日記

今日は、駅前で待ち合わせをする。

早めに着いたので、改札を出たところで待っていると

目の前で男が女に次々と声をかけている。

ナンパみたいなことだろうか。

仕方ない、眺めてよう。

中肉中背、20代半ばくらいのニッチェ江上似の男は、振り向いてもらおうと頑張っている。

「すいませんあの、そこの、そごうでやってる物産展、今から一緒に行きませんか…」

声をかけられたコンサバ系のお姉さんは、見向きもしない。

慣れているのか、江上は特に落ち込む様子もない。

「すいませんあの、そしたらサンドイッチとか買って、あっちの公園で一緒に食べませんか…」

次は地雷系のお姉さんに声をかける。

「サンドイッチとか、きしょ」

とだけ吐き捨てて、お姉さんは去っていく。

江上は、また特にダメージを受けた様子もなく涼しい顔をしている。

まだ、江上は諦めない。

「すいませんあの、そしたら散歩しませんか…」

声をかけられたフェミニン系のお姉さんは

「散歩ってなんですか」

とだけ残して、行ってしまう。

江上はなんならにこやかに見送る。

ううん

ここまでの江上の提案を思い返してみると

「物産展」「ピクニック」「散歩」か。

あらゆる系統のお姉さんたちにことこどく冷たくあしらわれていたものの、

デートプランとしては普通に最高だと思った。

チョイスが気張ってない感じで、良い。

普通に行きたい。

次の提案が楽しみになって来ているところで

「すいませんあの、そこ、しらす丼の美味しいお店見つけたんですけど、今から一緒にどうですか…」

と、次はギャル系に声をかける。

ギャル系は

「パネえね。」

とだけ返し、去っていく。

江上はここに来てちょっと悲しそうな顔をする。

ギャル系専か。

去っていくギャル系のルーズソックスを、切なく見送る。

「しらす丼」か。

ギャル系には刺さらなかったみたいだが、またチョイスが良すぎる。

「物産展」「ピクニック」「散歩」「しらす丼」

私はもうぞっこんである。

「一緒に行きたい」ではなく「プランチョイサー」として、ぞっこんである。

早く次のチョイスを聞きたい。

待ち合わせの時刻が近づく。

友だちが遠くに見えてくる。

江上のプラン、もう一個ぐらい聞きたい。

じりじりしていると、江上の前を別のギャル系が通り過ぎる。

「すいませんあの…」

動いた。

「あの、ちょっと飲みに行きませんか?」

良くない、良くないなあ。

これは江上、ほんとの江上じゃない。

まだぞっこんな私は、悲しくなった。

ギャル系は

「ちわ」

と去っていく。

ああ。


そのタイミングで、

「こんにちはね〜」

と待ち合わせの友だちがやってくる。

そのあと一緒に物産展に行った。

楽しかった。

江上も、ギャル系と行けてたらいいなあ。

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