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雨の降る夏の日

世界中がため息のような深い息を吐いて、束の間の休息を味わっている。
今朝の庭は、そんな感じをうける。

この地に住んで一番変わったことは、「水の気配」に敏感になったことかもしれない。当然だろう、こんな砂漠地域では命に直結すること。今はもうそんな事はないのかもしれないが、昔はインディアン部族の中には必ず水の出る場所や水の通り道が分かる人がいたという。北米大陸でsacred place聖地と呼ばれる場所はほぼ必ずといっていいほど、水場あるいは水が近くにある場所というのも、そう考えれば当たり前かもしれない。


夏の日中は40℃ちかくまで上がることもあるから、毎日スプリンクラーを日が出るまえの早朝にしっかり回している。そうやって水を撒いているし、高地なので朝晩の気温が大分下がるのだが、それでも夏はそんなホッとできる時間すらも短い。日が昇ってくると草木だけではなく世界中がじっと「耐えて」いるのが感じられる。あっという間に湿度は20%以下になって、・・・たとえそんな数字は分からなくても皮膚や口の中がからからになることで「水がないんだ」と身体の細胞全てで理解する。

ちょっとした夕立くらいでは文字通り「焼け石に水」。というか、気温が高いところでの散水や一瞬の雨は、植物たちには逆に辛いらしい。


昨日、今日と、この時期には珍しい冷たい空気を運んできた前線がかかっている。昨日の強い雷雨につづいて、思い出した様に時々雨が降る。気温だけではなく地温も大分落ち着いたのだろう、今朝の芝も、野菜や花も、そして木々も深呼吸している。
暑さが辛いのは人間や動物だけじゃない。植物だって一緒だ。
そんな当たり前の事が、今日は世界を覆う水の気配を介して届いて来る。なんだか今なら植物に話しかけてみたら気持ちが通じそうだし、なんだったら返事をしてくれそうだ。


明後日からまた真夏の日射しと気温が戻ってくるらしい。
夏は夏らしい気温でないとこれまた人間社会も植物も困るのだろうが、それでも、この束の間の休憩時間が続いたらいいのにな、なんて思ってしまうんだな。
また、小雨がぱらつきだしている。




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