バスケ素人おばはん おばはん仲間を得る(11/18 千葉ジェッツvs大阪エヴェッサ)

共感(きょうかん、英語:empathy):
他者と喜怒哀楽の感情を共有することを指す。 もしくはその感情のこと。 
(Wikipediaより引用)

人は共感を求める生き物である。

長男を産んで育休中のころ。
夫の仕事はたいそう忙しく、0時前に帰宅することはほぼなかった。
私はというと、両家の実家も遠く、近所に頼れる友達も知り合いもいない、いわゆる「ワンオペ育児」をしていた。

夫は土曜出勤も多く、話す機会は少ない。
大人と話をしない日々。
もやもやする。

そんなとき、職場に遊びに行き同僚とランチをした。

前職で一緒に働いていた女性たちは、みな仕事ができ、自立心も強く、優しく、そこそこワイルドで、気持ちのいい人たちばかりだった。

働いているときから、彼女たちとのランチは刺激と爆笑の連続でとても楽しかったのだが、育休中に行ったランチは、いつもの何倍も楽しくて、心が潤った。
カッサカサに乾燥していた心に高保湿化粧水が染み込むような、そんな潤い120%な感覚。

大人との会話という意味では、夫との会話でもいいはず。だが、そのランチでは夫との会話では満たされないなにかがあった。
なにが違うんだろう。
夫と女性同僚との違い。
それは「共感」だった。

先に言っておくと、我が夫の共感偏差値はそれなりに高い。
それは彼がもともともっているものでもあるし、私がその都度
「今ほしいのは答えではなく共感だ!共感しろ!」
と公明正大に訴えるからでもあるのだが、とにかく夫だって共感はしてくれる。
だが、夫と女性同僚たちとの間にはとても大きい差があった。

男女でくくるのは好きではないが、全体的な傾向として、男性より女性のほうが共感する頻度が強い。
リアクションも大きい。
(おばはんになると声も大きい)
自分の発言にたいしての反応が大きいとそれだけで嬉しい。
打てば響く感覚。
誰かが話したことに相槌をうち、笑い、共感しあう。
共感を通して感じる幸せ。

夫との結婚生活にも子育て生活にもそこそこ満足していたが、それだけでは満たされないものはあり、そしてそれはとても自然なことなのだ、ということをあのランチは気付かせてくれた。
女友達や女同士の会話。つまり「共感」というのは、自分が思っているよりも自分の心にとって大事で必要なものらしい。

その後、長男は保育園に入り、次男も生まれた。
細く長く同じときを過ごすことで保育園ママたちとも言葉を交わすことが増え、近所には気心知れた友達がたくさんできた。
今も三男の育休中なのだが、長男のときのような孤独感はまったくない。
ママ友社会も、一部のおかしな女に巻き込まれさえしなければ、ほとんどの場合、愉快で楽しく心強いのだ。

そんななかでも仲良くなったママたちがいる。
仮にYちゃんとKちゃんと呼ぼう。
彼女らファミリーとは保育園が一緒で、男兄弟をもつ親同士でもあり、定期的に一緒にキャンプに行くキャンプ仲間でもある。

そんな彼女らが、ジェッツ戦を見に行くという。
三度の飯より千葉ジェッツな我が家は、その流れに便乗し、共に観戦することにした。

おばはんは用意周到

私はこれまでの観戦経験を彼女らに伝え、
「子どもを黙らせるための食べ物をたくさん用意しておくように!」
と事前に伝えていた。

今回は自由席だったので席確保のためには早くから並ぶ必要がある。つまり試合開始までが長い。
試合も1時間以上になるため、集中力のない子どもたちは途中で飽きてしまうことも多い。
会場でもフードやドリンクは購入できるが、正直子どもらを長時間黙らせておけるだけの量も品数もないし、あんな長蛇の列にいちいち並んでなどいられない。
アリーナ内にはコンビニもない。
持ち込みのおやつはファミリーにとってなによりも重要で必要不可欠なものなのである。

