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モバイルアドフラウドの分類学

アドフラウドとの戦いを詳述する本連載において、今回はモバイルアドフラウドの主な形態の分類を紹介します。

背景

ウェブ広告業界が既に成熟したのと比較して、モバイルアプリ広告におけるエコシステムは、まだまだ荒野のようです。会社間のM&Aは活発で、大手企業はハイペースで採用を行い、業界イベントは豪華絢爛化の一途を辿っています(訳注:原文が公開された2018年3月当時)。

しかし、残念ながらこの業界における数千億円に値する秘密は、フラウドが常態化しているという事実です。トラフィックのデータがアプリ媒体からネットワークへ、ネットワークから計測ツールへ、そしてマーケターのダッシュボードへと移動する過程で、さまざまな障害・障壁が存在します。以前の記事では(訳注:英語版における過去記事を指す)、多くの場合ネットワークがより悪質な存在である一方で、トラフィックが移動するすべての過程においてフラウド事業者の介入を許す余地が存在することを述べました。悪質なネットワークが浄化されても、フラウド事業者は他の攻撃方法を見つけ続けるでしょう。

さらに問題を複雑にするのは、このトラフィックのチェーンが成長し適応し続けるということです。その端緒はアトリビューション計測ツールが生まれたときに遡ります。アトリビューション計測ツールはアドフラウドに対して審判を行う役割を持っていました。しかし、当時サービスとして提供されていた様々な計測ツールがフラウド事業者によって運営され、あるいは乗っ取られていれば、それはチェーンの障害点となり得ます。

このためアドフラウドの分類を考慮するにあたり、私たちは進化し続けるフラウドの様々な手口をすべて捉えられるよう、柔軟なフレームワークを適用しました。以下の分類がその結果です。

MOLOCOによるアドフラウドの分類
私たちが提案するアドフラウドの分類はシンプルなものです。

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各分類における呼称は人によって違うかも知れませんが、あらゆるインストールはこの4種類のいずれかに必ず当てはまります。実際、私たちの経験ではこの分類は極めて有用です。では一つずつ見ていきましょう。

ファントムインストール
このカテゴリは、「インストールは本物だが、ダウンロードは存在していない」ケースです。例えば既に昔から利用しているユーザーのインストールが複数回カウントされるもの、SDKスプーフィング、アトリビューションのバグなどが原因として挙げられます。

SDKスプーフィング

これはボットによるフラウドです。フラウド事業者は広告のクリック、インストールそしてインストール後のアプリ内行動シグナルをシミュレートするコードを既存のアプリの中に仕込み、そのアプリから計測ツール側に、本来の広告出稿中のアプリに代わって偽のシグナルが送信されます。

ジャンクインストール
ジャンクインストールは、インストールの背景に本物の人間がいない場合に起こります。例としてインストールファーム(工場)、エミュレーター、インセンティブ、デバイスIDリセットなどが挙げられます。

デバイスIDリセット
比較的新しいタイプのフラウドです。どのモバイルデバイスにも固有のデバイスIDがありますが、フラウド事業者はこれをインストールの度にリセットし、新規デバイスからのクリックとインストールだと見せかけるのに用います。

インストールファーム(工場)
インストールファーム(工場)は数千台のモバイルデバイスを備えた物理的な施設です。フラウド事業者はクリック、インストール、アプリ内行動を施設のデバイスを用いて大量生産し、広告主から多くの広告費を盗みます。

盗まれたオーガニック
このカテゴリにはクリックインジェクション、クリックスパミング、フィンガープリント濫用などが存在します。

クリックonインプレッション
腐敗したネットワークにより1インプレッションの度に偽のクリックが送りつけられ(これにより100%近いCTRが記録されるのです!)、そのうち一部がオーガニックインストールと結びつくことで、課金対象となります。

クリックインジェクション
これは正当な広告によるインストールを悪質な事業者が盗むことによって発生し、最大で80%ものインストールが盗まれています。つまり正直な事業者が80%も損をしているのです。元はこの慣行は一部のアプリ媒体によって始まりました。より洗練されたフラウド事業者によるクリックスパムは、ユーザーによる(オーガニック)ダウンロードの開始をリアルタイムで検知すると、そのダウンロートからのインストールが完了するよりも前にクリック情報を計測ツールに送信することで、インストールからの売上を得ます。

真のペイドインストール

もしあるインストールがこの3つのカテゴリのいずれにも当てはまらない場合、そのインストールは正当な広告によるものだと考えられます。

結論
もちろんこの分類に賛成しない人もいるでしょう。また私たちが見逃している、このフレームワークの外側のフラウドも存在するかも知れません。そういう分類をご存知の方は是非お教えください。

モバイルアドフラウドをこの業界から撃退する最善の方法の1つは、志ある人々や会社が連携することです。Molocoは様々なステークホルダーと連携して、アドフラウドの根絶に向けた取り組みを推進していきます。

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