ドレスコーズを見に行った日
りんかい線の東京テレポート駅で電車を降りる。
今日はドレスコーズに会いに行く。会場はZeppダイバーシティ。
電車を降りたところでトイレに行きたかったので、トイレへ。
個室はなぜか、学校のプールの更衣室の香りに包まれていた。海が近いからかもしれない。それはそんなに関係ないかもしれない。
少し懐かしい気持ちになりつつ手を洗っていると、ドレスコーズのTシャツを着た女子も手を洗っている。
私は、ま・た・あ・と・で・ね、と思いつつトイレを出た。
改札を出ると、Suicaの残高がまだ2000円ちょい残っていた。うれしい。まだ2000円もある。
先月勇気を出して10000円ごそっとチャージした賜物だと思う。助かる。自助。
Zepp Diver cityの向かいにはフジテレビがある。
少し早く着いてしまったので、1階のセブンイレブンでおにぎりを買って食べながら一緒に行く人を待つ。
建物の中で食べられる感じではなかったので、路上に場所を見繕う。
道路沿いにはたくさんタクシーが停まっている。
停まっているタクシーを正面で直視しながらわかめごはんのおにぎりを食べていると、まんまと男女が降りてきた。
知らない男女だった。
側面に「GO!」と描かれたタクシーは、男女を降ろしてそのまま去っていった。
私は、「GO!」と知らない男女、なんかダブルミーニングじゃないのと思った気がするが、それがどんな意味とどんな意味でどう思ったのかは忘れてしまった。わかめごはんは美味しい。
降りてきた男女の内訳は、紺スーツの男性と、ボウタイのブラウスの女性。
男性の方は青いスーツケースを引いて、女性の方はトートバッグを肩に提げて、とそれぞれの荷物をそれぞれの運び方で運びながら闇夜に消えていった。
男女は特になんの会話もしていなかった。
さらっと「闇夜」と書いたが、すでに日は暮れている午後6時。こういうことを書き忘れていた。
よ、よ夜なの?!!?ともしびっくりさせてしまっていたら申し訳ない。
だいたいライブは夜というもの。
わかめごはんのフィルムゴミを捨てに建物に入ると、中東系の男性がペットボトルを手に3人くらいでゴミ箱前を右往左往しているところだった。
総じてホリが深い。
あと服の色味も総じて深かった気がする。
「総じて」と言い切れるかここは自信がないけれども、1人は確実にボルドーのトレーナーを召していた。「ボルドー」は色として深いと言って差し支えないだろう。
とにかく深い3人組は、燃えるゴミ、プラスチック、びん、などいろいろな種類のゴミ箱があるので、どこに捨てたらいいのか分からないといった様子。
教えてあげようかなと思っていると、そんなことはしなくてよかった。
自分たちでちゃんとペットボトルをペットボトル入れのところに捨てることができた。ナイス。
もしかしたら中東のゴミ箱もこういうゴミ箱なのかもしれない。
私はプラスチックと書かれたゴミ箱におにぎりのフィルムを捨て、しばらく2階のドラえもんの未来デパートなどを見た後、人と集合するため正面口に向かう。
ドラえもんの未来デパートでは、ドラえもんや他キャラクターの巾着やアクキーなどが売られていた。意外と未来はすぐそこにあるよう感じた。
ここで場所には2種類あって、普通に行ける場所と歩道橋を使わないと行けないパターンの場所がある。
そして歩道橋を使う場合、かなり遠くまで歩かされることもある。
こう言う前置きをしておいて、
正面口を目指して歩いている今回、今回の場所は後者、歩道橋を使わないといけないパターンの場所な感じがしてきた。
歩道橋のパターンは厄介で、直通の階段があれば真っ直ぐ上がれるものの、歩道橋だとまず階段を探すところから始めなければならない。
そして歩道橋に上がるための階段は、さっき通って来た道の途中、今から振り返るとやっぱりはるか向こう。
でもきっと、この先歩道橋じゃなしに上がる方法、「じかに上がれる階段」も用意されているはず。
私は引き返さず、階段に賭けることにした。
ギャンブラー(私)は、脳汁を垂らしながらずんずん進む。
ずんずん言いながら進んでいると、ギャンブラーは正面口に「じかに上がれる階段」を発見する。
ほら。
これだからやめられない。
ギャンブラーは一度立ち止まって、脳汁として出てしまった水分を補給する。
水筒を持ってきていてよかった。
「じかに上がれる階段」をずんずん上がっていくと、両脇の野草のエリアには枯れた朝顔のような植物が植わっていた。枯れているのは、夜だったので枯れているように見えただけかもしれない。少なくともギャンブラーには、ギャンブルに勝利したギャンブラーへの花向けに思えた。
整理番号は495番、チケットを持っていてよかった。
入れる。
ドリンク代600円を支払うと、500円玉みたいなメダルをもらえた。
600円の価値のある500円玉サイズのメダルを私は右ポッケに大切にしまう。
無くしそうなので、右ポッケ、右ポッケ、と思いながら確実に右ポッケにしまった。
