IF 第9節 「ヒト思いに」

写真があった。
写っているのは3人。
埃をかぶっていた記憶が少しずつ、断片的に、蘇る。
きっとこれが僕だ。
きっと彼らが僕の両親だ。
確証はないけど。
自然と涙がこぼれた。
割れた窓の隙間から優しく木漏れ日が差した。
あるはずの家族のかたちがそこにはあった。
孤独を感じたことはないけど妙に寂しくなった。

小屋を後にした。
写真を木枠といっしょに大事に抱えて、いつもの寝床まで戻った。
見慣れた顔が待っていた。
でも
僕の帰りを喜んでくれたのは僕と同い年の彼だけ。
彼の母親はどこか物憂げな顔をしてた。
嫌な予感がした。
だけど
できるだけの普段通りを装い、僕は「ただいま」といった。
なにか明るい話題で雰囲気を変えようとおどけたりもした。
それでも彼の母親の面持ちは、どこかよそよそしく、僕を恐れているようだった。
「あなたに本当のことを話す時が来たわね。」
彼女は唐突にそういった。
僕の後ろで僕にしがみつく友達。
なぜか、この後起きることに思いを巡らすと眩暈がした。

母親は今晩、ここに来てくれと言い残して足早に姿を消した。



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