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シカゴポストロック再訪

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シカゴ音響派と言われたシカゴのポストロックシーンを振り返る。
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シカゴポストロック再訪 Tortoise/TNT

シカゴポストロック再訪 Tortoise/TNT



トータスがブレイクしたミリオンズ・ナウ・ネヴァー・ダイの頃のシカゴのポストロックは、音楽的なピークだったと思う。90年代中頃のシカゴの音楽シーンではガスタ・デル・ソル、シー・アンド・ケイクと共に全てが充実していた。

この後、ブラーがジョン・マッケンタイアにリミックスを依頼したり、ステレオラブがプロデューサーとして起用したりしていて、彼らが世界を跨いで活躍し始めた後にリリースされたのがアルバム

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シカゴポストロック再訪 Bosco+Jorge

シカゴポストロック再訪 Bosco+Jorge



2000年前後からアメリカのフォークシーンが注目を集め、アメリカンゴシック名の下にリリースされた中にこのアルバムがある。

かつてハリー・スミスが編纂したアンソロジー・オブ・アメリカン・フォークミュージックが98年にCD化、その続編がテーブル・オブ・ジ・エレメンツがリリースされ関心の高さを示した。(2014年にアナログでバラ売りでリイシューされた)。

戦前戦後のカントリーブルースやフォークが

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シカゴポストロック再訪 Joanna Newsome/Ys

シカゴポストロック再訪 Joanna Newsome/Ys



録音がスティーヴ・アルビニ、ミックスがジム・オルークという師弟、アレンジがヴァン・ダイク・パークスという豪華なメンツで製作されたジョアンナ・ニューサムのセカンド。

グランドハープの弾き語りという他にいない立ち位置ながら、現代のフォークロアを見事に表現した名盤。

幼い頃からアパラチアンフォークに触れていたということもあり、フォークの要素はありつつモダンかつファンタジックな世界観をもっている。

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シカゴポストロック再訪 Bundy K.Brown

シカゴポストロック再訪 Bundy K.Brown



今までアルバムを軸に紹介していたけれど、今回はひとりに絞って紹介。

トータス、ガスタ・デル・ソルの初期メンバーでディレクションズ、プルマンといったバンドを従えつつもジョン・マッケンタイアやジム・オルークほどの存在感を示す事が出来なかったバンディKブラウン。

プレイヤーとしてはアコースティックな面を持ちながら、リミキサーとしてシー・アンド・ケイクのthe cheech wizard meet

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シカゴポストロック再訪 The Sea & Cake/One Bedroom

シカゴポストロック再訪 The Sea & Cake/One Bedroom



シー・アンド・ケイクの新譜を聴くたびに感じるのが「新鮮なマンネリ」。以前友人にそう話したら苦笑された。
基本は変わらないバンドだけども、アルバムの一曲目は必ずバンドの新しい面を見せるのでそう感じる事が多い。

前作「ウィ」でのオーガニックな内容から一転、「ワン・ベッドルーム」ではエレクトロニクスをまぶしたアルバムになっている。前々作の「フォーン」をパワフルにした印象をもつ。

「ホテル・テル」

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シカゴポストロック再訪 Orton Socket/99 Exprosions

シカゴポストロック再訪 Orton Socket/99 Exprosions



シカゴ・アンダーグラウンド・デュオやアイソトープ217、ジム・オルークなどでコルネットを演奏するロブ・マズレクがモイカイからリリースした電子音楽アルバム。

エレクトロニカではなく電子音楽である。強いて言えば情緒感を無くした細野晴臣の「コチンの月」というか、レイモンド・スコットのようなドリーミーな雰囲気もある。

トータスやガスタ・デル・ソルを渡り歩いたバンディKブラウンや、トータスのジェフ・

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シカゴポストロック再訪 Jim O'rourke/Insignificance

シカゴポストロック再訪 Jim O'rourke/Insignificance



「ユリイカ」でのバーバンクサウンドはジム・オルークの知名度を広げ、多くの人がアコースティックな彼の側面を求め、幾多のフォロワーを生んだ。
そういった人たちが「インシグニフィカンス」でのギターロックな音を聴いて、目に見えるように潮が引いていく様を肌で感じることがあった。

初っ端からドライブしたギターが全開で、アコースティックなものをイメージして求めていた人たちが離れていくのも当然なのかもしれな

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シカゴポストロック再訪 Stereolab/Cobra and Phases Group Play Voltage in the Milky Night