買ったばかりのこのスカートの右ポッケは初めて使った。あってよかった。
会場に入ると、すでにまあまあ人は入っていた。
厚着をしてきたので、服の一部とあと荷物もロッカーにしまってから入ろう。ロッカー代は500円。
小銭を持ち合わせていなかったので、両替をしたいところ。
両替機があったので行くと、お姉さんが両替機を使用しているところだった。
お姉さんが1000円札を入れると、100円が10枚降りてくる。不憫。
両替機は500円玉を知った方が良いと思った。
お姉さんは10枚の100円玉をスムーズに受け取り、雑踏へ普通に消えていった。
お姉さんは何とも思っていないのかもしれない。
私は卒なく500円玉を両替する。
ロッカーに服や、基本全ての荷物を押し込み、鍵をする。
鍵をする前にしまってはいけないものをしまっていないかチェックしたところ、私たちの中でスマホは持っておいた方が良い、ということになったのでスマホだけ取り出すことに。
スマホは左ポッケへ。
ロッカーを閉じて、なんかカラビナがついたロッカーの鍵を締める。
せっかくのカラビナだったが、服に引っ掛けられる部分がなかったのでカラビナは使わずに普通に右ポッケにしまった。残念。
右ポッケ、右ポッケ。
家の鍵や財布などをロッカーにしまった今、スカートのポッケにはロッカーの鍵と600円分の500円玉メダルとスマホ。
こうなるとポッケに貴重品が集中しすぎている。なので太ももあたりがそわそわしてくる。
そわそわしながらも私は確かな足取りで入場する。なにせ楽しみにしてきたから。
1段目は4ブロックくらいに分かれていた。
私も一緒に来た人も、なるべく前で見たいという考えだったので、1段目へ。3ブロック目の後ろの方が空いていたので陣取らせてもらう。
なにせ人はぎちぎちなので、いろんな人がいる。中には大きい人もいる。大きい人は前の方にもいるので、多少視界が遮られるのも仕方ない。大きい人も、別に遮っているつもりは無いだろうし。
しばらくして、ウルフカットに革ジャンの志磨遼平みたいなお兄さんが1人、左側からやってきた。左側にも入り口があるとは知らなかった
たたずまいはほぼ志磨遼平だ。すごい。しかしこのお兄さんを志磨遼平と呼称するとややこしいので、便宜上「志磨2」と呼ぶことにしたい。
志磨2は後ろの柵に寄りかかってスマホを見ている。それを見て私は後ろに柵があることを知った。私もちょっと柵に触れてみる。
志磨2はツイッターを見て楽しんでいた。
いろんな人をフォローしているのだろうな。ツイッターは、好きな人やアカウントをフォローしていると見るのが楽しいもんな。分かる。
柵や志磨2を意識しつつ一緒に来た人と話していると、ちょっとしてライブが始まった。
カーペンターズのなんか聞いたことがある曲で幕開け。
赤の照明がドラマチック。
志磨2も柵から離れ、ツイッターから顔を上げる。
ステージに煙が焚かれるとわらわら人が集まってきて、最後に志磨遼平が登場する。
志磨遼平は、ピンクのテロテロした、1枚の布で作った感じの洋服をまとっている。
美しい。
生ハムの妖精かと思った。
私は生ハムが大好きなので、これはとても素敵、という意味。
志摩遼平は髪が長いのでよくわからなかったが、たぶん耳には大きい輪っかのピアスをしていた。
ボトムスは白、これはちゃんと見えた。
志磨遼平をちゃんと見るのは初めて。先月渋谷のCDサイン会の終了間際に駆け込んで、CDも持っていなかったのでロールカーテンの下から覗き見たのが1回。首元までしか見えなかったが、リンガーTが似合っていた。その時も良かったが、今回も良い。
私はセットリストが全然覚えられない。
志磨遼平が目の前にいることに興奮していると普通に2曲終わり、MCパートへ。たぶん1曲目と2曲目は今回のアルバムの曲だった。
「こんにちはドレスコーズです」
知ってる。
それから
「東京!」
とか
「今日はありがとう!」
みたいな話があって、次の曲へ。
こちらこそ本当にありがとう!と思う。忙しい中。
マナー違反であることを承知しつつ、気になって志磨2をチラッと見てみる。
志磨2は柵によりかかって、完全に下を向いている。彼なりに食らっているのかもしれない。
でも志磨2はどういういきさつで志磨遼平の形をまとうようになったのだろうか。どのくらい好きなのだろうか。
私は特に私を変えることなくそのまま来たけれど、会場内には志磨2の他にも色んな志磨遼平がいた。志磨3、志磨4、、、、、志磨∞
前に行ったサンボマスターのライブ会場にそういう人はいなかったので、違いだなあと思った。
あと志磨2が相変わらず柵にもたれかかっているので、私はまた忘れかけていた柵の存在を意識させられる。
私は本当にセットリストが覚えられない。
でも覚えていることはいくつかある。そのMCから何曲か後、「ハーベスト」という曲。
曲中で志磨遼平がこちらを見渡す、みたいな場面があり、おーい、と私は手を揚げかけてふと思った。
