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「めんどくさい」と、Moiがそこから始めようとすること。(後編)

世界にはさまざまなメニューが存在し、無数の飲食店が存在する。よりどりみどりだ。なんて素晴らしいことだろう。

と思いきや、必ずしもそうとは限らないようだ、ということを前回書いた。

どうやら人は、あまりにも情報が多いとむしろ選べなくなってしまうらしい。選ぶことは決断することであり、たとえどんなに小さな決断でもそれが積み重なればエネルギーは消耗され、疲弊するからである。そして、その先に待ち構えているのは「めんどくさい」の虚無である。

めんどくさいから〇〇でいっか。

異国でたくさん建ち並んだ飲食店の中からひとつを選ぼうとするとき、そこにしかない店や未知の味よりも、つい見慣れた看板や食べ慣れた味を選んでしまうとすれば、それは選ぶことによって消耗するエネルギーを最小限に食いとどめようとする本能のなせる業かもしれない。

世界的な照明デザイナーで、若い頃にフィンランドで修業した経験をもつ石井幹子は、フィンランドの第一印象を驚きをもってこう綴っている。「どこを見てもグッドデザインしかない」。初めてフィンランドを訪れたときの僕の印象もまた、同じようなものであった。選択肢の多さは、そのまま豊かさの指標たりうるのだろうか? 答えは「No」だ。

なぜなら確かにフィンランドは、東京に比べたら笑ってしまうほどモノも情報も、その選択肢は限られている。だがどうだろう、そこには自分が必要とするものが全部あるのだ!

さて、話を戻そう。「めんどくさい」の虚無の話である。

ここ数年、この「めんどくさい」がインターネットに対する意識にも大きく変化を及ぼしているのではないか、そう感じる。

「ネットは階級を固定する道具です」と警鐘を鳴らしているのは、『弱いつながり~検索ワードを探す旅』の著者、東浩紀である。では、固定されないために僕らはどう立ち振る舞うべきなのだろう。

そのためには、「旅」を通して偶然性に支配された「弱い絆」の世界に身を投ぜよ、と東は言う。そうすることではじめて、僕らは検索エンジンによって予測されえない「新しい検索ワード」を手に入れることができるのだ、と。

なるほど!面白い!と思いつつ、また同時にどこか違和感も感じていた。違和感の原因は、それが一貫して

ひとは誰しも検索せずにはいられない

という前提の下、書かれているからである。いや、著者の東浩紀や僕もふくめインターネット(というか検索エンジン?)黎明期を身をもって知っている世代にとっては、まさにその通りなのである。

実際、「つながる」という点でインターネットは革命的なテクノロジーであり、それを可能にしたのがほかならぬ「検索エンジン」の登場とその進化であった。検索することで「つながる」ことに僕らが夢中になってしまうのは、こと「つながる」ということに関して僕らがひどく苦労を強いられてきた時代の生き残りだからである。

このことについては、かつて誰かと待ち合わせすることはいまよりずっとスリリングであったこと、電話で彼女と話をするのにはまず彼女のお母さんという関門を通過せねばならなかったこと、あるいは同じ趣味の人間と出会おうと思えば「文通」くらいしか有効な手段がなかったことなど思い出してもらえれば十分だろう。

だが、物心ついた時には当たり前のようにインターネットがあり、検索エンジンといえばGoogleしか思いつかない世代にとってはまた違うのではないか?

これまでカフェをやってきた中で、フィンランドのモノや情報について僕はずいぶんと沢山の質問を受けてきた。それはお客様からの場合もあるし、またテレビやラジオ、新聞といったメディアからの場合もあった。

「〇〇みたいなものはどこで手に入りますか?」
「〇〇というお店で取り扱ってますよ」

「フィンランドで〇〇をしたいのですが?」
「それなら〇〇という旅行会社がよさげですよ」

「〇〇について知りたいのですが?」
「多分、それなら〇〇という本に詳しいですよ」

立ち位置的に、僕はフィンランドが好きだったり興味があったりする人とフィンランドのモノを売ったり情報を扱ったりする人たち、その双方と日常的に接する機会があったため尋ねられるままに返答していたのだが、そうした時しばしば感じたのは、

あれ? もしかしてこの人たち、検索とかあんまりしてないかも?

ということだった。というのも、しばしPCに張り付いてインターネットで検索すればヒットしそうな質問も少なくなかったからである。あるいは、詳しそうな人にとりあえず訊いてみようということだったのかもしれないが。

とはいえ、実際の話、Googleによって示される検索結果はあまりにも膨大だ。早速サイトに飛んでみたはいいが、知りたい情報とは似ても似つかない内容だったとか、検索結果の上の方に表示されているので質的に優れたサイトなのだろうと思いきや「中身薄っ!」みたいなことだってある。僕らのようなインターネット黎明期を知る世代の人間が、それでもちまちま検索を繰り返さずにいられないのは、かつてそうすることで期待以上の「恵み」を得てきたといういわば成功体験があるからだと思う。

PCを持たず、もっぱらスマホで済ますという人たちが増えていることも無関係ではない。あんな小さな画面では、とてもじゃないが腰を据えて検索するなんて無理である。いっとき、こうした人たちにとっての有効な検索ツールはツイッターであったりインスタグラムであったりした。いまもある程度そうかもしれない。とはいえ、「SNS疲れ」というワードが象徴する通り、開くと余計な「ノイズ」まで目に飛び込んでしまうこれらSNSがもはや万能とも言い切れなくなってきた。繰り返しになるが、

「疲れ」の先にあるのは、「めんどくさい」の虚無である。

じわじわと蔓延しつつある「検索めんどくさい」が、インフルエンサーと呼ばれる人びとや「まとめサイト」を活気づけている現在。上流からどんぶらこと流れてくる情報の中から、一番いいものではないが、ほどほどにいいものを拾い上げることで満足し、わざわざ上流にまで遡ろうとはしない。それは、異国で見慣れた看板や想像のつく味を選ぶ心理と変わらない。

それでも僕は思うのです。

インターネットは、必要な情報をそれを必要とする人のもとに確実に届けるべきだと。しかも、極力めんどくさくなく(とりたてて「セクシー」である必要はない)。

そこで、Moiはフィンランドに特化した情報のポータルサイトをつくります。

検索するのに疲れてしまったり、大きく口を開けた「めんどくさい」の虚無にストンと落ち込んでしまわぬよう、それはとてもとてもシンプルに、でも有用なものにしたいと考えています。同時に、そこはきっと「街」のような場所になるはずです

フィンランドが好き、興味ある、あるいはフィンランドのよさを伝えようと日々ビジネスに打ち込んでいる人、そのひとりひとりの声に耳を傾けつつ、ここがあってよかったと言ってもらえるようなウェブサイトをつくろうと思います。

ぜひ一緒に盛り立てて下さい。よろしくお願い致します。

では、以下11月7日の活動日誌です。

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「めんどくさい」と、Moiがそこから始めようとすること。(後編)

岩間 洋介(Moi)

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岩間 洋介(Moi)

2002年より2019年まで北欧フィンランドをコンセプトとするカフェ「moi」を経営していました。渋谷のBunkamura→荻窪、吉祥寺でのカフェ経営を経て、日本とフィンランドとをつなぎつつ自由な発想による〝居場所づくり〟を構想中。http://www.moicafe.com

誰かが淹れてくれたコーヒーはおいしい

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