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「デジタルシャーマン・プロジェクト」が第20回文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門にて優秀賞を受賞しました

本日ICCにて記者発表会が催されまして、「デジタルシャーマン・プロジェクト」が今年の文化庁メディア芸術祭、エンターテイメント部門にて優秀賞を受賞しました。

http://festival.j-mediaarts.jp/

シンゴジラやPOKEMON GOといった2016年を代表するエンターテイメントに自作品が紛れ込んでいるのがにわかに信じがたいのですが、選出いただいたことを本当に光栄に思います。並びがカオスすぎる。

ド素人のところから様々な方に作品制作をサポートいただいたおかげで、このような賞をいただくことができました。ありがとうございます!
これまでの活動をさまざまな形で支えてくださった皆様に改めて感謝申し上げます。

デジタルシャーマン・プロジェクトとは

科学技術が発展した現代向けに、新しい弔いのかたちを提案する作品です。家庭用ロボットに故人の顔を3Dプリントした仮面をつけ、故人の人格、口癖、しぐさが憑依したかのように身体的特徴を再現するモーションプログラムを開発しました。

このプログラムは死後49日間だけロボットに出現し、擬似的に生前のようにやりとりできますが、49日目にはロボットが遺族にさよならを告げてプログラムは消滅します。このように、イタコのように故人が「憑依」したロボットと遺族が死後49日間を過ごせるように設計されています。

この作品をつくるきっかけになったのは2015年2月に実の祖母が亡くなったことで、葬儀という弔いの儀式がもたらす残された人々への機能を実感して制作に至りました(制作時にとても影響を受けた、友人の副業住職の方への取材はこちら)。
葬送の営みを通して日本人特有の生命や死の捉え方を探求するリサーチプロジェクトとして、現在も実験を行なっています。

●東京大学で開催されたTEDxUTokyoで作品について解説している動画はこちら

●作品URL
http://digital-shaman-project.tumblr.com/

●SENSORSで執筆した制作経緯
【デジタルシャーマン武者修行記】 #1 市原えつこがテクノロジーで挑む「死と弔い」

ICCでの展示現場(撮影:黒羽政士)


気になる贈賞理由

正直完成度としてはまだまだの作品なので「何かの間違いでは・・・」思っていたのですが、工藤さんが書かれた贈賞理由を読んで腑に落ちました。

最先端技術の優位性に依拠した「目新しさ」の追求ではなく、あるテーマ、コンセプトの具現化のためのメディウムとしてテクノロジーを用いること。斬新なビジュアルによって脳に刺激、快楽を与え、ある時は視覚を通して身体までをも拘束していく先端メディア表現の多くと比較すると、市原は生々しい「生」の象徴たる身体にどこまでも寄り添い、デジタル技術を魔術的、呪術的に用いることで人間の本質的な欲望、そして感情や感覚を呼び覚まそうとしていく。それは「現代」という時代に縛られた人間の身体と意識を解放する試みとも言えよう。死という生命固有の機能に個々の記憶を参照させ、いくつもの「物語」を生み出していく本作は「作品」としての完成度よりも、そのコンセプトに価値がある。テクノロジーがいくら進化しても、人間はつねに物語を欲し、物語によって現実に対応していく存在であることを改めて認識させてくれる作品である。(工藤 健志) - http://festival.j-mediaarts.jp/download/20jmaf_award_winning_works_jp.pdf

テクノロジー自体を目的化するのではなく、呪術的なメディウム・媒体としてテクノロジーを利用するというのは自分の制作スタンスとして大事にしていることなので、コメントしていただいてとても光栄でした。これまでの活動の背後にあった本質的な部分を言語化していただいて、じーんときておりました。。

また、本日の記者発表会で主査の東泉さんが総評として話されていた内容が個人的にも共感することが多く、心に残ったのでメモさせていただきます。

「エンターテイメント部門はどの部門にも当てはまらない表現の受け皿になる部門です。今回の受賞作品はそれぞれやってることはぜんぜん違うけど、一貫しているのはテクノロジーの使い方がメカニカル&エンジニアリングの力技というより、それを使う人間の知覚をいじっているということ。それこそが、これからの時代の流れになっていくと思うし、アプローチとして本質的に感じました。
その一方で、岡崎体育さんやシン・ゴジラといったメジャーな作品も出てきて、方向性が多様すぎて審査はガチな大バトルでした。

今年に限ったことではないですが、この2〜3年、従来メディアアート的手法とよばれたものが『新しい、新しい』と言われながらも手法が固定化し、それが商業的な二次利用として消費され尽くしまったかなという感じがありました。
メディアアート的なるものに新味を感じられなくなってくるのに呼応して、娯楽作品が生まれたり、一方で新しい技術開発の方向性が出てくると、最初はむき出しの技術が新しく見えて、それに慣れてくるとそれをさらにひっくり返す試みが出てきて、それが陳腐化してきたらまた新しい技術が出てきて・・・という疾走ゲームを繰り返してきたのですが、そのベースがちょっと変わる節目なのではと感じたのが今年のメディア芸術祭の審査でした」


制作にご協力くださった皆様

また、本作の制作にあたり素晴らしい方々にご協力をいただきました。
以下、制作関係者を挙げさせていただきます。

【デジタルシャーマン・プロジェクト】

企画,ディレクション:市原えつこ
アプリ・モーション開発:Uco
企画サポート,映像出演:佐藤 詩帆 (Shiho Satoh)
ロゴデザイン:Yurie Hata
タブレットUIビジュアルデザイン: 猪瀬 まな美 (Manami Inose)
写真撮影: 黒羽 政士 (Masashi Kuroha)
映像監督: 高井 浩司 (Takai Hiroshi)
映像撮影:Jinam/Akifumi Watanabe
モデル:藤井直敬,中島慎太郎,市原えつこ

支援:文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業(平成27年度)アドバイザー:畠中実、伊藤ガビン
http://digital-shaman-project.tumblr.com/


受賞展は9月に初台ICC&オペラシティアートギャラリーで開催

ちなみに今年のメディア芸術祭は3月に受賞発表、9月に授賞式とこれまでより後ろ倒しのスケジュールとなっています。
記者会見でも質問があったのですが、これは応募作品の急増にあたり審査のクオリティの担保のための時期変更とのことです。


とんだスピリチュアルクソ野郎ですが、がんばっていきます。今後とも何卒よろしくお願いいたします!!!!!


文責:市原えつこ

1988年、愛知県生まれ。早稲田大学文化構想学部表象メディア論系卒業。学生時代より、日本特有のカルチャーとテクノロジーを掛け合わせたデバイス、インスタレーション、パフォーマンス作品の制作を行う。主な作品に、大根が艶かしく喘ぐデバイス《セクハラインターフェース》、虚構の美女と触れ合えるシステム《妄想と現実を代替するシステムSRxSI》、脳波で祈祷できる神社《@micoWall》等がある。2014年《妄想と現実を代替するシステムSRxSI》で文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門審査委員会推薦作品に選出。

http://etsukoichihara.tumblr.com/

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