志磨遼平が見渡しているのは客席ではない可能性もある。というのは今は曲の中。志磨遼平は眼前の現実の景色ではなく「ハーベスト」の歌詞の中の「黄金の丘」のことを見渡しているのではないか、ということ。生ハムの妖精として。
それで私は手を揚げるのはやめた。
現実といえば、ライブ会場という非日常の空間の中でも、客席はけっこう現実だといつも思う。
たとえば、前のお兄さんすごく汗かいてるけど、とか今足踏まれそうになったな、とかあのお姉さんハンドバッグなのになんで荷物ロッカーに入れてこなかったんだろうな、とかこの曲帰ってもう一回聞こう、とかこの歌詞改めて聞くと明日から頑張れそうだな、今日のこと友達に何て話そう、とか。
最後の2つは特に現実。ともあれ現実の渦中で私はエンジョイする他ないのだ。良い意味で。
志磨遼平は、それから立ったり座ったり、ギターを持ったり持たなかったりしながらじゃんじゃん歌ってくれる。
たくさん歌ってくれた。ありがたい。
スポットライトなども多用されていたが、あれは事前に位置の確認などを行なっているのだろうか。それとも、志摩遼平の動きに合わせてアドリブ的にやっているのだろうか。
事前に技術さんと打ち合わせがあるのだとすれば、お互いすごく覚えることが多そうだなと思った。
たしかこの辺りで、左隣の志磨2がうつむきながらおもむろに出て行ってしまう。何の曲の時だったかは覚えていない。セットリストが覚えられないので。何か用事があったのだろうか。
えらいもんで志磨2がいなくなるとちょっと寂しかった。
私はいなくなった志磨2の隙間を埋めるように、志磨2がさっきまで使っていた空間、「左」に数歩ずれてみる。
ずれてみると、そこには想像をはるかに超える景色が広がっていた。人の頭のちょうど間で視界が開けていて、ステージがすごくよく見える。いい場所を陣取っていてくれたではないか。ありがとう。ありがとう。
それから志磨遼平は、右に行ったり左に行ったりとよく動いた。
今回は中央を陣取ったが、今度ライブに行く時は右や左で見てみても良いと思った。
志磨遼平は、よく手首を見せてハンドクラップをしていた。しなやかなハンドクラップだった。
セットリストを覚えられないこんな私だが、いくつかの曲で「きゃー」と黄色い歓声を発せさせられたことも覚えている。発せさせられた、というのは、これは完全に不可避だったから。完全に投げキッスや指差しを乱用する志磨遼平のあざとさ、彼は自分が可愛いことを分かっていると思った。良くない良くない。
でも私は「きゃー」と言い続けた。楽しかったから。
これまで人や物に「きゃー」と言った経験はあまりない。ほん怖見てては毎回言っているが、これは黄色い「きゃー」ではない。
黄色い「きゃー」を吐くこと、今回これとても楽しいということを知った。
やったことない人はやってみて欲しいと思う。
そんなこんなで現実のライブを終え、現実に戻る。
すっかり存在も忘れてそわそわもしなくなっていたスカートの貴重品入れ(ポッケ)には、なくすことも盗られることもなく、ちゃんと鍵とメダルとスマホが入っていた。よかった。
出口で、「600円分の500円玉サイズのメダル」と、「500円分のドリンク」とを交換する。
お酒やQooや、ポカリなどがあったが、私はジンジャーエールを選択した。
一緒に来ていた人に、「良いと思う」と言ってもらえた。うれしい。
一緒に来ていた人は、伊右衛門を選んでいた。それも良いと思った。
ドリンクをゲットしたので、さっきロッカーから出してきた上着を着、厚着をし直した上で外に出る。
出る前に、ドレスコーズのサインが入ったポスターを写真に撮る。さっきステージにいた人の字かと思うと、胸がいっぱいになった。
外は思ったより寒くもなかった。
ジンジャーエールをプシュと開ける。私がプシュと言ったわけではない(笑)。
いっぱいになった胸に冷たいジンジャーエールがガブガブ入っていく。いっぱいでも案外入っていくもんだなと思った。
正面口を出て左には、でっかいガンダムがギラギラと光る場所に立ちすくんでいた。すくんでいたかどうかは本人にしか分からないか。
来る時にはギラギラ光っていなかったので気がつかなかった。
光るものを見てか、そういえば志磨2。志磨2のことを思い出した。
志磨2もこの景色を見たのだろうか。用事で急いでいたなら、見ていないかもな。
志磨2はどんなドリンクを選択したのだろうか。
大方の人は、ガンダムとは反対の右方向に出ていく。
私たちも出ていく。
「ありがとうZepp!」
とか
「東京!」
とか言いながら。
そのあと、お台場を出てどこか別の駅の揚州飯店で油そばを食べた。
油そばをむさぼり食べジャスミン茶をガブガブ飲みながら、バイクのカスタムの話を聞いた。
バイクの話を聞いて1番心に残ったのは、「ホイールは売るのも買うのもとても安い」ということ。
とても楽しかったので、またライブに行きたいと思っている。
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