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スペイン社会党による『女性の現実を抹消する理論に対する反論』(翻訳)

(※2021/12/7:翻訳大幅改訂)

注:この記事は、スペイン社会党の声明を翻訳したものです。声明で使用されている定義は、本キャンペーンや 英国内で使用されている定義とは必ずしも一致しません。私たち(編注:英国女性団体 Woman’s Place UK)は、スペイン の声明と、この複雑な問題を説明するために使われた言葉を忠実に翻訳したものとして、これを公開します。
2020 年 6 月 9 日、スペイン社会党(PSOE)の連邦執行委員会は、党内のすべての組織に向けて「女性 の現実を抹消する理論に対する反論」と題した声明を発表し、連立政権の左派部門や社会全体で提唱されている性に基づく権利(スペイン憲法で認められている)と「ジェンダー・アイデンティティ」理論 から生じる対立についての立場を明らかにした。声明は次のような紹介で始まっている。

親愛なる同志諸君へ
「ご存知のように、セックス(Sex =身体的性別)や ジェンダー(Gender =社会的性役割)などの基本 的なフェミニストの概念の使用と混乱、時には隠された意図を持って使用されることについて、論争が 過熱しています。学術界や活動家の間で広まりつつあるいくつかの理論(特にクィア理論)は、生物学的な性別(Sex)の存在を否定し、女性の物質的な現実をぼやけさせ、曖昧にしています。生物学的 性別(Sex)の存在を否定するならば、この生物学的事実に基づいて測定さ れ、構築される不平等を 否定することになります。 このような理由から、私たちはこの文書を作成し、議論と政党としての私たちの立場をまとめました。 皆様のご参考になれば幸いです。」

スペイン語を話すドミニカ人作家のラケル・ロサリオ・サンチェスは、この文書の翻訳を志願した。 これは、この政治的トピックが近隣諸国の社会主義政党の中でどのような方向に進んでいるかを英語を 話す聴衆に伝えるためのものである。


SEX(身体の性別)は 生物学的事実であり
 GENDER は 社会的構築物である


■ Sex(セックス)は 生物学的事実である。Sex は、生物学的、生理学的な身体的特徴を指し、人間を男性や女性 として定義し、区別するものであ る。女性は生まれ付いた身体の性別によって、この世における境遇が制限される。 そこから女たちが引き受ける領域と行動様式が構築され、境界が定められる。Sex(生物学的性別)は、女性が持つ権利や市民権の等級を決定し、最も極端な場合には、攻撃、嫌がらせ、殺害を被るか否かさえも決定する。


■ Gender(ジェンダー)は、出生時の生物学的性別に付随した社会的構築物である。つまり、社会的(文化的な役割)、職業、固定観念などの集合体であり、男女に差別的に割り当てられ、期待と機会を構成する。Gender (社会的性役割)は、労働の性的分業(男性は生産的、女性は生殖的)と、領域(男性は公的、女性は私的)を固定し、女性に対する男性の優位性を前提としている。


■ ジェンダーは分析手段であるが、今やある種の運動によって生物学的性別の概念を置き換えるために利用されて いる。ジェンダーがセックスに挿げ替えられたならば、男性に対する女性の構造的不平等という状況が曖昧になっ てしまう。ジェンダーは、男性と比較した場合の女性の抑圧、不平等、従属を暗黙のうちに伝える分析のカテゴリー。 だからこそ我々フェミニスト社会主義者は、女性の救済を達成するためにジェンダーの撤廃を求めているのだ。


■ 女性は、生物学的女性に生まれたが故に殺され、少女は性器を切除され、生物学的女性として生まれたが故に 社会のケア役の責務を押し付けられ る。女性は生物学的女性に生まれたが故に強制的に結婚させられ、個人の自由意志を否定され る。女性は生物学的女性に生まれたが故に選挙権を否定され、富への権利が妨げられ、高確率で貧困と不安定に苦しむ。差別や男性による女性への暴力、女性や少女の市民権が十分に認められていない状況は、このような性別(sex)に結びついた構造的不平等に基づいているのだ。


■ 身体の性別(Sex)を否定すれば、この生物学的事実に基づいて測定され構築される不平等もまた否定されてしまう。



Sexual Identity
または Gender Identity という語句への
注目すべき作為


『生物学的性別:sex』と『自認する生物学性別:the sex with which the individual identifies 』が一致しない場合、 これを『Transsexual:性転換症(身体性別違和者 ≒ 性同一性障害者)』という。


■『Gender Identity(ジェンダー・アイデンティティ): 社会的役割自認』はつい最近の用語で、生物学的性別の本質とは遠く離れており、生物学的性別との不一致を必ずしも伴うものではない。つまり、とある個人が男性の 体を持っていても女性のように感じることが可能であり、逆もまた然りだ。


■ これらの用語は、既に様々な法的枠組みの中で使われている。
・3 月 15 日付の法律 3/2007 では、人々の性別に関連する記載の登録修正を規定して 「gender identity:社会的性役割自認」と語っている。