ちなみに千葉ジェッツの試合は、飲食持ち込みOKである。
シーズン開始前に出た観戦ルールには「持ち込み不可」とあったのだが、Twitterで「持ち込み不可はちょっと困る…」という声がたくさん出て、このルールは早々に撤廃された。

こういう場合、多くが「ルールなので会場で買ってください」と無理やり騒動を終息させることも多々あるだろう。
だが、そこで立ち止まり、当初の自分達のルールを潔く撤廃。
自分達が当初決めたことでも、反応があれば再検討して自分達の考えを変えることができる。
変化は勇気にほかならない。
さすが、それでこそ我らが千葉ジェッツ。

話をもとに戻す。

彼女らには事前に「おやつやパンを買っておくように!」と伝え、我が家もコンビニで買ってから会場入りした。
だが、彼女たちの事前準備は私の想像を越えていた。

おうちで作ってきた大量のおにぎり、
おうちで揚げてきたポテト、
どこかで買ってきたたこ焼き、
アリーナで追加購入した飲み物や食べ物、
大量の大袋お菓子たち。
そしてそれを他家族の分まで用意しておく気配り力。

これぞまさにおばはん!
おばはんは用意周到。
おばはんは事前準備を怠らない。
子育てという最高難度の臨機応変力が求められる世界で男兄弟を育ててきた肝っ玉母さんたちは、常にあらゆる事象に備えている。
そしておばはんは隣の家族の腹をも満たそうとする慈悲の心をもっている。
(我が家もおにぎりをいただいた)

想像以上の事前準備に私は笑う。
彼女らも笑う。
友達との観戦、なんて楽しいのだろう!

オープニングフライトを楽しむ

そうこうしているうちに選手がバラバラとコートに入り、各自シュート練習やストレッチなどをし始める。
彼女らにとってははじめての観戦なわけだが、やはりサッカーや野球と比べると選手が近いのでそれにまず驚く。
2階自由席でも十分見れると喜んでいる。

試合観戦が好きで「めっちゃ楽しいよ!」と宣伝していた身としては、彼女らが楽しんでくれているかはとても気になるところなのだが、しめしめ、いまのところ、感触的にはいい感じ。

そしてオープニングフライトがはじまった。
私は試合開始一時間前のオープニングフライトがとても好きだ。
会場が暗転し、みんなのライトでピカピカになる会場。
何度見てもかっこいいプロジェクションマッピングに、テンションの上がる音楽。
踊るチアさんとジャンボくんと太鼓でビートを刻むカツノリ。
ド派手な選手入場。
ワクワクする感覚!

友人たちもその感覚があったらしい。
「やばいね。なんかウワーッてアドレナリンがでる感じがするね。ちょっと鳥肌…」と彼女らのテンションも上昇気流に。

その後、試合開始までの時間、千葉ジェッツの歌を聴きつつ、改めてここまでの感想を聞いてみる。

・腕につけているライトが音にあわせて光るのがすごい!おもしろい!欲しい!
・音楽とかダンスとか炎がすごい。テンションがあがる。
・相手チームの選手入場と自チームの選手入場との差がすごい。こんなに塩対応でいいのか。
・小松菜ハイボールうまい
など。

ホームとアウェイの差

彼女らの感想にもあるように、私もはじめて試合をみたとき、ホームチームとアウェイチームの演出の差に驚き、同じような感想をもった。
ダース・ベイダーの音楽とともにDJの控えめなトーンで紹介されるアウェイチームの選手たち。
それに対してド派手に登場する千葉ジェッツの選手たち。
試合中も相手チームのフリースローでは、モニターに堂々と「BOOOOO」とブーイング指示がでる。

子どもの頃から運動やスポーツの現場では、「フェアプレー」や「礼節」などを教えられてきた。息子のミニバスでも自チームだろうが相手チームだろうが、フリースロー時は集中しやすいように静かに邪魔にならぬよう配慮し、対戦相手にも敬意を払うよう求められる。
ブーイングなどはもってのほか。
なはずである。

