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ぶくめも #3 ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

図書館に予約したのは確か去年。
ようやく順番がまわってきたベストセラー。
その間に、ブレイディみかこさんの著書を2冊(『THIS IS JAPAN―英国保育士が見た日本』『女たちのテロル』)借りられたほど。
同じ著者の本でも人気にバラツキがあるんやな。

あらすじはオリエンタルラジオ・中田敦彦さんの「YouTube大学」に詳しいので、そちらにおまかせするとして、
以前にオーウェン・ジョーンズ著『チャヴ 弱者を敵視する社会』を読んでいたのと、
ブリット・ポップ好きだったおかげで、ブラーとオアシスの「中流階級」対「労働者階級」の構図は頭にあったが、
あくまで遠い海の向こうのことと捉えていた。

それが、日本人で子育て真っ只中の保育士であるブレイディさんのポップな文体もあってか、これまでよりはずっと身近に感じられたのは確か。

「チャブ」(無礼で粗野な振る舞いに象徴される白人労働者階級の若者)、
「ホワイト・トラッシュ(白い屑)」(白人労働者階級)、
「ソーシャル・アパルトヘイト」(富者と貧者の棲み分け)、
「フォスター・ファミリー」(里親)、
「Hi-Vis(High Visibility)」(黄色いベスト:視認性の高いガテン系作業ベスト)などなど、
文中に出てくるこれらのことばを並べるだけでも、今の英国の状況が浮かびあがってくる。

この黄色い本の中身は、元底辺校と呼ばれた公立中学に通うブレイディさんの長男と、それを取り巻く「日常」。
シティズンシップ・エデュケーション(市民教育)なんて、日本の中学校で取り上げるか?
せいぜい、公民か道徳の授業で少し触れるかどうか。
あっても、本質的なところまで迫ることはないやろうね。
そもそも、学校や教員がそこまでの知識を持ち合わせいるかもあやしい。知らんけど。
というのも、そこまで強くリアリティや感情を呼び起こす「日常」がないからやろう。

数か月前、ジャズ、ソウル、ヒップホップを愛する星野源さんが『オールナイトニッポン』で「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」について語っていた。
いつものコサキンイムズを抑え、まじめなトーンでことばを電波に乗せていたが、はたしてどこまでリスナーに届いたんやろうか。

書店へ行けば「日本礼讃」を謳ったヘイト本が積みあがっている。
偏った帰属意識が社会を分断させ、差別へとつながっていく。

あるねんで「日常」。
目を瞑らんかったら、ホンマはね。

ブレイディさんは問う
ヒラリー・クリントン「(黒人、ヒスパニック、女性、同性愛者に)あなたたちのための政治を行います」
ドナルド・トランプ「アメリカのために政治をやる」
どちらが包摂的(インクルーシブ)か?

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