・憲法裁判所の判決(99/2019, of 18 July 2019, 違憲性の問題 1595-2016)では、
『生物学的性別の自認:sexual identity(セクシュアル・アイデンティティ ) 』と 『社会的役割の自認:gender identity(ジェンダー・アイデンティティ ) 』を区別することなく使用している。

・同様に、スペインの自治区では、「平等な扱い」と「差別の無いこと」に関する法律の中に、 両方の用語を使用している。

・EU では、イスタンブール条約(第 4.3 条)に登場し、
『国連女性機関:UN Women』では複数の文書にこれらの用語を含んでいる。


■『 sexual identity 』や『 gender identity 』の概念は厳密には同一ではないのだが、国内、および国際レベル の法的文書などで、区別されずに用いられてきた。然るに、最近、注目すべき使用法が『クィア・アクティビズム』によって作出されており、学界やある種の社会運動では、両用語の使用や、新たな曖昧な概念の導入をめぐって、 その傾向が強まっている。これらの用語を混同して使った結果、『女性』という法的概念や政治的主体そのもの が危険にさらされているのだ。


■ したがって、差別をせず、個人の自由な自己表現と尊厳を保証するという条件での使用法と、「女性」という 言葉に攻撃されていると感じ、さらには女性の現実を否定して排除しようとする特定のグループによって行われる これらの概念の注目すべき使用法の、法的範囲を区別することが重要なのだ。


■ スペイン社会党がトランスセクシャル(身体性別違和者)を応援し、彼らの権利獲得を成就する闘いを支援 してきたことは、疑う余地がない。私たちは、彼らの市民権と差別を受けない権利の完全な復活という要求を汲み上げるものである。


■ これは、生物学的な性別や本人が望む外見とは無関係に、とある個人が男性のように感じるか女性のように感じ るかを問うものではない。これは、とある感情とその表現がどのように法制度に移されるのか、特にそれが時間の経過とともに安定しない場合にはどのように法に移し換えるのか、そしてこれを法律に制定することの意味は何か、 ということを問うているのだ。


■感情の正確な表現を、どのように法的に認定するのか。トランスの人々の個人的な権利の尊重は、確実性ある 法的原則の枠組みの中で考慮されなければならない。


■ 我々は、個人の感情、表現、意思表示に対し、自動的に完全な法的効力を付与しなければならないと主張する 立場に反対する。いわゆる「性的アイデンティティの自己決定権:right to the self-determination of sexual identity」 や「性的自己決定権:right to sexual self-determination」は、法的合理性に欠けている。


■ 完全な法的効力を得るには、正式に認定された「トランスセクシャルの安定した状況」が存在しなければならない。 これは、人の性別に関する記載の登録修正を規定する 3 月 15 日付の法律 3/2007 や、LGBTI 集団の権利、平等で 分け隔てのない(non-discrimination)取り扱いに関連するその他の、より最近の自治法によって確立されたもの である。



女性の定義を変え
その現実を否定する理論の実質的なリスク


■ もし、とある男性が、ある瞬間に「女性を感じる」と表現するだけで、他者を考慮せずに済むならば...

・統計データの収集にどのような影響を与えるだろうか?
 我々は生物学的性別によって情報を集計しているが、これは問題(労働力と賃金の不平等、貧困の女性化、 ガラスの天井、性差別的暴力 ...)を理解し、それらの問題に取り組むに必要な公共政策を決定するための基本である。


・性暴力に関する法律への影響は?
 女性自認の男性が女性を虐待しても、罪に問うことはできるのか?

・平等政策による議員の男女比のバランスへの影響は?

・女性用の避難所や拘置所などの、公的資源の利用への影響は?

・スポーツへの参加や競技への影響は?



女性性は 個性ではない


■ 女性性は個性(identity)でも本質でもない。ましてや、共同体の一要素でもない。 人類の半分以上を占めているのは女だ。 女性は生まれる際の生物学的性別によって、この世における地位が確定する。それによって、彼女たちが引き受け る領域と行動様式が構築され、定義される。生物学性別が女性が持つ権利と市民権の等級を決定し、最も極端な 場合に は、殴られたり殺されたりすることなく生きていけるか否かさえも決定す る。フェミニズムは、女性と男性 の平等な権利、及び、女性の完全な市民権と女性の解放を求めて戦う。フェミニズムの政治的主題は女性なのだ。

■ 差別に反対し、包括的政策を支持する闘いは、民主主義国家の義務である。 しかし、その使命を拷問の如く用い、男女平等の利益を損なう口実として悪用してはならない。社会主義者として 私たちは、平等と多様性の尊重で、より良い民主主義を作っていけるよう援護する。

■ クィア活動主義は、政治的・法的主体としての女性を曖昧にし、女性の権利、男女平等( equality between women and men)の公共政策、そしてフェミニストの社会運動の成果を危険に晒している。

■ スペイン社会党からは「Transsexual:身体性別違和者(≒ 性同一性障害者)」に対する配慮と敬意を表し、彼ら の要請に応えて保障と法的確実性を提供することを約束する。

■ 我々は社会主義者としてフェミニストの立場を擁護し、この国会審議期間中にこれらの見解を立法活動として展開する。

2020年7月16日

(機械翻訳)元記事↓

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