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10月上旬の活動

10月4日は「シナモンロールの日」だった。とはいえ、ここ日本に「シナモンロールの日」があるわけではない。日本の北欧好きたちが、毎年スウェーデンとフィンランドの「シナモンロールの日」に便乗するかたちで盛り上がっているのである。自作のシナモンロール、お店で購入したシナモンロール、あるいは旅先で口にしたシナモンロールなど、今年もさまざまなシナモンロールの写真がSNSにアップされ大いに盛り上がった。もしかしたら本場よりも盛り上がっているのではないか。

ぼくはというと、自家製のフィンランド風シナモンロールをTさんから、またHさんからは東海大学の近所で売られていたというスウェーデン風シナモンロールをいただき、いつになくにぎやかな「シナモンロールの日」となった。いつもながら他人まかせのフィン活で申し訳ない気分。

フィンランド風
スウェーデン風


ところで、ふつう「○○の日」というと業界団体が主導して製品の普及や消費拡大を目的につくられることが多い。たとえば毎月29日の「肉の日」がよい例かもしれない。「肉の日」は、都道府県食肉消費者対策協議会と全国食肉事業者協同組合連合会とによって定められている。

それに対して、フィンランドの「シナモンロールの日」は国が制定したれっきとした「旗日」である。じっさい、この日に国旗を掲揚するひとがどれくらいいりうのかは別として。

しかし、フィンランドでこの「シナモンロールの日」制定をめぐって密かに業界団体が暗躍したという話は聞こえてこないし、そもそもシナモンロールの業界団体ってなんだよという話でもある。どういう経緯で「旗日」に定められたのだろう? おかしな国だ。興味は尽きない。国民食という意味でいうなら「サルミアッキの日」だってありそうなものだが。

余談だが、全国食肉事業者協同組合連合会の略称は「全肉連」というのだそうである。全肉連ってなんだか強そうだ。名刺交換のとき、おもむろに血のしたたったサーロインステーキとか差し出してきそうな迫力がある。「ちょ、頂戴します」とか言いつつもらってみたいものだ。


渋谷のバールボッサの林伸次さんが、完成してまもない新刊を送ってくださった。『世界はひとりの、一度きりの人生の集まりにすぎない。』という表題の短編小説集だ。ほんとうは「ご恵贈」とか書かなきゃいけないのだろうが、ふだん使い慣れない言葉なので居心地がわるい。同じく「ご愁傷様」とかも照れくさい。もっと自分の感情にしっくりくる表現で感謝や哀悼の気持ちを伝えられないものか。

それはともかく、今回の作品は前作以上に(ぼくの知っている)林さんらしさがあふれていてなんだかとてもうれしかった。こういう小説を、林さんはずっと世に出したかったのではないかなあ(勝手な思い込みかもしれないけれど)。

収められた作品のひとつひとつは小品だが、深夜のバーで長年たくさんの人間と接してきたからこその観察眼や洞察力が登場人物のキャラクターを描くうえで陰影をあたえているように感じる。とりわけ夜をあつめる王様の話がよかった。

あと付け加えるとしたら、本のサイズ(ふつうの単行本よりひと回り小さい)と手にした感じがいい。そして、表紙の写真が“チーム・フィンランド”のかくたみほさんの作品なのもうれしい偶然。

売れるということならば、恋愛がテーマのマニュアル本や自己啓発っぽい内容の方に軍配が上がるのかもしれないけれど、個人的には林さんにはこういう小説をもっと書いてほしい。そして、こういう物語をつくる作家がカウンターに立っているお店であったらいいなあ。

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