それなのに。
スポーツが商業的な要素をもった途端、当たり前のようにあからさまな身内びいきになる。
これまでのNGがとたんにOKに変わる。

アマチュアスポーツとプロスポーツの違いについて、私は良いも悪いも判断はしない。
最初こそ驚いたが商業的にはその演出がスタンダードなのだろうし、それもショーのひとつとしては盛り上がるのだろう。NBA文化を真似してるのもあるのだろうし。

ただ、なんというか。
学生時代にさんざん言われてきたことと180°違う文化を堂々と見せつけられると
「人間の本音と建前」
みたいなものをしみじみと考えてしまう…。
どこにいったのよ、礼儀、礼節、フェアプレー(笑)

試合開始!富樫大活躍

ここまで、彼女たちおよび子どもたちの反応は上々。

そんななか、試合ははじまった。

初めて試合を見る人にとって、わかりやすいのはやはり富樫。
この日も司令塔として大活躍。

速い。
とにかく速い!
ドリブルしてたらあっという間にピゅーっと中に入ってシュートしたりパスしたり。
(感想があまりにも素人でスミマセン…)
そのスピードにびっくりするKちゃんとYちゃん。

大きさがモノをいうバスケの世界で、大きな人たちに囲まれているというのに、何故、彼はシュートを打てるのだろう…。

前評判もあるだろうが、やはり小さい人が大きい人相手に活躍するという構図はインパクトがある。
観戦後に聞いたおばはんMVPはやはり富樫だった。

勝利を共有できる喜び

試合後、友達たちに改めて感想を聞いた。
「大阪も千葉もヘッドコーチがかっこいい」
「船橋にこんな面白い空間があったとは!」
「夢中で応援できてマインドフルネス感がすごい」
「また見たい!」
「やっぱり田臥が見たい!」
という最高のコメント!

嬉しい。

自分の好きなものを自分の好きな人たちと共有できる喜び。
家族とも毎度楽しんでいるけれども、男子しかいない我が家、共感のムーブメントは少ない。
おばはん同士でわいわい観戦し、好きなものを共有し、共感しあえるのは本当に楽しい。

私は「共感」で救えることというのはこの世の中、たくさんあると思っている。
無差別殺人をする人や他人を傷つけてしまう人の根本には「誰もわかってくれない」という孤独があって、その心の孤独感が煮詰まりすぎて、悲劇をうむのではなかろうか。
そこで誰かが寄り添って共感したり、話をきいてあげることができていれば、もしかしたらギリギリのところで防げる事件もあるのではないか。
(もちろんそれで全部は解決しないし、寄り添うことが難しい性格だからこそ共感を得られず孤独に陥ってしまうのかもしれないけれど。)

ダークな感情を共感でうめるのはお互いにハードルは高いかもしれない。
けれど、私たちのおばはん観戦ツアーのように、ただただ楽しみを共にわかちあうだけで、こんなに満たされた気持ちになれる。
今日あったイヤなことや残念なことも忘れて、誰かと笑いあえるのはとてもとても幸せなことだ。


かといって共感のためにわざわざ友達と観戦する必要もない。
私は盛り上がっている試合では、選手のプレーより観客の声援で会場が一体になるのを眺めるのが好きだ。
同じ空間に同じ感情をもつ人たちがいて、一緒に一喜一憂している。
それが楽しいしおもしろい。
別にさみしい生活をしているわけでもない私でも、会場に満ちる「共感」でこんなにも満たされる。
ほんと、ちょっと心がさみしくなってる人にはBリーグ観戦を全力でおすすめしたい。

なんて、すこし真面目なテイストになってしまった。

そんなこんなで、新たにおばはんたちをバスケ沼に引きずり込むことに成功した私は、いそいそと3月の秋田戦&栃木戦のチケットをゲットし、第2回おばはん観戦ツアーに備えるのであった。

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