出てくるが)、振り返れば時代が持つ独特な空気や色合いがまざまざと蘇ってくる。ブラックライトの妖艶な輝きの中で蠢くナイトクラビングや、部屋のカラフルなインテリアなど、かつて東京でも見てきた風景の一部でもあった。女の子のやたらとタイトな服装やキャミソールなど、若い世代の一部でリバイバルさ

          【映画】ミレニアム・マンボ Millennium Mambo/ホウ・シャオシェン

          【映画】夜明けのすべて/三宅唱

          タイトル:夜明けのすべて 監督:三宅唱 夜の闇の中で遠くに光る武蔵小杉のビル群。星のように輝く街と横切る浅草線。東京城南地区に当たる大田区の南側に住んでいる自分にとっては身近な場所と風景である。舞台となる栗田科学株式会社のある馬込辺りは、頻繁に訪れる場所ではないにしろ、知人が住んでいたり、郷土博物館を訪れるために足を運ぶ事がある。浅草線の車庫は、池上本門寺の端にある梅園のすぐそばにあり、国道1号線に沿うように走っている。しかも山添の家は馬込から数キロ離れた僕の家の近くにあり

          【映画】夜明けのすべて/三宅唱

          【映画】落下の解剖学 Anatomie d’une chute/ジュスティーヌ・トリエ

          タイトル:落下の解剖学 Anatomie d’une chute 2023年 監督:ジュスティーヌ・トリエ 2023年のカンヌパルムドール受賞作であるが、一番印象に残ってしまったのがボーダーコリーのメッシ。こりゃパルムドッグだなと思ってたら案の定受賞していた。猫好きの僕でもあの表情は見ているときゅーんとする。いや冗談のようなパルムドッグという賞(カンヌで唯一複数受賞できる)なのだけれど、映画の中でも重要な立ち位置を占めていて、映画の中のミステリーを紐解くキーパーソンならぬキ

          【映画】落下の解剖学 Anatomie d’une chute/ジュスティーヌ・トリエ

          【映画】ボーはおそれている Beau is afraid/アリ・アスター

          タイトル:ボーはおそれている Beau is afraid 監督:アリ・アスター 電車や駅の広告に溢れる脱毛や美容、増毛が生み出す、そのトキシックな状況を生み出す広告への批判はあらゆる場面で度々表面化する。他者から見られる時のこうでありたいという欲望と、こうでなければいけないという強迫観念が表裏一体となって渦巻いている。本作の後半で主人公ボウの母親の業績がポスターとして壁に並べられているのを見て、トキシックな状況を思い浮かべた。 気付いた人も多いと思うが、オープニング前のク

          【映画】ボーはおそれている Beau is afraid/アリ・アスター

          【映画】瞳をとじて Cerrar los ojos/ビクトル・エリセ

          タイトル:瞳をとじて Cerrar los ojos 2023年 監督:ビクトル・エリセ まさかまさかの「マルメロの陽光」以来のビクトル・エリセの新作が公開されるとは予想だにしなかった。昨年のカンヌで上映アナウンスがあった時に驚いた人も多いと思う。「ミツバチのささやき」から10年おきに発表していたほど寡作な作家として知られるけれど、「マルメロの陽光」からは30年以上経っている。途中、テンミニッツオールダーなど短編はいくつか作られているが、このタイミングで長編までこぎつけたの

          【映画】瞳をとじて Cerrar los ojos/ビクトル・エリセ

          【映画】ゴースト・トロピック Ghost tropic/バス・ドゥヴォス

          タイトル:ゴースト・トロピック Ghost tropic 2019年 監督:バス・ドゥヴォス 誰しも終電を逃して夜を彷徨うような経験はあると思う。家から数キロであれば歩いて帰るだろうし、遠ければネカフェやカラオケで朝まで過ごすなんて事もあるだろう。午前を過ぎた街の雰囲気は、人気がなくそれまでの賑わいとはかけ離れた姿を現す。昼間とは違う夜中に働く人々の生活は、そういう場に居合わせないと出会うこともない。延々と歩き続ける主人公ハディージャの姿を見ていると、日常の中のちょっとした

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          【映画】Here/バス・ドゥヴォス

          タイトル:Here 2023年 監督:バス・ドゥヴォス 普段は気にすることなく通り過ぎる周りにあるものに、ふと意識が向く事がある。何も音を立てずに部屋で寝そべっている時、外の車が通り過ぎる音や人の声などの環境音だったり、窓から見えるいつもの風景の中の朝の空気、昼の明るさ、日が翳り始める明暗が体の中のリズムと重なり合う。街の中でも、信号待ちをしている時の辺りの音や景色が突然ぱっと自分を取り囲むような感覚に入り込む事もある。公園や自然の中でくつろいでいる時は、なおさらその感覚に

          【映画】Here/バス・ドゥヴォス

          【美術】中平卓馬 火―氾濫@国立近代美術館

          一番好きな写真家はと聞かれたら中平卓馬と答える。中平卓馬の作品との出会いは、20年ほど前、とあるカメラショップでTHE JAPANESE BOXを閲覧したのがきっかけだった。たしか森山大道はすでに知っていたが、彼も参加した「プロヴォーク」の中でも中平卓馬の作品は心にグサリと刺さる感覚があった。いわゆるアレブレボケで撮られた不明瞭だけれど勢いを感じさせる写真の数々を見た瞬間に虜になった。オリジナルの「プロヴォーク」や「来たるべき言葉のために」は当然高額のプレミアが付いていたが、

          【美術】中平卓馬 火―氾濫@国立近代美術館

          【映画】ストップ・メイキング・センス Stop making sense/ジョナサン・デミ

          タイトル:ストップ・メイキング・センス Stop making sense in 4K 2024年 監督:ジョナサン・デミ 映画館で観るのとDVDを家で観るのとは当然感じるものは大きく変わる。画面の大きさに限らずオーディオの違いもあるが、やはり暗闇の中で集中して通して観ることで得られる没入感は、映画館で観ることの醍醐味なのを改めて感じる。どうしても家で観ていると気が散る時が多々あるし、本作でいえば好きな曲を聴こうとしてザッピングしがち。実は劇場で観るのと、頭から最後まで通し

          【映画】ストップ・メイキング・センス Stop making sense/ジョナサン・デミ