シカゴポストロック再訪 Stereolab/Cobra and Phases Group Play Voltage in the Milky Night



寺山修司のタイトルからとった「トマトエンペラーケチャップ」、「ドッツ・アンド・ループス」と早いタイミングでジョン・マッケンタイアを起用していたステレオラブ。
このアルバムはジョン・マッケンタイアとジム・オルークというシカゴのキーパーソンのふたりを起用した意欲作。

シカゴのミュージシャンがまさに世界に羽ばたこうというタイミングでの起用はステレオラブ、ティム・ゲインの慧眼が光る。

テクニカルな

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シカゴポストロック再訪  Brokeback/Looks At The Bird

シカゴポストロック再訪 Brokeback/Looks At The Bird



ダグ・マッカムとノエル・クッパースミスによるツインベースデュオ。ダグ・マッカムはフェンダーの6弦ベースをかなりトレブリーに演奏していて、ベースというよりもギターに近いアプローチを取っている。

ファーストアルバムでは装飾も少なくシンプルな演奏だったけれども、ここではステレオラブのレティシア・サディエールとメアリー・ハンセンも参加して、バリエーションも豊かな内容になっている。
トータスでも発表さ

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シカゴポストロック再訪 Rebeca Gates/Ruby Series

シカゴポストロック再訪 Rebeca Gates/Ruby Series



オルタナ色が強かったスピネインズ解散後、ジョン・マッケンタイアなどトータス周辺の人たちが集まって製作されたソロアルバム。

とにかくレベッカ・ゲイツの気だるいボーカルにと寡黙なギターが魅力的。
一曲目のノエル・クッパースミスのベースが控え目ながら印象的な「ザ・セルダムシーン」のジャジーな三拍子のナンバーから引き込まれる。
「ルアー・アンド・キャスト」「イン・ア・スターオービット」でのジョン・マ

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シカゴポストロック再訪 Oval/Systemisch

シカゴポストロック再訪 Oval/Systemisch



オヴァルといえばドイツのユニットだけれど、なによりもシカゴのスリルジョッキーが配給しているのと、ガスター・デル・ソルでの客演ながあり縁は浅くない。

初期の「システミスク」やep「エアロ・デック」など、今の耳で聞くと思ったよりもリズムや和音があり、ポストオルタナティブみたいなノイジーさは希薄に感じる。

エレクトロニカといえばオヴァルと言う人も少なくないのではないだろうか。

エレクトロニカと

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シカゴポストロック再訪 Sam Prekop

シカゴポストロック再訪 Sam Prekop



ネオアコをブラッシュアップしたような音楽性の高さにびっくりした覚えがある。
当時、プロデューサーのジム・オルークが最高傑作と言っていただけあり、その後のサム・プレコップのソロと比べても完成度が高い。

全体的にジャズに寄せた音作りと、アンニュイな雰囲気をもつ。
「ショウルームス」「ソー・シャイ」でのヴィヴィッドなストリングス、プログレッシブな展開を見せる「ザ・カンパニー」などシー・アンド・ケイ

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シカゴポストロック再訪 Town & Country

シカゴポストロック再訪 Town & Country



ジム・オルークにとってこのアルバムの存在は、自分でやりたかった事のひとつだったのではないかと思う。ジム・オルークが同時期にリリースした「バッドタイミング」はジョン・フェイヒーを引用し、カントリーブルースやバーバンクサウンドのフォーマットを装いつつ、ミニマルなノイズを散りばめた力作だった。

しかし、タウン・アンド・カントリーのこのファーストでは、ポリリズムやミニマルな表現の中で、カントリーやフ

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シカゴポストロック再訪 Bobby Conn/The Golden Age

シカゴポストロック再訪 Bobby Conn/The Golden Age



不思議な人である。
世に言う奇人変人の類いの人ではあると思う。
まず振り返られる事がない人だとは思う。

迷書「モンドミュージック」言うところのアートスクールロックの項目に入れても違和感がないと言えばわかる人はわかるかもしれない…。

久しぶりに棚から出して聴いたものの、一曲目の「ア・テイスト・オブ・ラグジュアリー」は快活なブラスから始まるものの、その後の展開はセルジュ・ゲンズブールの「メロデ

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