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ECMを聴く Nana Vasconcelos/Saudades

針を落とすとナナ・ヴァスコンセロスのビリンバウの音色が聴こえてくる。あとを追うように入るストリングスの響き。ビリンバウの表情は豊かで、一本の弦を弓で叩くだけ(至極ざっくりとした説明だが)の楽器とは思えないくらい様々な顔を持つ。
このアルバムを最初に聴いたとき、予想していたものと大きく違っていてびっくりした。

ビリンバウの音色は土着的なはずなのに、対極にあるストリングスの音と馴染み、室内楽的な曲が構築されていた。
しかも作曲はナナ・ヴァスコンセロス自身(ジスモンチはストリングスのアレンジと一曲だけ作曲)が行なっていて、頭の中はハテナで埋まっていく。

とまあとにかく不思議なアルバムで、ブラジル音楽とも違った内容で、ジャンル分けし難いある種ECMらしいアルバムとも言える。

エグベルト・ジスモンチの「輝く水」はこのアルバムと同じく、ジスモンチとナナ・ヴァスコンセロスのふたりで音を構築しているものの、ふたりのブラジルという同じ出自ながらも、描いているものは異なる。

ジスモンチはテクニカルなギターと、それと同じくらい流麗なピアノを軸に構築されているものの、全体的に土着的な雰囲気がある。

ナナ・ヴァスコンセロスの奏でる音は民族音楽やワールドミュージックという言葉を超えて、ジャズとも違った彼だけの世界を作り出している。
ブラジル国内ではこういった表現は難しかったのではないだろうか。そう考えるとECMというレーベルが彼をジャズの世界にフックアップし、その後も起用し続けたのが面白い。

Berimbau, Percussion, Voice, Gong – Nana Vasconcelos*
Composed By – Nana Vasconcelos* (tracks: A1 to B1, B3)
Conductor – Mladen Gutesha*
Design [Cover Design] – Horst Moser
Engineer – Martin Wieland
Music By [Strings] – Egberto Gismonti
Orchestra – Radio Symphony Orchestra Stuttgart*
Photography By – Roberto Masotti
Producer – Manfred Eicher
ECM1147
1980年
https://www.discogs.com/ja/Nana-Vasconcelos-Saudades/release/1031702

https://itunes.apple.com/jp/album/saudades/281914565

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