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お金に関する雑記①「元王朝の錬金術」

私も、「お金に関するコラム」というお題が出ていますのでそれに乗ってみたいと思います。
というわけで、このシリーズでは私がふと頭に浮かんだ、お金に関する事を書いていきたいと思います。

今回は

紙幣の歴史 元王朝の錬金術

です。

世界で「紙幣」を最初に発行したのは中国であると言われています。

紙幣は通貨そのものに「モノ」としての価値がないため、多くの地域では貴金属などを材料にした貨幣が用いられていました。
例えばヨーロッパは、金貨や銀貨

が長らく通貨として使用されていて、紙幣の歴史は浅いのです。

一方、中国では元王朝の時代に紙幣は主要な決済手段として流通が始まったようで、かのマルコ・ポーロ

は著書「東方見聞録」の中で

「樹皮から作り出した四角い紙片を、金貨や銀貨のように通用させている。これこそが中国式の錬金術である」

と述べています。

元王朝はその征服事業がクローズアップされがちですが、一方で、交通網を整備するなど、交易を振興する政策をとっていました。
また、元王朝の時代、アジアの大半を支配する強大な王朝の統治により、シルクロードの安全性は飛躍的に向上し、交易は唐の時代に匹敵する活況を呈していたのです。

このような交易の活発化も、紙幣が通用しえた(最大の利点はその運搬性)一つの要因でした。
もちろん、「ただの樹皮」が価値を持ったのは、発行元である元王朝の強大な力(軍事力や経済力)があったからに他なりません。

元王朝は、塩や茶など、主要な物資や交易品を専売にしていました。
特に塩は元王朝の収入の大きな割合を占めていて、中期ごろになると国家収入の大半を塩の専売による利益が占めていた、という状況でした。
「元王朝の財政は塩が支えていた」、と言っても過言ではありません。

ということは、この元王朝の紙幣は、

・元王朝の権威
・塩の価値

に裏付けされた、「金本位制」ならぬ「塩本位制」に近いものだったのです。

※金本位制
金を通貨価値の基準とする制度のこと。通貨発行者(中央銀行)が、発行した紙幣と同額の金を常時保管し、金と紙幣との兌換(あらかじめ決められた比率による交換)を保証することで、通貨の価値を保っている。


塩本位制の特筆すべきところは、「塩は金銀と異なり、消費してなくなる」ことです。
塩は生活必需品なので、元王朝が塩を独占して生産・供給し続け、それを人々は紙幣で塩を購入し続け、消費し続けます。
元王朝は常に十分な量の塩をストックしているし、塩の需要がなくなることはないため、元王朝は永遠に継続して莫大な収入を得ることができます。
こうして、紙幣の価値は極めて安定することになります。


ただ、紙幣には欠点もあります。
物としての価値がない、ということは、その価値は発行元の信用に左右されます。
結局、その価値は

「発行元の信用度(経済力など)の総和÷発行数」

となるので、もし、乱発すればその価値は低下してしまいます(いわゆるインフレーション)。

元王朝も、経済の活発化や財政赤字(莫大な収入があるのに…)に伴い、紙幣発行数を増加させていきます。
しかし、紙幣発行数を増やせばいずれインフレーションに陥ってしまいます。

そこで、これらの問題を一挙に解決するため、元王朝がとった手段は…
何と、「塩の価格を引き上げる」ことでした。
考えてみれば「塩本位制」なのですから、塩の価値が高まれば収入も増加し、紙幣発行量を増やしても価値の低下は抑えられます。

何というグッドアイデア!と思うのですが、価格が上がったのは生活必需品の「塩」です。
しかも、遠慮して少し値上げ…ではなく、元王朝はその価格を一気に引き上げてしまいます。

こうなると、生活が一気に苦しくなった人々の不満が爆発、元王朝は滅亡へと向かっていきます。


「塩」により栄えた元王朝、その滅亡の引き金を引いたのもまた「塩」でした。
そして、「食べ物の恨みは怖い」、これも時代を超えて共通することのようです。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

※掲載している画像は全てWikipediaから引用させていただいています。

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