田老町防波堤2

防災士が考える、災害に対する心構え

今回の記事は、災害に対する心構えの基本をまとめてみます。

災害が起きる前に、どのように備えていくか。

そして、事が起きた時にどのように動けば良いのか。

それを考える一助になれば幸いです。


今回の目次は

①防災の限界

②防災と減災

③自助・共助・公助

です。

具体的な災害対策は、次回以降に書いていきたいと思います。


①「防災」の限界

最初から何というタイトルだ…と思うかもしれませんね💦

まず言葉として、防災とは、

「被害を出さないようにする(ゼロにする)ための取り組み」

です。

そして、災害被害を防ぐための行動の基本は、

「正しい情報に基づき、最悪を想定し、先手を打って行動する」

ことです。

2つを合わせると、理想の防災とは

・正しい情報を集め

・最悪を想定し

・先手を打ち

・被害をゼロにする

ことが必要です。


しかし、阪神淡路大震災や東日本大震災で一つ明らかになったことががあります。

それは…

「最悪の災害の脅威は、人間の想定を超える」

ことです。

東日本大震災では、日本一と言われた高さ10m、全長2.5kmの巨大防潮堤を、さらに巨大な津波が乗り越えて、街を飲み込んでいきました。

正直なところ、あの防波堤を乗り越える津波が押し寄せるなど信じられませんでした。おそらく、多くの方も同じ感覚を持ったことでしょう。

福島第一原子力発電所の事故でも、「想定外」という言葉が多用されたことをご記憶の方も多いと思います。

これは、自然災害だけではなく人為的なテロなどでも言えるでしょう。

ということは、

「最悪を想定して先手を打っても、災害は想定を超えてくる可能性がある」

ということです。

つまり、

「まだ起きていない」災害の規模を予想して

災害被害を出さないようにする

ことは、極めて難しいことがわかると思います。


一方で、防災は「すでに起きた」災害に対応するには有効な考え方です。

既に目の前にある脅威から身を守ることは可能だからです。

ですので、「防災」とは、事前ではなく事後の対策のための考え方、と思った方が良いでしょう。


②防災と減災

近年、事前対策では、

「完全に防ぐ」のではなく、「できるだけ減らす」ようにする

という考え方がクローズアップされています。

いわゆる「減災」という考え方です。

「まだ起きていない」災害に対してはこの対策が有効です。


問題は、減災を試みる時に何を優先するか…です。

リソースが限られている以上、優先順位を決めることは必要ですよね。

この際に、私が考える優先順位の基準は、「命を守る」ということはもちろんですが、

「助ける立場の人間」をいかに多くするか

です。


誤解しないでいただきたいのは、弱者を切り捨てよ、と言っているわけではありません。

「助ける立場の人間」が、負傷したり病気にかかる、または知識不足、物資・装備の不足で「助けられる立場」に回ってしまうことをできるだけ防ぐべきだということです。

もし、助ける立場の人間が減ってしまえば、その分助けられる人数は減っていきます。助けが必要な人が増えればコミュニティの対応力が低下し、結果的に弱者がさらに厳しい状況に追い込まれることになるのです。


例えば阪神淡路大震災では、

地震直後にがれきの下敷きになった人はおよそ164000人

うち、自力脱出8割

要救助者(生き埋め)およそ35000人でした。


生き埋めになった人は、その後どうなったのか…。データを見ると、

近隣住民により救出…27000人

駆け付けた警察・消防・自衛隊により救出…8000人

でした。

近隣住民による救出の方が時間的にも早かったため、前者の生存率は8割、後者の生存率は5割です。

ということは、初期対応では家族や近隣住民の力こそが生存者を増やすために重要なことがわかります。

このことからも、「減災により、助ける立場の人を多くする」ことがいかに大切かがおわかりいただけると思います。

もちろん、初期対応だけではなくその後も、助ける立場の人がどれくらいいるかは影響が大きいでしょう。


③自助・共助・公助

災害被害の軽減は、

自助(自分のことは自分で)

共助(近隣で協力し合う)

公助(国や地方公共団体との協力)

の3つが機能すれば、より効率的に実現されます。


自助は、「自分のことを自分で守れる」ことです。

命を守ることはもちろん、負傷を最小限に抑え、助ける立場の人になることが大切です。


共助は、「近隣で協力し合う」ことです。

個人では対応しきれない事態に、協力して対応することで被害を軽減します。

事前であれば、高齢者世帯への声かけ、減災対策の手伝いなども共助に含まれます。

事後であれば、被災者の救助や火災の初期消火、避難所の設営や運営、被災者のケア、復旧復興など、広い範囲が共助に含まれます。

しかし、災害が起きた時に「ぶっつけ本番」では、効率的な連携が取れない可能性もあります。

そのため、普段からコミュニケーションを取り、ひとつの目的に対して協力して行動するための「協働意識」を高めておくことが大切です。


最後に公助です。

公助は、平たく言えば公的機関による支援です。

学術機関による観測やメカニズムの解明、都市整備なども含まれます。

警察・消防・自衛隊による非常時の救助や支援活動もこちらに入ります。


実際には、災害の規模が大きくなればなるほど公的機関による支援機能は小さくなっていきます。

これは、多くの地域に支援を回さなくてはならないこと、さらに公的機関自体が被災している可能性が高くなることからです。

インフラに重大な損害があれば、支援が届くまでには時間がかかりますし、活動にも支障が出るでしょう。

また、公的機関による支援は、地域住民の協力があればより効率的に機能します。そのため、公的機関がどのような対策を考えているのか、普段から知っておくことが大切です。


以上の事から、まずは自助で、難しいことは互助で、互助で対応困難なことは公助でまかなうことが必要です。

自助をおろそかにして互助や公助に頼る考え方は非常に危険です。

例えば、水が届くまでに3日…と言われますが、災害が大きくなるほど水の確保は困難になると考えて良いでしょう。

「コンビニなどで水を買える(もらえる)だろう」

…お店も被災している可能性大

「自動販売機が使える」

…停電していたらアウト(停電対応型もあるが少数)

「すぐに助けが来るからたぶん大丈夫」

…すぐに来ないかもしれない

ということです。

基本は「自分で飲み水は用意する」ですよね。


今回は、災害対策の心構えの基本について書いてみました。

とてもざっくりとしたお話でしたので、次回以降、実際にどのような対策を取れば良いのか、どのようなものを優先的に用意していくべきか…について具体的に書いていきます。

防災アイテムについては、実際に購入し試してみた中で、おすすめのものをお伝えしていこうと思います。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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